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Channel: BEHIND THE BUZZ – AdGang
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渋谷駅に現れたクロネコヤマトの“モフモフ”広告は、どんな狙いで実施されたのか

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Case: ヤマト運輸「宅急便コンパクト」「ネコポス」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。 今回は3月末〜4月初旬の一週間程度、東急東横線・渋谷駅構内に期間限定で登場したヤマト運輸の広告を取り上げます。新サービス「宅急便コンパクト」「ネコポス」の開始に合わせて、毛並みの触感や目や鼻などの立体感など、"モフモフ"出来る広告として話題になりました。この広告の実施の理由をヤマト運輸株式会社 広報戦略部 広報戦略課 スーパーバイザー 服部亮太さんに伺いました。
Interview : 石原 愛美(Aimi Ishihara)/Text : 市來 孝人 (Takato Ichiki)
ターゲットが定まっていた新サービス。訴求方法を変えるテストとしての側面も
—この交通広告の実施の狙いについて聞かせてください。 小さな荷物を専用ボックスで送れる「宅急便コンパクト」、 小さな荷物をポストにお届けする「ネコポス」という、4月1日にリリースされた二つの新サービスの認知を目的として展開しました。 マス広告も展開しましたが、今回のサービスは「小さい荷物を送れる」という特徴が有り、これはフリマやオークションなど個人間で安く買いたいという、特に20-30代男女のニーズを踏まえたサービスです。ならば今回は、若い人達がSNS等でシェアをしてくれるような広告を実施してみようと。 —こういったターゲットを絞った広告展開は、これまでもありましたか? あまりなかったですね。それはやはりターゲット層の違いです。通常の「宅急便」はやはりオールターゲットで広く使ってもらいたいサービスですから、具体的なターゲットに対する広告は展開してきませんでした。今回の新サービスはターゲットが定まっていたので、訴求方法を変える一つのテストとして実施してみました。 —“モフモフ”のアイデアが出たのはどのような経緯からですか? OOHや交通広告ってどうしてもその場所の景色にとけ込んでしまいがちなので、そこを通った人がちゃんと気づいてくれる・インパクトがある・シェアしたくなるものにしたいねという話をしていました。例えば壁面まで使ってトリックアートのようなものをする等、色んな案が出たのですが、今回はネコをメインにしたかわいいものにしてみました。
広告に「飼い主がいる!」という評判も
—制作でこだわられた点は。 毛の部分は顔のどの部位も素材は一緒なんですが、ひげの部分や鼻の部分はちゃんと堅い素材感で表現しています。ちなみに目なのですが、通常のCM撮影などでは照明が強いのでどうしてもネコはとんがった目になってしまいます。今回はより優しげな目になるようにという点は意識して作りました。 —ブラッシングをする方がいることも話題になっていましたが… 管理とメンテナンスの為に人を立てることにしたんですよ。するとその方が気を遣ってブラッシングをしてくれて、「飼い主がいる!」という評判になったんです(笑)。 —渋谷駅で実施したのは、やはり駅の利用者とターゲットが近いからでしょうか。 そうですね。交通広告は渋谷・六本木・有楽町・大阪・梅田の各駅で実施しました。渋谷についてはハチ公前のビジョンなども使い、集中的に展開しましたね。また六本木では、エスカレーター中はスマホをいじらない傾向があるというデータがあったので、大江戸線の六本木駅の長いエスカレーターを活用して広告を展開しました。 —実施中の反応はいかがでしたか? ターゲット層はもちろん、お子さん連れの方が写真を撮ってくれたり、外国人の方も珍しがって写真を撮ってくれていたりしましたね。通常マス広告が中心なので、こういったターゲットを絞った広告に対してどこまで反応があるかも分からない状態でしたし、1万ツイート程度あれば良いかなと思っていましたが、掲載中の一週間+その後の一週間の計二週間で、約3万の関連したツイートがありました。 「これってヤマトの新サービスの広告で出てたみたいだよ」というツイートもあったので、サービスの認知にも一定の成果はあったなと感じています。今後も、普段のマス広告を展開する一方、今回のターゲットに対してのメッセージの訴求の仕方は模索していきたいなと考えています。 —ちなみに、あれだけのクオリティの広告が一週間限定なんて勿体ないですが、今はどこかに保管されているのでしょうか…? はい、今は物流ターミナルの「羽田クロノゲート」の中にありますよ。

ヤマト運輸株式会社 広報戦略部 広報戦略課 スーパーバイザー 服部亮太さん


きっかけは2年前…話題の“慶早戦ポスター”を生んだ「應援指導部」の師弟関係

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Case: 慶應義塾大学 應援指導部 “慶早戦ポスター”
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。 今回は「ビリギャルって言葉がお似合いよ、慶應さん。」「ハンカチ以来パッとしないわね、早稲田さん。」などのコピーが秀逸と大きく話題になった、慶應義塾大学 應援指導部の、東京六大学野球「慶早戦(早慶戦)」ポスターを取り上げます。 これらのポスターを手がけた慶應義塾大学應援指導部OB・株式会社 電通 第5CRプランニング局 コピーライター 近藤雄介さん(文中K)、慶應義塾大学應援指導部 主将 堤史門さん(文中T)に、ポスターの制作秘話や、應援指導部として2年前から情報発信に力を入れ始めたという、今回のポスターに繋がる経緯についてお話を伺いました。
Interview & Text : 市來 孝人 (Takato Ichiki)
「話題のポスター」の前から、着々と情報発信に力を入れていた
—主将で現在大学4年生の堤さんと、OBで社会人2年目の近藤さん、大学時代も一緒に活動されていたのでしょうか? T:はい、まさに今回のポスターは2年前、4年生だった近藤先輩が力を入れ始めた情報発信の系譜にあるものです。ホームページの内容を充実させたり、TwitterやFacebookを積極的に更新するという動きが始まりました。私は当時2年生だったのですが、その活動を近くで見させて頂いていました。 —当時(2013年)近藤さんが4年生の時、情報発信に力を入れようと動き出した理由は。 K:ホームページに人を呼び込んでも、楽しんでもらえるコンテンツがなかったのが当時の現状でした。また應援指導部にも元々、広報的な仕事を担う役職もありませんでした。そこで応援の音源や動画を積極的にアップしてみたり、各種慶早戦をUstreamで(現在はニコ生で)配信してみたりという試みを始めていきました。 Ustreamは早稲田OBの業者さんが無償でやってくれたり、早・慶の放送研究会が設備を担当、アナウンス研究会が実況、OBが解説をやるという座組みでスタートさせました。また「ユニコンくん」という應援指導部のマスコットキャラクターも活用しきれていなかったので、特設ページを作ったり、「ユニコンくん」Twitterの更新を増やしたりもしましたね。應援指導部は全ての部活を応援する立場なので、応援する為の仕組みをこれまでの座組にとらわれずに作っていきましょうという思いでした。 —当時の反応はいかがでしたか? K:体育会ファンの方々からは「ありがたい」という反応を頂いたり、ホームページのアクセス数が10倍になったりしましたが、とはいっても、他のプロスポーツなどに比べればコンテンツ力はまだまだ低いなと感じていました。 —近藤さんが社会人になり、堤さんが3年生になった翌2014年はどんな企画を進めていたのでしょうか。 T:LINEスタンプ制作をしようと。ただ当時はクリエイターズスタンプがまだ始まっていなかったので、ようやくこれから審査を出すところです。東京六大学野球秋季リーグ戦前には発売出来ればと思っています。 K:早・慶を中心に学生スポーツを盛り上げていくべく、慶應の應援指導部「ユニコンくん」と早稲田の応援部「わーおくん」それぞれのスタンプが出て、スタンプで応援合戦が出来たら良いなと思いました。こういうスタンプなら、学生スポーツに興味のなかった慶大生でも面白がって使ってくれたりするでしょうし。流行っているLINEスタンプの傾向を踏まえながら、慶大生が使いやすい、けどクセのある突っ込みどころのあるものにしようと日吉の食堂で図案を出し合ったりしていましたね。 —現役当時の近藤先輩を、堤さんはどのように見ていましたか? T:Ustream配信でご協力頂く業者さんとの懇親会に呼んで頂いたり、「ユニコンくん」の着ぐるみ発注など具体的な部分を任せて頂いたりして、「楽しそうだな」と思っていました。これらの活動は本来の部活動とはプラスアルファの部分ですが、そこに苦痛は感じなかったです。 K:実はこれらの企画って部内に向けた意味も大きいんです。 —それはモチベーションの面として、ですか? K:そうです、應援指導部は体育会を応援する団体なので、チャラチャラしたやつに頑張れって言われたくないじゃないですか。ちゃんと応援出来るように練習が厳しくて辛いこともあるんですよ(笑)。そんな毎日の中に、こういう業務があったらちょっと楽しんでやれるんじゃないかなと。 —近藤さんは今コピーライターとして広告の仕事に携わられていますが、学生時代こういう情報発信をしてきたことが、今の仕事に繋がっている面もあるのでしょうか。 K:面白いなと思いましたし、一方、もっと知って欲しいという思いだけでも限界があるとも感じました。箭内道彦さんの「広告とは応援である」という言葉を知って、「そうか、広告だったら応援出来るな」と気づきました。コピーという技術を身につけて、技術を身につけたら、広告という力でいつかは応援できればと思い、志望理由も「学生スポーツを応援する」というものでした。(今回のポスターで)こんなに早く応援できるとは思っていませんでしたが(笑)。
みんながどこかで持っている両校のイメージを体現
—そして今年のこのポスター。近藤さんと堤さんは、社会人2年目と大学4年生(主将)という立場になった中で、普段はどんなコミュニケーションを取っていたのですか? K:(社会人になり)コピーについて色々学んでいく中で「應援指導部のことを書いたら、どうなるかな」とアイデアを色々ストックしていて、三田の行きつけの喫茶店で「新歓でこんなことやったら面白いんじゃない?」とか、色々普段からアイデア交換をしていました。 今回のポスターは、両者を登場させて対立構造にした広告って学生スポーツだからこそ出来ることだなと思っていた時に、「(両者が写真で)向かい合っているのはどうですか」という彼(堤さん)のアイデアがうまく合致して生まれました。

