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Channel: BEHIND THE BUZZ – AdGang
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クリスマスイブ、遠く離れた東京と大阪がまるでひとつの空間に。au「SYNC DINNER」が実現するまで

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Case: au「SYNC DINNER」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。 昨年12月24日・クリスマスイブの夜に、約400km離れた東京と大阪を1つのテーブルでつなぐ特別なレストランが一晩だけオープンしました。これはauによる、抽選で関東地区と関西地区で離ればなれになっている2組の方に、東京と大阪のホテルの一室に設置された特別な部屋と大画面ディスプレイを通して、ひとつの空間にいるかのような同じ時間を過ごしているようなスペシャルディナーを体験してもらうというキャンペーン「SYNC DINNER」。その世界観を描いたWEBムービーも話題となりました。 このキャンペーンは果たしてどのような仕掛けで実現出来たのか、KDDI株式会社 コミュニケーション本部 宣伝部 デジタルマーケティンググループリーダー 担当部長 塚本陽一さん(文中「Y」)、コミュニケーション本部 宣伝部 デジタルマーケティンググループ マネージャー 田才浩之さん(文中「H」)、コミュニケーション本部 宣伝部 デジタルマーケティンググループ 課長補佐 後舎満さん(文中「M」)にお話を伺いました。
Interview & Text : 市來 孝人 (Takato Ichiki)
コンセプトムービーにも一般のカップルを起用
—このプロジェクトの構想が立ち上がったのは、いつ頃なのでしょう? Y:SYNC DINNERの案が出てきたのは10月くらいです。実は元々はクリスマスではなく、2-3月くらいを目指してプランニングしていた企画があったのですが、やろうとしている企画に対してテクノロジーが追いつかず「企画としての実現は難しいな」と見送ったんです。そのあと、(それより前の)クリスマスの時期に世の中に何か仕掛けていくことが出来れば良いなと考え、エージェンシーと代案を検討し、当企画を実施することになりました。 今回の企画は弊社、博報堂さんの担当営業・スタッフの方、SIXさんというプロラクションのクリエイターの方も含めて、ワンチームで一つの目的に向けて進むという形で、かなり濃密にディスカッションをして進めていきましたね。 —スタート後、参加者の応募状況としてはいかがでしたか。 Y:結果的には118組集まりました。12月24日という日付も、時間も場所も指定、しかも東京と大阪で離れている前提ということで、正直「数十組からなんとか抽選出来る位かな?」と思っていたのですが、案外と集まりました。 —クリスマス前に公開されたムービーに出演のカップルは、実際に付き合っているカップルだったそうですね。 Y:そうですね、一般のカップルを集めてオーディションをして決定しました。 ー驚いている表情も印象的ですし、このムービーの世界観はこだわられたんじゃないですか? H:やはりリアルな部分が撮れないとユーザーにも伝わらないので。実は男性側に仕掛人として我々スタッフと一緒についてもらって、女性は全てサプライズとして体験してもらっています。 —12月24日の実施の前に、まずはこのムービー自体も大きく話題になった印象があります。 Y:予想以上の反響でしたね。ムービーの中での女性の方の反応も良くて、公開直後にTwitterで「あのタレントさんは誰だ?」という投稿もされる程でした。また、今回はFacebookページ上での反響がとても良かったです。Facebook上で「いいね!」と比べると「シェア」は少し重い行為じゃないですか。それにも関わらず、今回はau史上、過去に類を見ないほどのシェア数になるほど、シェアをするユーザーが目立ちました。その数(3,000弱のシェア。「いいね!」も約25,000)は僕らの想定を遥かに上回っていましたね。 M:あのような自然な表情は実際のカップルでなければ出なかったと思うので、一般のカップルでやるということにこだわって、リアルを追求して良かったなと思いますね。 Y:24日に実際に参加して頂いたうちの一組も、そのムービーが大好きとのことで何度も観てきてくれたんです。 H:当日の最中、料理を食べて頂いたりしている合間にも「(ムービーの)あの時のあの仕掛けって、いつ起こるのかな」という会話が出るほど、観尽くして来てくださっていました。
東京と大阪で、ディスプレイを通して一緒に乾杯。どのようなメカニズム?