[ポスターの原案となったスケッチ]

—対立しているそれぞれの人選は、どのようなイメージだったのですか。 K:最近は早稲田と慶應のイメージの差がなくなってきているので、あえて昔の両校のイメージをそのままぶつけてみましょうという考え方です。早稲田の愚直でまっすぐな感じと慶應のお高くツンツンした感じという、みんながどこかで持っている両校のイメージとフィットするように選びました。 5パターンあるので、コピーも「全部読んだら慶早戦がわかる」という構成にしました。例えば野球部は真剣に戦っている中であまり変なコピーを載せたくなかったので、優勝決定の条件を反映したコピーにしましたし、マスコットは少しひどいことを言っても可愛げがあるとか、吹奏楽は両校を象徴する歌を入れたりとか。ちなみにリーダー部の「早稲田の勝利しか、見えない。」「それは視野せまい。」は彼が普段から言いそうな言葉をイメージしています(笑)。 T:普段から、ちょっと冷めたことを言いがちと言われるんです(笑)。 K:「視野せまい」とちょっと斜に構える感じが慶應っぽいなと。そして、やはりチアリーディング部が一番良く撮れていたので、そこにハマるコピーは何か、すごく考えましたね…。慶早戦は試合前にも煽り合いのコールをやったりするんですが、煽りとして良い言葉がないかと考えていたら「ビリギャル」がパッと浮かびました。 チアを表現する「勝利の女神」といわば対極の言葉なので、チアの写真と一緒に載せると意外性もあるじゃないですか。また、一番新しい慶應を表す言葉だなとも思いましたし。ただ単刀直入に「ビリギャル」と表現すると刺激が強いので「ビリギャルって言葉がお似合いよ、慶應さん。」と少し表現は和らげました。 さらに「ビリギャル 対 何か」という分かりやすく対決構造がイメージ出来る言葉は何かなと考えると、「ハンカチ」だと分かりやすいなと。ここも個人攻撃になってしまってはよくないので「ハンカチ以来パッとしないわね、早稲田さん。」という「ハンカチ王子の頃の華々しい活躍や報道があった頃」から比べると盛り上がりが減っているんじゃないか、というニュアンスにしました。 —それぞれのコピーが生まれた経緯は? K:僕が書きまくって、一緒にやってくれた同期のアートディレクターに見せて意見をもらって、「え、これってどういうこと?」などと反応があった時は、「これじゃ響かないんだ」と書き直したりして、そこで絞られたものを現役の部員に見せて「いいですね」となったものを採用しました。この同期のアートディレクターはスタンプにも協力してもらっていたので僕らの思いもわかってくれている一方、芸大出身で慶早戦からある意味遠い存在でもあるので、率直な意見をくれるんです。 —一気にSNS上でバズったきっかけというのは? K:実は会社の先輩(電通・阿部広太郎さん)がきっかけなんですよ。たまたまスタバでカタカタやっていたら「何やってるの?」と聞かれて、「ポスター作ってるんです」なんて言いながら見せたら「面白いね!データ送ってよ」って言われて送ったら、いつの間にかツイートしてくれていて、周りから「バズってる」って電話がかかってきました(笑)。
[阿部広太郎さんのツイート]
—学内での反応はいかがでしたか。 T:ポスターが盗まれたり、いつもはなかなか受け取ってもらえないビラもすぐなくなったり、私もキャンパスを歩いていると「“視野せまい”の人ですか?」と言われたりしました。 K:ポスターは日吉、三田、SFC、ラーメン二郎三田本店という4拠点に貼りました。 —当日の盛り上がりもすごかったのでは? T:初戦の5/30(土)は満員の34,000人でした。翌5/31(日)も早稲田の優勝が前日に決まった、いわば消化試合であったにも関わらず30,000人越えでした。 K:球場の方のご協力もあり、当日(試合会場の)神宮球場にも貼ることができました。土曜にこの試合に来たという思い出をシェアしてくれて、その投稿を土曜に見た方が日曜に来てくれたりもする可能性もあると思ったので、当日は絶対貼りたいと思っていました。元々の5種類以外にも、自分が入って写れるような背景だけのバージョンも用意しました。早稲田側からも沢山来てくれましたね。 T:私も土曜に負けて落ち込んで帰ろうとしていたら、一緒に撮ってくださいと言われたりもしました(笑)。 K:近年は娯楽の充実とか、昔と比べて慶早戦に人が来ないとか、色々言われているんです。確かに学生の質が変わって「対決しなくてもいいじゃん」と思うようになったのでは…と感じていたので、今回は両校の学生のどこかにある愛校心をくすぐってやろうという狙いがありました。
これからも継続して企画ができるような集団に
—やはり、今後もこの盛り上がりを継続していこうというお話も挙がっていますか? T:はい、秋のリーグ戦でも何かしたいという話をしています。また、来年の春には私も卒業するので来年以降を見据えて、下級生の中でこういった企画を進めるチームを作ることも考えています。 K:今回、現役の部員達も「ここまで話題にすることが出来るんだ」と身をもって体験することが出来たと思います。今回の「こういう課題があって、こういうテーマを設定して、こういう企画をしました」という情報は私からもちゃんとシェアして、まず次の秋は現役部員だけで企画ができるような集団に変えることが出来たら良いなと思っています。 —OBとして関わられた近藤さんご自身としても、きっとこれからのお仕事に活きる面も。 K:まだ私は2年目の駆け出しのコピーライターに過ぎなくて、今回も慶早戦というコンテンツがあってこそ話題になったと思うんです。まずはコピーライターとしてもっと勉強して、もっといろんなものごとを応援していきたいです。やはり「応援したい」という気持ちがコピーを書く上で最も大事だと思いましたし、コピーが多くの人に伝わったという本当に貴重な経験をさせて頂くことが出来ました。 —堤さんは今4年生ということは、就職活動中。今回の経験は将来にも繋がりそうですね。 T:そうですね、やはりこれまでで一番大きい経験でした。 K:企画、制作、メディア対応まで全部やっていますからね。 T:「自分がこういうことをしたら、受け手がどう思うかな」と考えることがとても楽しかったです。実際に色々考え抜いて、動いて、形になって世に伝わったという体験をさせて頂いて、元々志望していた広告業界に入ることが出来たらこういう体験がきっと出来るのかな、是非行きたいなという思いが一層深まりました。 K:実は彼は昔からこういうことが考えられる・出来る子だと思っていたので、私が4年の時、当時2年でありながら一緒にやってもらっていたんですよ。もしまた同じ業界で一緒に働くことが出来たら、それは嬉しいですね(笑)。 画像提供:慶應義塾大学 應援指導部

株式会社 電通 第5CRプランニング局 コピーライター 近藤雄介さん(右)

慶應義塾大学 應援指導部 主将 堤史門さん(左)

2015年上半期話題のCM、au「三太郎」シリーズ展開の狙いとは

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Case: au「三太郎」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。 今回はauのCMシリーズ「三太郎」を取り上げます。松田翔太さんは桃太郎、桐谷健太さんは浦島太郎、濱田岳さんは金太郎として登場するおなじみのシリーズ。自由な発想で昔話の英雄たちが繰り広げるストーリーが好評です。この「三太郎」シリーズ開始の狙いと、これまでの反響について、KDDI株式会社 コミュニケーション本部 宣伝部長 矢野絹子さんにお話を伺いました。
Interview : 石原 愛美(Aimi Ishihara)/Text : 市來 孝人 (Takato Ichiki)
これまでのTVCMで伝えてきたことを見直し。あたらしさを意識
—「三太郎」シリーズが始まったきっかけは、どのようなものだったのでしょうか? 通信事業者としてこれまでも様々なCMをやってきましたが、移動機や料金プランでの差別化が難しい中、何をどうお伝えしたらauのことを好きになってもらえるかということをずっと考えていました。 現在「あたらしい自由。au」というスローガンをauブランドとして掲げていますが、CMでも「auってあたらしいことをどんどんやっていくんだ」という点を訴求したく、新しい「三太郎」シリーズを始めました。 —具体的にはどういった点で「あたらしい」部分を意識されましたか。 昔話って小さい頃から聞いていてなんとなく思い描くイメージがありますよね。それをauらしく変えてみたらどうなるだろうと考えたのが発端です。別々の物語の主人公が友達だったり、現代語で会話したり、といった既成概念を打ち破るようなことをやりたいなと。起用させて頂いた俳優さんも、皆さんが思い描く昔話のイメージとは違う「こういう方が出てくるんだ」という意外性を意識しました。 また、今までTVCMの15秒・30秒という短い時間の中に「こういう移動機が出ました」「こういう料金プランです」と詰めこんでお届けしていましたが、そこも一旦見直しをしようと。 基本的な構造として、CMの前半では特段商品のことを言わず、商品特徴に繋がるような会話劇を繰り広げ、最後に商品が出てきて「あ、そういうことだったのね」と楽しんでもらえる構造にしたのがあたらしい部分ですね。 —CM好感度ランキングでも昨年の12月から今年5月まで、現段階では6ヶ月間首位ですね。 もちろん好感度を得る為だけにCMをやっているわけではないのですが、CM DATABANKさんのランキングで上位に来るということは視聴者の方がauのCMを思い出して下さっている、つまりお客様に届いている証かなと思いますので嬉しい結果ですね。 —特にCMを通して届けたいというターゲット層はどのようなイメージですか。 メインは若年層ですが今や携帯電話は老若男女幅広い方がお持ちなので、お届けしたいという点では全体ですね。CM自体は会話のテンポも早く進むので、若い方以外の方々の反応がどうなるかなと思っていましたが、結果的にはお子さんから50-60代の方まで好きと思って頂いていて良かったです。 —契約の純増数など、効果として現れている面もございますか? CMだけで直接的に評価しづらいですが、ちょうど市場が盛り上がる春商戦の時期にインパクトの強いCMをやることでより多くのお客様にauショップに来店いただけたという実感はあります。
「三太郎」展開の広がり。「テレビ発信でこんなに反響があるんだ」という発見があった
—auショップで「金太郎飴」の配布というキャンペーンもございましたね。 テレビでCMを見て「あれが欲しい」と言ってくださった方や、SNSに写真をアップされている方もいらっしゃいましたので、店頭での盛り上がりも作れたかなと思います。 —WEB上では期間限定で「あたらしい英雄」シリーズのLINEスタンプも提供されていました。 弊社もこれまでのキャンペーンで何度かLINEのスタンプを実施させて頂いていますが、どういう絵だとチャットの中で使って頂けるかのノウハウを貯めながらやっています。 —「三太郎がハリウッド映画化」というエイプリルフールネタもありましたよね。 ここ数年、auとしてエイプリルフールネタを色々仕掛けているので、「今年は何をやってくるだろう」と期待して下さる方も増えました。今年は「ハリウッド映画化」でしたが、他にも「玉手箱」を活用した案などいくつかある中で、最も楽しんでいただけそうな「ハリウッド映画化」を採用しました。 今は面白い企画があるとあっという間にSNS上で拡散されるので、ソーシャルの世界で皆さんに楽しんで頂けるか・拡散して頂けるか、ということを意識して様々な話題作りをしています。 —今後の展開については。 高校生の方の「やってみた」動画がアップされたり、想像以上に親しんで頂いているなという実感があります。若者のテレビ離れと言われますが、テレビ発信でこんなに反響があるんだということも発見でした。ひとつきっかけがあれば、若い方にもテレビ起点で拡散出来るなと思いましたし、まだまだやり方はあるかなと思っています。 引き続きCMについてはストーリー性を大事にして、シリーズを続けて見ていくと「次はこうなるんだ」と楽しんで頂ける展開を計画しています。好評を頂いているこのフレームは是非長く続けていきたいと思っていますので、出来るだけいろんな展開をしていきたいですね。

KDDI株式会社 コミュニケーション本部 宣伝部長 矢野絹子さん

松岡修造さんがあなた(100通り)を呼んで、歌って、本気で応援してくれる「C.C.Lemon元気応援プロジェクト」の舞台裏

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Case: サントリー「C.C.Lemon元気応援プロジェクト」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。 今回は、松岡修造さんが歌・作詞を担当、かつニックネーム100通りで名前を呼んで応援してくれる「C.C.Lemon元気応援SONG」、抽選で1組に松岡修造さんが実際に応援に来てくれる「C.C.Lemon元気応援キャンペーン」(応募受付は終了)、松岡修造さんがスタンプになった 「C.C.Lemon元気応援LINEスタンプ」(DLは6月28日まで)といった展開が行われている、「C.C.Lemon元気応援プロジェクト」を取り上げます。 このプロジェクトは実際に松岡修造さんと想いを共有することで、より良いコンテンツが生まれていったそう。その実施の舞台裏をサントリー食品インターナショナル株式会社 食品事業本部 宣伝部 課長 江藤雄資さんに伺いました。
Interview : 石原 愛美(Aimi Ishihara)/Text : 市來 孝人 (Takato Ichiki)
「日本一元気な男」とともに、日本中に元気を届ける
—まずはこのプロジェクトが始まった経緯について教えて頂けますか? C.C.レモンは1994年の発売以来、ロングセラーブランドとしてご支持を頂いていますが、商品のコンセプトは「元気を補給出来る飲料」です。この点に着目して、「日本一元気な男」である松岡修造さんを応援団長に起用して、日本中に元気を届けるというプロジェクトを立ち上げました。 —松岡さんが"応援する歌"を自ら歌うという点、とてもインパクトがあります。 松岡さんとは密に色々お話をさせて頂いたのですが、松岡さんご自身、本気で「日本を元気にしたい」と思っていらっしゃるんですよね。「日本中の元気のない人が元気に、元気がある方はもっと元気になってもらいたい、この熱い想いを伝えたいんだ」と。ならばそれを伝える歌はどうだろう?と松岡さんからご提案を頂き、さらに「そこに歌詞をつけてもいいですか」とおっしゃって頂きました。こちらとしては「是非お願いします!」という感じでした。 —メイキング動画を拝見していても、松岡さんのご意見がよく反映されているように感じました。 一緒に考え、一緒に作っていくという形を取らせて頂きました。我々の想像以上に色んなことを考えられていて、日本中を元気にしたいと本当に思っていらっしゃる方なので、どんどんアイデアが出てくるんですよ。お聞きしている我々もどんどん元気になって「それは是非一緒にやりましょう」と盛り上がってくるわけです。 —今回のプロジェクトはWEB限定のものですが、これだけのクオリティならテレビでも展開可能ではないかという中、あえてWEBに限定された意図はありますか? 松岡さんがこだわられていたのが「究極の応援は1対1」ということです。目に見えない多くの人に向けた応援では伝わらないのではないかと。その思いで、100通りのニックネームで直接呼びかける応援歌を制作しました。100通りの応援歌を放映するには、テレビではなくWEBでの展開が最適だと考えました。 —その100通りの「C.C.Lemon元気応援SONGムービー」の中では、私は「あいみ」なので「あいちゃん」として呼んでもらった気分になったのですが(笑)…名前の選定はどのようにしたのでしょうか? 日本に多い名前をベースにしつつ、できるだけ多くの1対1の体験を増やしたかったんです。例えば「あいみ」さんだと、その名前の方だけに宛てたものになり狭くなってしまうので、「あいちゃん」のように対象が広がるニックネームにしました。 —100通り、「あ」行から「ら」行もほとんどテンションが変わらないのですが、これは続けて撮影されたのですか? 一日で撮影しました。松岡さんは一回も座らなかった位、ほとんど休まれていないんですよ。そんな姿を見ると、撮影に立ち会った我々も本当に「頑張らなきゃ!」と思うんですよね。 事前に振り付けはありましたが「もっと元気が伝わるようにしたい」という松岡さんのご意見もあり、現場で取り入れるシーンもありました。
「自分の名前がない」という反響に、「まだまだ元気を届けられていないことに対して謝りたい」
—5月にメイキング動画と「感謝罪」ムービーがアップされましたが、これは元々決めていたものですか? 元々メイキングは出そうとしていました。「感謝罪」ムービーは、SNS上で「自分の名前がない」という反応も結構あったことで、「僕はみんなに元気を与えたい、まだまだ元気を届けられていないことに対して謝りたい」と松岡さんがおっしゃられたんです。とても有難いことに、このプロジェクトのあり方を本気で考えて下さるんですよね。 —歌のレコーディングの裏側も印象的です。 初めて歌われた時から、ボイトレをされて最終的にレコーディングするまで、実は一ヶ月位しか期間がなかったのですが、その期間の努力が素晴らしくて、歌手の方のような歌声になっていましたね。その上達の裏にあるのは本当に「届けたい」という思いで、「歌手じゃないから上手には歌えない。でも想いが届くように気持ちを込めて、熱く歌わないとダメだ」と。レコーディング現場も盛り上がって、みんなでいいものを作ろう、という雰囲気になりました。 —LINEスタンプの展開もありました。 こちらも「元気にしたい相手に送ってほしい」という思いで作ったものです。みんなが送り合うといえば、LINEのスタンプが良いツールだろうと。 —松岡さんがオリジナル応援歌をつくって「出張応援」に来てくれるのも羨ましいです! 当選者1名というキャンペーンにも関わらず、3000名超の応募を頂きました。 —そんなこのプロジェクトの想定ターゲットは? 老若男女、幅広い方々です。元気が欲しい人、みんながターゲットです。 —SNS上などで印象的な反応はありましたか。 やはり「元気をもらえた」という反応が一番多かったです。また、(4月からキャンペーン開始という)就職活動をされている方が多いタイミングでもあったので「これを送り合ってる」とか、送られた方が「すごく元気出た。これから面接行ってくる」というような反応もありました。実際に、日常生活の元気が欲しいタイミングで使って頂いているんだなという実感がありますね。 —このプロジェクトのゴールはどのような点ですか? C.C.レモンのコンセプトである「元気を補給できる飲料」ということを改めて感じていただくという点です。 —今後の展開についても是非教えてください。 来年の商品計画も含めて検討し、ちょうどこれからどうするかというところを松岡さんとも話を始めました。まさに共同でのプロジェクトですね(笑)。