—遠く離れた東京と大阪で乾杯が出来たり、ケーキのろうそくを吹き消したり、これらが実現できるメカニズムはどのようなものなのでしょうか? Y:実はシンプルなものです。まず乾杯はモーションセンサーを使っています。席に座って手を伸ばして乾杯のアクションをしていることを壁に埋め込まれたセンサーが感知すると、「チン」という音がするようになっています。ろうそくは吹く側に風圧センサーがあり、風を感知すると相手側にある小さい扇風機のようなノズルから風が送られるという仕組みです。 H:風圧センサーとノズルは、それぞれ花の中に仕込んで目立たないようにしていました。 —12月24日、実際に選ばれた2組の選考はどのように進めたのでしょうか。 H:フォーム内に自由記述で設けていた応募動機は結構見ていましたね。1組は彼氏側から「彼女も毎晩忙しく働いているので、せっかくクリスマスイブくらいはゆっくり楽しんでもらいたい」ということと「彼女はクリエイティブな仕事をしているから、こういう企画が好きなんじゃないか」ということが書かれていたんです。もう1組の親子は、一年前くらいに娘さんが自分の夢を叶える為に上京したそうなのですが、「お母さんがそれを快く送り出してくれたから」と。元々はカップルをムービーでは描いていたのですが、親子というのも良いねと、急きょ決めました。 —カップルの場合は、男性、女性どちら側から応募する方が多かったですか? H:女性の方が多かったですね。 M:年齢層も思ったより幅広くて、年配の方もいらっしゃいました。 —乾杯などのテクノロジー面だけに限らず、準備の面で事前に気を遣っていた点などはありますか。 Y:会場は東京と大阪両方にあるホテル(ニューオータニ)じゃないと、という点がまず一つ。「会場がそもそもSYNCしてないじゃん」となってはいけないので。 M:オペレーションとしては、同じ料理を、異なる場所で作らないといけないという点はありましたね。 Y:別々での厨房で、普段出している料理も違えば、クリスマスシーズンで忙しい中で、わざわざSYNC DINNER専用のメニューを別々の厨房で作ってくれたわけですからね。 M:料理長さんのご理解も得てお忙しい時期にも関わらずご用意して頂いて、とてもホテル側にもご協力頂きましたね。 H:ホテルのイブの日のオペレーションの邪魔になってはいけないですし、最初は別の料理を出そうかとも検討していたんですよ。ただ「やりますよ」と言って頂いて。 —オペレーション面で、予想外だった点や、当日変えていった点などはありますか。 H:会話をバックヤードで見させて頂いていたので、会話に応じてサーブするオペレーションを臨機応変に変えてみたりしました。例えばカップルのお2人がウェイターを「双子だ」と気になったみたいで。ならばウェイターとカップルが揃った4人で記念撮影を、ということもありました。 M:本来は「双子」ではなく「同じウェイターが行き来している」という設定なので、同時に出てくるというオペレーションは予定していなかったのですが、一緒に撮りたいという話が出たので、最後にせっかくならということでセッティングしました。 Y:あとは、東京と大阪で離れている中、光回線で高速で送っているとはいえ若干音声タイムラグが出てしまうものを、本当にひとつの空間で一緒にいるような感じになるように、心地よい二人の会話になるように、微妙なチューニングはずっと行っていました。 —2組の方の反応はいかがでした? Y:大満足を頂きました。あそこまで満足してもらうというのは、通常のCMとかディスプレイ広告とかのプッシュ型のコミュニケーションでは出来ないことだなと思いました。今回はワンチームでいいものをつくって、サービス業のつもりで、どれだけお客様をおもてなしできるか、ということでやってきたので、喜んでもらえて冥利に尽きますね。 —一般ユーザーの反応はいかがでしょうか。 H:今回、このコンテンツに接触した人にイメージ調査をかけているのですが、やはり見ている人と見ていない人では、見ている人の結果はやはり良いものです。 —実際にやってみた後に感じたことがあれば、是非お聞かせください。 Y:今回は徹底的にリアリティを追求して、本気でおもてなしした企画になりました。僕らはこの企画の他にもいろんなチャレンジを展開していますが、どんなにいいデジタル上の企画を作っても、やはりデジタルだけで人の心を動かすというのは難しいものだなと。今回デジタル上で公開したムービーだって、そこには嘘がなかったからユーザーの琴線に触れたのだと思います。デジタルでやっていることイコール現実味薄いこと、と思われると琴線に触れないし、ソーシャルで自走していくコンテンツにもならないと思います。 —今後もこういった企画は予定されていますか? Y:今回はクリスマスだったのでエモーショナルな方向でいきましたが、その方向性に限らず、お客様に喜んでもらえるようなコミュニケーション・普段やっているコミュニケーションから根本的に発想を変えて、僕らがお客様に対して寄り添っていく企画は今後も何かやっていきたいなとは思います。実は、そういった考えを元にした企画の第2弾も計画中です。

【Interviewee】

KDDI株式会社 コミュニケーション本部 宣伝部 デジタルマーケティンググループリーダー 担当部長 塚本 陽一さん (右) コミュニケーション本部 宣伝部 デジタルマーケティンググループ マネージャー 田才 浩之さん (中) コミュニケーション本部 宣伝部 デジタルマーケティンググループ 課長補佐 後舎 満さん (左)


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