サントリー食品インターナショナル株式会社 食品事業本部 宣伝部 課長 江藤雄資さん

「午後の紅茶」CMソングに、嵐「Love so sweet」が起用された理由とは

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Case: キリンビバレッジ「午後の紅茶」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」のスピンアウトとして、特に「広告」や「企業」と「音楽」の関係について掘り下げる連載「MUSIC IN ADVERTISING」。 今回は2015年3月よりOAされているCMに、2007年2月リリースの嵐「Love so sweet」がCMソングとして使用されている、キリンビバレッジ「午後の紅茶」を取り上げます。なぜ、今あえて少し懐かしさを感じるこの曲を使用することにしたのか(筆者も思わず学生時代を思い出し、CMが流れた瞬間耳を傾けてしまいました)。その理由を、キリンビバレッジ株式会社 マーケティング本部 マーケティング部 宣伝室 主任 二宮倫子さんに伺いました。
Interview & Text : 市來 孝人 (Takato Ichiki)
様々な候補曲から「Love so sweet」に決まるまで
—まずは、このCMの狙いについて聞かせてください。 「午後の紅茶」は1986年に誕生して今年、30年目を迎えました。今期のCMはその節目に、原点に立ち返りかつ新鮮なイメージで、もう一度紅茶に注目を集めたいという目的がありました。 紅茶カテゴリの中ではNo.1ブランドではあるのですが、炭酸飲料や果汁飲料など様々な飲料がある中で、紅茶はともすれば忘れ去られがちといいますか、みんな飲んでいるけれど…という飲料になってしまいがちです。そこで改めて「紅茶って良いよね」と思って頂きたいなという狙いです。 紅茶の他の飲料と違う特徴はやはり華やかな香りなので、大人の女性にまさに移り変わろうとしているような3人のタレントさん(早見あかりさん・大原櫻子さん・季葉さん)を起用し、紅茶の香りとリンクするようなCMを始めました。 —このCMのターゲット層は。 紅茶は幅広い世代に飲んで頂いている飲料ですが、今回メインとしたのは20-30代の女性です。 彼女らに「紅茶を飲んでいる女子って素敵」と思ってもらい、日常から紅茶を楽しむ「紅茶女子」を増やしたいと考えました。大人っぽくて、オシャレで、会社に入ったばかりの新入社員から憧れられるような、そんな素敵な女性をイメージしています。 —ということは、やはりその世代に響く曲としての「Love so sweet」でしょうか? そうですね。「みんなが知っている曲」で、なおかつ「青春時代に紅茶を飲みだした頃の甘酸っぱい記憶が思い出されるような曲」として選ばせて頂きました。香りで気持ちをアゲてくれる、生活に彩りをもたらしてくれる、そんな紅茶のイメージに近い「高揚感のある曲」という点もありましたね。 —やはり決まるまでは、様々な候補曲があったのではないですか? 洋楽邦楽問わず本当に幅広く、ですね。「Love so sweet」は当時の思い出を呼び起こしてくれるとともに、今聴いても新鮮な、いつまでも鮮度のある曲だなと思いました。「午後の紅茶」も、そういう存在でありたいですし。 —選曲にあたって、社内のチームの中ではどんな話をされていたのでしょうか? たまたまなのですが、「午後の紅茶」チームは私を含めて商品と同い年世代が多くて、(「Love so sweet」を覚えていて)ここは結構共感ポイントだったかなと思います。上司は50代なのですが、やっぱりちゃんとこの曲を覚えているし、みんな納得感がありました。 また、タレントさんがネクストブレイクと言われる方々ということもあるので、曲の方は王道感を出したいなとも考えました。
CM自体も「音楽」への評価も高かった
—消費者の反応はいかがですか。 事後調査を実施したところ、CM自体も好評でしたし、様々な要素の中で最も高評価を頂いたのは「音楽」でした。ターゲットは20-30代女性ですが、結果的には老若男女問わず親しんで頂いています。また、嵐さんが出演せず曲だけということも意外性があったようです。 —商品の売上げも好調ですか? リニューアルやCMの効果もあり、先月は前年を上回る販売でした。 —今後のCM展開については。 引き続きこの音楽・タレントさんを起用したCMを展開していきたいと考えています。今年だけとは言わず、長きに渡って、商品も広告もお客様から愛されるものに育てていきたいです。

キリンビバレッジ株式会社 マーケティング本部 マーケティング部 宣伝室 主任 二宮倫子さん

ここをタッチしながらご覧くださいーーPARTY NY×安室奈美恵さん ミュージックビデオ制作の舞台裏

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Case: 安室奈美恵「Golden Touch」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。 今回は、クリエイティブ・ラボ「PARTY NY」川村真司さんと、映像プロダクション「LOGAN」Kenji Yamashitaさんが手がけた安室奈美恵さんのニューアルバム「_genic」収録曲「Golden Touch」のミュージックビデオを取り上げます。 冒頭に「ここをタッチしながらご覧ください」(「ここ」は画面中央)と出てくる通り、画面をタッチしたまま閲覧していくと、まるでその指にミュージックビデオが反応して動くように見える仕掛けになっています。このアイデアはどのようにして生まれたのか、PARTY NY Executive Creative Director / Founderの川村真司さんに伺いました。
Text : 市來 孝人 (Takato Ichiki)
視聴者が実際に映像をタッチできるような"騙し絵的な"体験を
—Golden Touch MV制作には、どのような経緯で携わられることとなったのでしょうか? 本件のプロジェクト・マネジメントをしているEPOCHの石澤さんを通して、安室さんとレーベルから「アーティストの出演がない中で、クリエイティブな遊び心にフォーカスしたビデオ」を作りたいというご相談をいただきました。企画が決まった後は、同じくNYで活動している映像プロダクションLOGANを誘って、すべてニューヨークで完成させました。 —制作時の与件などはございましたか? 上記の通り、「アーティストが基本的には出演しない」「最終的にはDVDにパッケージされる」ということが前提としてありました。 —今回のMVのアイデアは、「Golden Touch」という曲名から着想されたかと思いますが、このアイデアが生まれるまで、苦労された点などございますか? アイデアは意外とすぐに思いつきました。「Golden Touch」というタイトルと、印象的な歌詞を聞いた時、視聴者が実際に映像をタッチできるような騙し絵的な体験を作れないだろうかと考えました。DVDにもなることが前提であったので、実際にインタラクティブなのではなくて、タッチスクリーンのいらない疑似的なインタラクティブ体験にできたら新しいのではないかと考えました。(最終的にはアプリバージョンもローンチしましたが。) —制作にあたってのコンセプト、こだわられた点などありましたら、お教え頂けますか。 実際には触っていないのに、触っているような気がするような体験を作るために様々な試行錯誤をしました。どのくらいズームすれば押しているような気がするか、どのくらいのスピードで画面がスライドしたら物体を倒しているように感じるか。科学実験をしているような気持ちでいろいろ試すのがとても楽しかったです。
良い音楽と強い映像アイデアがあれば、バズが起こせる
—安室さんやレーベルから、このMVについて反応・感想などございましたか? これまでとは違ったアプローチの作品ができた、ととても喜んでいただけました。ローンチして数週間しか経っていないにも関わらず世界中で800万回以上再生されるなど、これまでのリスナー以外の層にも彼女の音楽を届けられたという意味で、新しいだけでなく非常に良い機会にもなったともおっしゃっていただきました。 —かなりの話題となっていますが、ユーザーからの反響は予想通りでしょうか。または、予想以上でしょうか。 世界中の人々にも体験して話題にしてもらえるような企画を考えたつもりでしたが、正直このスピードでの拡散は想像以上でした。良い音楽と強い映像アイデアがあれば、こういったバズが起こせるということを再確認させてくれました。 —これからも安室さんのプロジェクトに関わられる等、今後の展開予定がもしございましたらお教え頂けますでしょうか。 今後も安室さんのプロジェクトには関われたら嬉しいですね。ビッグネームがありながら常にクリエイティブに関してチャレンジングなアーティストはまだまだ少ないので、彼女と一緒にこうしたコンテンツの先例をドンドン作れたら良いなと思います。

PARTY NY Executive Creative Director / Founder 川村真司さん

自衛官募集の広報をゲームアプリで。「自衛隊コレクション」制作の狙いとは

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Case: 防衛省・自衛隊「自衛隊コレクション」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。今回は自衛官募集広報の一環として制作されたゲームアプリ「自衛隊コレクション」を取り上げます。 自衛隊とゲームという、一見意外な組み合わせ。この制作の狙いについて、株式会社 大広 アクティベーションデザインユニット クリエイティブディレクター 加藤剛さん(文中GK)、ビービーメディア株式会社 インタラクティブコンテンツプロデュースグループ 第1ユニット長 プロデューサー 扇谷岳大さん(文中O)・テクノロジーデザイングループ長 テクニカルディレクター 木戸竜也さん(文中TK)・インタラクティブコンテンツプロデュースグループ ディレクター 野田奈々恵さん(文中N)・インタラクティブコンテンツプロデュースグループ デザイナー/イラストレーター 増田佳奈さん(文中M)にお話を伺いました。
Interview & Text : 市來 孝人 (Takato Ichiki)
昨年はARアプリ、今年はゲームアプリ。若者がより親近感を持てる内容に
—まずは開発の経緯についてお聞かせ下さい。 GK:防衛省では、自衛官の募集広報を毎年実施されています。このアプリ以外にもCMやポスターも作られているのですが、募集対象者である若者がより接触するスマートフォン向けに何か出来ないかというのが、ここ数年の課題でした。 与件としては、自衛隊に対して親近感を持ってもらいたいということと、自衛隊といえばほふく前進、などといったアナログなイメージに対して、実は多種多様な職種があるんだということを知ってもらいたいということがありました。自分にもやれる仕事があること知ってもらうことで、より若者の職業の選択肢に入ってくるので。 —昨年も「キミにエールAR」というARアプリを展開されていますね。 GK:自衛官になった未来の自分が今の自分を応援してくれるという仕組みを作ったのですが、体験するまでに少しだけ手間が必要な内容になっていたので、今年は気軽に簡単に若者に使ってもらえるように、ゲームにしようと。 ーこういった比較的「新しい」提案が受け入れられる、という点は意外だなと感じました。 GK:募集に関しては危機感をお持ちで、若者に人気のコンテンツなどを積極的に取り入れようとされたり、最先端のデジタル技術に興味をもたれたりと、「新しいこと」に非常に敏感な方々だなと感じています。 —「キミのおうちの安全を守れ!」という、身近なテーマ設定をされていますが、この狙いは? GK:「国を守る」という自衛隊本来のテーマのままだと、日々のニュースに触れる機会が少ない若者に親近感を持ってもらうという目的を果たすのが難しいのではないかと感じていました。「家族・家」といった身近な存在であれば若者でも共感しやすいだろうと考えテーマとしました。実際の自衛隊も家族や家を守ってくれる存在ですし、違和感はないだろうと。 ーゲームとしての難易度設定については。 GK:操作感については、シンプルに始められるものが良いだろうということで「指一本」で出来るようにしていますが、難易度は重要な任務を担っている自衛隊ならではのものすごく難しいレベルにしています。 N:テストが大変でした。開発したものがあがってきて最初に触るのが私だったのですが、難しすぎてテストにならない位でした(笑)。自衛隊のイメージも踏まえ決して簡単ではないけれど、頑張ればクリア出来るというところは意識しました。 —ストーリー設定については。 TK:それぞれの職種の特徴を活かして企画する、という点はとても難しかったですね。ゲームを進める時も、ものを壊さない演出にしたりと、実際の自衛隊の理念に即した形になるように設定しました。 —マスコットも分かりやすくデフォルメされていますね。 M:それぞれの職種の服装やポーズはかなり詳しく調べました。シンプルに削っていって、落ち着いた形が現在の丸いけど可愛過ぎないというものです。 N:戦車などについては実際のものが写っている資料などを参考にしつつ、いつでも動きをイメージ出来るようにラジコンを手元に置いて、研究したりもしました。 O:ストーリーやマスコットの開発については、このチームをスタッフィング出来て本当に良かったです。作る過程の中では色々大変なタイミングもあったはずですが、社内の成功事例としても注目頂いています。
「自衛隊公式らしさ」も楽しんでもらう
—それだけの苦労があってのこのゲーム、SNS上でのユーザーの反応はいかがでしたか? GK: SNS上では狙いっていた通り「難しい」という点にポジティブな反応がありましたね。もっとネガティブな反応が多くなる可能性も考えたのですが、「難しい」事も含めて「自衛隊公式ならでは」を楽しんでもらえたのかなと。基本的には、ローンチ時にプレスリリースの配信を中心にSNSでの出稿を行ったくらいだったのですが、想定していた以上の反響でした。 YouTubeで体験動画があがったり、まとめページや攻略ページが自発的に作られたり。(メディアの動きとしても)週間アスキーが特集記事を書いてくれたり、TOKYO MXのニュース番組やテレビ東京のアプリ紹介番組などでも、若者の間で話題のアプリとして好意的に取り上げて頂きました。ちなみに国会の予算審議でも話題に挙がっていて驚きました。 —やはり、SNSの声も踏まえてチューニングしていった点もありますか? GK:「難しい」点については、難易度は下げずに、クリアはしてもらいたかったので、セーブ機能を途中から追加しています。 ー応募者数増などの動きもありますか? GK:7月から応募が本格化するので、(応募者数については)まだこれからになります。「応募者数を増やす」というよりは、「親近感を持ってもらう」という制作目的でもあるので、目標数などは設定していません。ただ、アプリから自衛官募集サイトに誘引する導線はちゃんと引いてあり、アプリローンチ前の1週間とローンチ後の1週間ではサイトへのアクセス数が3倍になっているので、アプリもしっかりと貢献できているかなと思います。 —今後の展開予定はいかがでしょうか? GK:6月30日にMISSION4「閉めろ! 我が家の出入口」が追加されています。ダウンロードして遊んでいただけると嬉しいです。

株式会社 大広 アクティベーションデザインユニット クリエイティブディレクター 加藤剛さん(上中央)

ビービーメディア株式会社 インタラクティブコンテンツプロデュースグループ 第1ユニット長 プロデューサー 扇谷岳大さん(上左)

ビービーメディア株式会社 テクノロジーデザイングループ長 テクニカルディレクター 木戸竜也さん(上右)

ビービーメディア株式会社 インタラクティブコンテンツプロデュースグループ ディレクター 野田奈々恵さん(下左)

ビービーメディア株式会社 インタラクティブコンテンツプロデュースグループ デザイナー/イラストレーター 増田佳奈さん(下右)

クーリッシュのCMで佐々木希さんが大活躍〜「改造人間NOZOMIN」ストーリー設定の狙いとは

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Case: ロッテ クーリッシュ「改造人間NOZOMIN」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。今回はロッテ クーリッシュの「改造人間NOZOMIN」シリーズを取り上げます。 佐々木希さんが「肘ビーム」「膝ビーム」を繰り出す、コミカルな「改造人間NOZOMIN」シリーズはネット上でも話題に。なぜこのようなストーリー設定を行ったのか、その狙いを株式会社 ロッテ 広報・宣伝部 制作課 古野小百合さんに伺いました。
Interview : 石原 愛美(Aimi Ishihara)/Text : 市來 孝人 (Takato Ichiki)
スマホをいじっているシーンからスタートする理由
—今回のCM、なぜこのようなストーリーにされたのでしょうか? 商品の特徴はパウチ容器に入った「飲むアイス」という点です。これまでも「飲むアイス」というコピーを継続して使用しながら、2015年からは新たに「ながらブレイク」という点の訴求も始めました。場所を選ばず、片手で飲む事が出来るアイスなので。ターゲットとしては20-30代男性で、お仕事の休憩時間などちょっとした時間に楽しんで頂きたいなと。 そういった、主にサラリーマンの方が休憩時間に何をされているか考えた時に、やはりスマホをいじりながら休憩されている方が多いのではないかと。なので、スマホを片手にクーリッシュを飲むというシーンを訴求すべく、今回の内容で展開させて頂いております。 —確かにバカリズムさんがスマホを片手に休憩というシーンからスタートしていますが、そのCMの劇中で、スマホで見ているコンテンツとして出てくるものが、なぜ「改造人間」だったのでしょう? 20-30代男性の方は、子どもの頃特撮ものに親しまれている方が多いので、そういった要素を入れると楽しんでもらえるかなと考えました。また、WEBで拡散していくということも考えていたので、拡散しやすい仕掛けとして「なんで肘からビームが出る?」とか「僕も肘ビームを受けたい」と、突っ込みどころを入れる点も意識しました。 —放映開始のタイミングが5月というのは。 アイスは春から夏にかけて市場のボリュームが上がっていきます。また、5月に「とろけるマンゴー」という新しいフレーバーも発売したので、このタイミングに合わせてCMと、売り場もしっかり作っていこうと。 —撮影の裏側はいかがでしたか。 現場はとても楽しい雰囲気でした。佐々木希さんもクーリッシュの顔として長年起用させて頂いていますが、佐々木さんにも楽しんで臨んで頂きました。今回はバカリズムさんも登場していますが、これはメインのターゲット層の方が自分に置き換えて感じて頂ける方ということで、起用させて頂きました。 —TVCMとYouTube、それぞれ制作にあたっての違いなどはございますか? TVCMは15秒の中でどれだけインパクトを伝えられるか、 一方YouTubeの方は、尺をあまり気にする必要がないので、TVCMのストーリーの裏側がよくわかるという視点で制作しました。
TVCMとYouTubeを使い分けて話題化
—TVCMの反響はいかがですか。 ターゲット層から想定通りの反応を頂いた一方、女性からの反応も良かったです。佐々木さんが髪型を変えた後「やっぱりかわいいよね」というWEBでの盛り上がりもあったので、その流れもあっての反応かもしれないですね。 —YouTubeの再生など、こちらの反響は。 視聴回数は想定を超えていて、多くの方に楽しんで頂いているなと感じます。海外、例えば香港や台湾からのユーザーの反応もあります。SNSでは「佐々木さんがかわいい」という反応が圧倒的だったんですが、「佐々木希が一皮むけた!」という反応があったり(笑)、また商品を飲んでいるシーンに対しても「おいしそう」という反応もあって嬉しかったですね。 —今後はどのような展開があるのでしょうか。 クーリッシュは爽や雪見だいふくといった他のアイス商品と比べると、まだまだ認知度が高くないので、この容器の特性ならではのシーンを今後もうまく訴求していきたいと考えています。 実は、このシリーズについては7月に続編という形で新作のTVCMのOAを開始しています。そしてYouTubeでのWEBムービーも最終話の第4話がまだ残っておりまして、最近公開を開始しました!このWEBムービーとTVCMも連動しているので、是非お楽しみ頂ければと思います。 またさらに、違った視点でのWEBムービー企画も7月14日より、YouTubeチャンネルにて公開しました。これまでは敵を倒すストーリーものでしたが、こちらは佐々木希さんが悩めるサラリーマンに向けたメッセージをくれるというものです。今回は思わず共感してしまう6つのお悩みに対して、佐々木希さんが時に優しく、時に厳しく「癒され応援メッセージ」を届けてくれます。 また、「僕も肘ビームを喰らいたい」という方のご要望にお応えしつつ、新たな必殺技も登場します!こちらは先日撮影があったのですが、こぼれ話として、佐々木さんもここまで「NOZOMIN」の反応があることにビックリされていて、いろんな現場で「肘ビームやって」と言われるとお話されていました(笑)。

女子大生と共同開発「デルモンテ 花つぼみ ローズウォーター」発売までの舞台裏

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Case: キッコーマン飲料「デルモンテ 花つぼみ ローズウォーター」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。今回はキッコーマン飲料より7月末までの「デルモンテ 花つぼみ ローズウォーター」を取り上げます。 高校生・大学生を対象に募集した「こんな飲料あったらいいな」というアイデアから、「花つぼみ ローズウォーター」の原案を提案した東京都市大学 知識工学部 自然科学科の女子大学生5名のグループの提案を採用。味・商品名・パッケージデザインなどに関して何度も打合せを行い、5名のこだわりを細部に取り入れ商品化しました。この商品開発の狙いについて、キッコーマン飲料株式会社 プロダクト・マネジャー室 中川葵さんにお話を伺いました。
Interview : 石原 愛美(Aimi Ishihara)/Text : 市來 孝人 (Takato Ichiki)
学校に地道にコンタクト。直接プレゼンの機会も
—この商品開発がスタートした経緯は。 まず2014年の4月の終わり頃に、社内にはない発想を元に商品開発をしようというアイデアが持ち上がりました。当社の主な顧客層は30代以上の主婦の方なのですが、将来その世代になる(20代の)いわば未来の顧客層の考えをどうすれば知る事が出来るかなと考えていた事もあり、高校生・大学生の柔軟な発想を募集してみようと。募集は、50校くらいの学校等に私から直接電話やメールでお願いをして、コツコツ応募を集めていきました。最終的には参加が11校。応募アイデアの総数が145点です。 —単に応募を受け付けるだけではなく、学校に地道にコンタクトされたんですね! 今回の狙いとしては、既存の枠をはみでたアイデアを持っている学生さんと出会いたいと思い、事前に学校も決めないようにしました。ただ、学生さんと普段直接繋がる接点はないですから、まずは学校に連絡させて頂きました。(連絡後)学校によって、授業で取り上げて頂いたところや、メールで情報を回して頂いたところもありました。 —やりとりにも相当時間をかけられたんじゃないですか? 電話に一ヶ月くらい付きっきりでした(笑)。学校も突然の依頼に驚かれていましたし、学校内での調整をしていただくなど、たくさんの方にご協力をいただきました。興味を持って頂いている学校には私が伺ってプレゼンさせて頂いたりもしました。 —今回選出された、東京都市大学の学生さんのチーム。その選出理由は? 集まったアイデアは面白い・美味しそうなのが多かったので、選考は困難を極めましたね。とても悩みましたが、「社内の人間からは絶対に出てこない」アイデアという基準を元に判断しました。最終的に10アイデア程残って、その中で一個に決めなきゃねというときに、彼女達の個性(東京都市大学知識工学部自然科学科所属)がアイデアに現れていましたし、アイデアを見た時にストーリーが浮かんでくるものでした。
大学生達の意見はまさに消費者の意見。実現に向けて「なんとかしよう」となる
—そのアイデアが「花つぼみ ローズウォーター」の原案になったんですね。 原案が「花の蜜をドリンクにしたい」というものだったのです。この規模で生産する飲料としては花の蜜そのものを原料にするのは難しかったのですが、アイデアは面白いな、当社の商品ラインナップの中で花を表現する商品というのは、全く新しいジャンルになるなと思いました。 その原案をコンセプトにして実際の商品開発に進むのですが、そこで学生ならではの視点や、自分たちがどんなものを飲みたいかという純粋な意見を出してもらったんですね。実現性が高くないアイデアは自社内で言うと却下されがちですが、まさに消費者の意見ですから、彼女達が言ったアイデアであれば、実現に向けてなんとかしよう、となるわけです。10-20代の嗜好・世界を知る事が出来た事はやはり良かったです。 —実現にあたって最も難しかったのは、どのような点ですか。 味をつくることですね。あくまで既存の例がない商品ということは、味も「こういうものが売れている」などといったベンチマークがない中での開発になるので。しかも、ちょうど味については5人のメンバーそれぞれも好みが違いますから、全員が納得してくれるように「このコンセプトだからこの味だね」という話をしながら、決めていきました。 —実際商品として発売になって、反応はいかがですか。 SNSを見ていると「デルモンテ」や「キッコーマン飲料」という、ブランド名や社名を知らない若い人に知って頂けたのかなと。また、今回印象に残った事は画像付きのツイートが結構あったことです。既存の商品って、商品を買ってもあまり画像付きのツイートをされないものですが、今回は「こんなの買った!すごくバラの香りがする」というつぶやきと一緒に写真があったり…いつもと違った反応が自然発生的に出てきました。また「リケジョ」が開発という面も、メディアでの話題になりました。 —商品は7月末までの期間限定とのことですが。 今回は夏向きのフレーバーなので、7月末まで出荷するとおおよそ8月いっぱいまで店頭に並んでいるかなという見込みです。また、東京都市大学さんともまた何かやろうという話にもなりまして、今後話し合っていく予定です。新商品開発だけではなく、若い人へ向けたプロモーションや、野菜飲料のような既存商品を若い人へ向けて需要を喚起していくようなプランを考えていくなどしていきたいと考えています。

キッコーマン飲料株式会社 プロダクト・マネジャー室 中川 葵さん

産業用ロボットで居合の技を表現し、世界へ拡散。「YASKAWA BUSHIDO PROJECT」実施の狙いと成果

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Case: 安川電機「YASKAWA BUSHIDO PROJECT」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。 今回は安川電機「YASKAWA BUSHIDO PROJECT」を取り上げます。産業用ロボットを扱う安川電機の創立100周年を記念し、数多くの世界記録を保持する居合術家・町井勲さんの剣技を、産業用ロボットの性能限界に挑みながら「MOTOMAN-MH24」で忠実­に再現。その「MOTOMAN-MH24」と町井氏自身がが対決する動画がYouTubeで470万回超(7/21現在)再生と、大きな話題になっています。 BtoB企業でありながら何故バズを生む動画コンテンツを制作し、全世界へ発信していったのでしょうか。このプロジェクトを手がけた株式会社 電通 第4CRプランニング局 デジタル・クリエーティブ・センター デジタル・クリエーティブ4部 クリエーティブ・ディレクター 阿部光史さん、第2CRプランニング局 コミュニケーション・プランニング・センター コミュニケーション・デザイナー 加我俊介さんにお話を伺いました。
Interview & Text : 市來 孝人 (Takato Ichiki)
技術力の結晶である「商品」をいかに主役にするか
—まずは、今回のプロジェクトのきっかけについて教えて頂けますか。 加我:(阿部さんが)BtoB企業はあまりコミュニケーション活動を行っていないけれど、その技術力を活かして何か面白い事が出来るはずだ…と以前から考えられていたんです。何社かに自主提案させて頂いていた所、安川電機さんから創立100周年事業のお話を頂き、本プロジェクトがスタートしました。 阿部:世界に誇れる様々な産業がある日本の中で、「産業ロボット」という業界はあまりコミュニケーションについて力を入れていない印象だったのですが、ロボットってそれだけで魅力があるし面白くなりそうじゃないですか。僕は映像制作の経験があり、加我はイベントやWEB上でのバズを作る事への知見があったので、このチームでスタートしました。 —映像は「和」のイメージが強いですが、制作のコンセプトとしてはどのようなものだったのでしょうか? 加我:安川電機さんは、産業用ロボットの生産台数世界1位を誇る、日本を代表するメカトロニクス・カンパニーです。ただ、これまでコミュニケーション活動を行ってこなかった為に、この誇らしい事実も殆ど知られていませんでした。今回の映像は、創立100周年という節目に、安川電機という企業を改めてプレゼンテーションするという目的で作っていますが、根底には”日本の技術力の高さで世界を驚かす”という想いがあり、必然的に和のテイストになりました。 その上で、表現面で一番大事にしていたことは、技術力の結晶である「商品」をいかに主役にするか、という点です。商品であるロボットを登場させることを大前提として、このロボットが何をやると世界がその技術力/性能の高さに驚くか…という視点で色々考えていました。また、その頃にも世界を見渡すとロボットが主役になる動画は色々あったのですが、さすがに和、日本らしい表現を追求したものはなかったので、映像的にも”跳ねる”可能性があるかなと計算していました。 —町井勲さんの人選については。 阿部:まずは居合の神業を披露できること。そして今回の企画に最も合う方ということで探していくと、かなり早い段階で町井さんの名前が出てきました。世界に向けて日本の安川電機・日本の精神、という点を訴求していく時に、やはりロボットの師匠となる方も、ある程度海外で知られている方がいいなと。 加我:今回はYouTubeのみでの展開だったので、動画自体が自走式に拡散するPRドリブンの要素を包含させていきたいと考えていました。町井さんは、世界中で「現代の侍」と称賛されていた方だったので、適任だなと思いました。 —このロボットは元々、どのような用途のものだったのでしょうか。 加我:産業用ロボットなので、通常は工場のラインに導入されるものです。 阿部:溶接をさせたり、物を運んだり、手首から先がカスタマイズ出来るので、汎用性がとても高いんです。 —撮影時に苦労された点などはございますか? 阿部:撮影自体は3日だったのですが、実機を使ったテストが3ヶ月、さらに町井さんのモーションキャプチャを行ったのがテストの2ヶ月前と、なかなか時間がかかりました。 加我:人間ってよく出来ているなと思ったのが、町井さんのモーションキャプチャデータをそのままロボットに移植してみても、まぁこれが切れないんですよ。角度を変えてみるとか、インパクトの速度を変えるとか、本当に緻密な微調整を何度も何度も繰り返しました。正直、CGでごまかすことは出来るんですが、技術立社として謳っている以上それは出来ないですし、安川電機さん社内でも「僕らの開発したロボットの力で作ったな」と思ってもらえるように、という点は意識していました。 阿部:あと、真剣を使っての撮影ということで、これでもかという程安全には気を配りましたね。アクリル板の防御壁を張り巡らし、金属製の甲冑まで用意したのは初めての体験でした。
海外メディアまで含めてPR活動は重点的に行った
—動画の再生回数が470万回超という反響の大きさですが、これは予想通りですか? 阿部:ある程度の予想はしていましたが、1週間で400万回に達するとは思っていませんでした。 加我:今回、広告費はゼロ円なのですが、海外メディアまで含めてPR活動は重点的に行いました。TIMEやThe Wall Street Journalなど、世界中のビジネスマンの目にとまるメディアは特に。安川電機さんの売り上げが海外だけで6割くらいあるという点も踏まえ海外の露出は大事だと考えていたので、ある意味露出の出方は設計通りです。 反響は予想以上でしたが。一番嬉しかったメディアの取り上げ方が、中国のメディアが「嘘だろ?この技術はとにかく先を行っている」という、商品/性能に根ざした取り上げ方でしたね。 —今回のプロジェクトを振り返ってみていかがでしょうか。 阿部:日本のロボットの技術力と侍、すごくわかりやすい文脈を作れた点がよかったですね。 加我:話題拡散という視点では本当に大成功でした。メディア露出を見ていると、「日本の技術力は素晴らしい!」「日本の技術力は世界にもっとアピール出来る!」と、いち企業を超えた、大きな気運みたいなものまで創れたのがよかったのかなと思いました。 阿部:普段あまり積極的に企業コミュニケーションを行わないBtoB系の会社でも、世界に誇る高い技術を持っていれば、それをクリエーティブとして変換し、強力にPRする事が可能である、と実証出来たのかなと思います。

株式会社 電通 第4CRプランニング局 デジタル・クリエーティブ・センター デジタル・クリエーティブ4部 クリエーティブ・ディレクター 阿部 光史さん

株式会社 電通 第2CRプランニング局 コミュニケーション・プランニング・センター コミュニケーション・デザイナー 加我 俊介さん

日本生命が一般公募でサプライズを仕掛ける「MAKE HAPPYNING」実施に込められた想いとは

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Case: 日本生命「MAKE HAPPYNING」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。 今回は日本生命保険相互会社による、大切な人の人生の「節目」に"幸せ­なハプニング"を届けたいというすべての人を応援するキャンペーン「MAKE HAPPYNING(メイクハピニング)」を取り上げます。 2014年は4つのハピニングを実行し、2015年も応募が開始されました。応募された方の中から選ばれた方とともに制作チームが綿密に計画を練り、実行に移し、動画として公開されます。 応募された一般の方の想いに寄り添って作られるこの「MAKE HAPPYNING」、実施の狙いや撮影の舞台裏を、チームの皆様・プランナー 名古屋考平さん(株式会社電通)、クリエイティブディレクター 佐々木芳幸さん(株式会社monopo)、コンテンツプロデューサー 永田大輔さん(株式会社DISTANT DRUMS)、プロダクションプロデューサー 戸田和也さん(株式会社東北新社)、プロダクションマネージャー 下條岳さん(株式会社東北新社)、監督 萩原健太郎さん(THE DIRECTORS GUILD)に伺いました。
Interview & Text : 市來 孝人 (Takato Ichiki)
日本生命にとってチャレンジング、新しいものだという評価
—まず最初に、この企画が立ち上がった経緯をお聞かせ下さい。 佐々木:最初は、日本生命さんから「若年層向けのプロモーションを考えてほしい」というお話を頂いたことからです。保険は自分のためのものではなくて、人のためのもの。大切の人の為に入るものだということをどう伝えていくかと考えた時に、大切な人の事を思ってサプライズにして届けるという方向性が保険に近いのではないかと。 —佐々木さんと名古屋さんはご一緒にプランニングされる上で、元々何か繋がりがあったたんですか? 佐々木:実は、大学時代から二人でよく友達のサプライズを企画していたんです。当時はユニット名もつけて、サプライズのプロになろうと色々仕掛けていて。今回はまさに学生時代からやっていたサプライズの経験を活かせましたね。 —最初の提案時、クライアントさんの反応はいかがでしたか? 名古屋:日本生命さんでも今回、ターゲット層に近い若い担当の方が決めようという動きがあったのですが、一番若い担当の方が「これが面白そう」とおっしゃって頂きました。 佐々木:SNSで話題にしていくという手法の面も、日本生命さんにとってはチャレンジング、新しいものだという評価を頂きました。またストーリーとしても、単なる広告ではなく、一般に募集して一緒にサプライズを作っていくことが「ニッセイぽいよね」と。 戸田:普段は広告の映像制作の機会が主なので、大体作りこんで準備をして、クライアントさんと共有して撮ることが多いのですが、今回はサプライズなのでバレないようにしなければいけないですし、何が起こるかも分からないので、僕らにとっても挑戦ですし、楽しかったですね。
一人のため、その人がどうしたら喜ぶか考えて作った結果、多くの人に喜んで見て頂いた
—現時点では4つの動画が公開されていますが、選定はどのような基準だったのでしょうか? 戸田:我々チームみんなでインタビューして選定していきましたが、どの応募者の方々も大切な人へのハピニングを実現したいという想いは変わらず、非常に苦労しました。最終的には、「意外性」や「目新しさ」など話題になりそうなテーマを泣く泣く選ばせていただきました。 萩原:具体的な制作の話ですと、(バランスは)年齢層や、「誰から誰」の構図がかぶらないようにという点に配慮しました。 —チームみんなでインタビューとのことですが、候補者の方にはどういう質問をされたのでしょうか? 萩原:その人がどういう方であるかはもちろん、ハピニングを仕掛けたい相手へどういう思いがあるかというところですね。そこに葛藤があったり、人生ドラマがあったりするんですよね。 戸田:#1のお父さん、川口さんは本当”逸材“でしたね。 萩原:お父さんの娘さんへの思いを聞いて、逆にお父さんにハピニングをしてあげた方が思い出になるんじゃないかという作戦にしたんです。 —撮影の中で印象に残ったシーンは。 下條:#1が山梨での撮影だったんですが、都内を出発してドライブという設定で、大体2〜3時間かかるだろうと見込んで我々もセッティングをしていたのですが、お父さんが緊張のせいか気持ち早めに運転してしまったようで、予想より早く着いてしまったりということがありました(笑)。ドライブの様子を撮影する為にGoProを改造して、カメラをドライブレコーダー風のものにしたりして。  #2のデートをほぼ尾行する形の撮影も、気付かれないようにするのが大変でした。 萩原:尾行しているので、正面のカットが必然的になくなるんですよ(笑)。 永田:レストランのウエイター役も実はスタッフで「東京タワーに行きそうだ」とインカムで情報を裏でやり取りしていたのですが、突然彼女の気が変わってお台場になった、ならばと我々クルーも急いで行き先を変更したりとか。 下條:前日の彼氏との仕込みの打合せを、(彼女には)受験勉強中という体で打合せに来てくれていたので、その間彼女からの着信を彼氏が取らなかったんですね。打合せ後に彼氏が「ちょっと勉強中で…」と掛け直したら、彼女は「なんで電話に出ないの」、明日のデートも「もういい」、という感じになってしまい…そのデートがハピニング(撮影)の予定だったので、「明日行けなくなるかもしれないです…」と彼氏から連絡が来たり、ギリギリまでやり取りしていました(笑)。 —それだけ、ハピニングを仕掛ける方とも密にやり取りされていたということは、後から感想などのご連絡もあったりするんじゃないですか? 下條:そうですね、#1のお父さんからは娘さんの結婚式の写真を送って頂いたり、#4のサッカー大会の方も、子どもが撮影の後表情がたくましくなったという報告を頂いたり、色々ご連絡を頂いています。 —編集作業ではいかがでしたか? 萩原:現場で泣いてたよね。 永田:現場でも、編集でも泣き…編集エディターの方からも「仮編しながら泣いたのは初めてです」と。 戸田:登場してくださった方々の人生にとって忘れられない体験になれば良いなぁと思っていたら、僕らにとっても忘れられない体験になりました。 萩原:普段CMの監督をやっている中で「多くの人に分かりやすく作る」ことがあるんですが、今回は一人のため、その人がどうしたら喜ぶか考えて作った結果、多くの人に喜んで見て頂いたという点が興味深かったですね。
今年は締切を設けず、継続的に募集
—ユーザーさんやメディアの反応は。 永田:見て頂いた方からはかなり良い反応を頂きます。メディアなどでも今までのサプライズものとは違ってとても応募者に寄り添っているという声を多く頂きました。また、この企画の特徴として、公開からしばらく経ってからテレビ番組や企業研修に「この映像を使わせて下さい」という依頼が多く来ています。日々仕事や家事や学校などで忙しい方が見る度に「幸せになる」ずっと残っていく企画として出来るだけ長く展開していきたいと考えています。 —クライアントさんの反応はいかがですか。 佐々木:職員の方が支社で使いたいとか、インナー的にも評価を頂いていると伺っています。日本生命としてメッセージを発信していく上で「寄り添っていく」スタンスを評価頂いています。 永田:撮影のプロセスでも、応募者の横に「寄り添う」というのはスタッフ全員かなり意識していましたね。 —「MAKE HAPPYNING」2年目を迎えて、何か変化はありますか? 戸田:応募者の本気度があがりました。動画をすでに見て頂いてから応募してくださる方が多いので、具体的になりました。 佐々木:今まさに選定中です。今年は、2014年度のMAKE HAPPYNINGからさらに進化して、いろいろな立場で大切な人へのハピニングを起こしたいと考えていらっしゃる方が登場する予定です。 永田:今年は締切を設けていないので、これから公開される動画を見て応募して頂ける方もいらっしゃると思います。その点、2014年の経験をフル活用してより多くの応募者の方々とやりとりをしていきたいと考えています。 佐々木:ゆくゆくは「ハピニング」という言葉が一人歩きするくらい、このキャンペーンが浸透すれば嬉しいです。

プランナー 名古屋 考平さん(株式会社電通/下段左) クリエイティブディレクター 佐々木 芳幸さん(株式会社monopo/下段右) コンテンツプロデューサー 永田 大輔さん(株式会社DISTANT DRUMS/上段左から1人目) プロダクションプロデューサー 戸田 和也さん(株式会社東北新社/上段左から3人目) プロダクションマネージャー 下條 岳さん(株式会社東北新社/上段左から2人目) 監督 萩原 健太郎さん(THE DIRECTORS GUILD/下段中)

JALの客室乗務員が初音ミクの曲で踊る!意外な組み合わせが実現した理由

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Case: JAL「ニコニコ超会議」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。 今年の上半期、意外性のある組み合わせとして話題になったJALの現役客室乗務員によるチアリーディングチーム「JAL JETS」が初音ミクによる「39」を踊ってみた動画。これはJALが「ニコニコ超会議」に出展し「最高のおもてなし」として、移動が不便なイベントホールアリーナと客席を繋ぐための「超階段」(ステップカー)やフライトシミュレーターなどを展開したことに連動した仕掛けでした。 これらの展開の狙いについて、株式会社 JALブランドコミュニケーション WEB戦略部 マーケティンググループ グループ長 関口和生さん、日本航空株式会社 Web販売部 1to1マーケティンググループ 濱田卓さん、日本航空株式会社 Web販売部 Web・コールセンター企画グループ アシスタントマネジャー 藤山健治さんにお話を伺いました。
Interview : 石原 愛美(Aimi Ishihara)/Text : 市來 孝人 (Takato Ichiki)
「一緒にお祭りに参加している」ということを表現
—まず、JALさんが「ニコニコ超会議」に出展ということも意外な印象でした。その経緯とは? 関口:JALをよくご利用頂くお客さまは年齢層が少し上の方が多く、調査をすると若者に対するアピールが弱いという結果も出ていました。そんな中ニコニコ動画さんとは広告出稿でおつきあいがあったので「出展いかがですか?」というお話を頂いて、昨年の「ニコニコ超会議」をまずは観に行ったんです。これまで弊社が参加しているイベントとも客層が異なるし、感度の高い方が集まっているように感じたのでこれは絶好のアピールの場になるだろうと思いました。 —出展内容については、どのように考えられたのですか。 関口:「広告っぽいものにすると逆の方向に反応しちゃうので、お客さまに本気で向き合っていますという姿勢を伝えたほうがいいですよ」とドワンゴさんからアドバイスを頂きました。「JALも一緒にこのお祭りに参加しています」ということが分かりやすいものって何だろう?と考えた時に、私たちにできる「本気」は「本物」(実際に利用しているもの)を持って行くということでした。 同時に出展場所を決めなくてはいけない状況になり、「本物」「(出展)場所を活かせる」「お客さまに喜んでいただく」を必死に考え行き着いたアイデアが「ステップカーを持って行こう!」でした。これならば、お客さまの導線確保に役立つし、「本物(ステップカー)」も持って行ける。まさに起死回生のアイデアでした。 濱田:ステップカーを置くことで会場の導線としても活用出来ますし。ただ、そもそもステップカーを持っていけるのかとか、イベントホール内の天井にかからないかとか、色々調整は必要でした。 関口:いわばこれを使って「降りるだけ」なんですけれど、予想以上に反応があって。宣伝っぽくないし、「ここに階段がある」というユーザーさんの会場内での利便性もアップした点で、面白がってくれたのではないかと思っています。 他にも実際のパイロットに教えてもらえるフライトシミュレーターや、客室乗務員や整備士の制服を着て撮影が出来るブース、国際線ファーストクラスが体験出来るブースも設けました。 —そして今回話題になった「39」を踊る動画ですが、こちらを企画された理由は? 関口:ドワンゴさんが超会議のお話をされる時におっしゃることが「(出展社)の本気度を見せて下さい」ということだったんです。「当日までの流れも見せていったらお客さんも注目してくれますよ」、というお話も頂いていて、実は「客室乗務員の皆さんに踊ってもらえませんか?」というアイデアも出ていたのですが、いろいろな制約もあって。 ただ客室乗務員が踊るといえばJALにはCAのチアリーディングチームの「JAL JETS」というチームがあるな!と。当日までの日はもう浅かったのですが、彼女達にお願いする事にしました。 藤山:みんなフライトで色んな街を飛び回っているので、合わせられたのは一回だけでした。
「よく公式でやったね」などと、意外に思って頂けた
—「JAL JETS」の皆さんの反応はいかがでしたか? 濱田:最初はあまりピンときていなかったようで(笑)、「ニコニコ超会議」とは、初音ミクとは…と一つ一つ説明していきました。 藤山:そうして練習を進めてもらう一方、ブランドを管理している部門や、広報など、各所にも話を通ってOKになったのが実は3日前位でした。 —メインの三名はリーダー格のメンバーなのでしょうか。 藤山: 人数はおおよそ18人いるのですが、時間が限られた中で覚えてくれる、かつニコニコ動画のカルチャーに理解がありそうな人にピンポイントで声をかけていきました —「JAL JETS」が生まれた元々のきっかけは何ですか? 濱田:経営破綻の前までJALにはいくつかスポーツ部があったので、それらの競技を応援する目的がJETSの始まりですね。その後経営再建にあたってスポーツ部は廃止になりましたが、チアリーディングは続けていて社内外のイベントで活躍しているんです。 —コスチュームは新たにご用意されたのですか? 藤山:動画については元々のもの、当日のステージで踊った時は新しく用意したものです。 —当日、ステージの様子はいかがでしたか。 濱田:思ったよりも女性の方も見て頂いていました。また、(その模様を放映していた)二コ生を見ていたところコメントも好意的でとても有難かったです。 —動画の方の反響は。 濱田:ニコニコ動画で約34万再生を記録したのですが、コメントを見ていても「よくこんなことを公式でやったね」などと意外に思って頂いて、ニコニコ超会議のチャンネルの公式動画の中でも上位2つめ位の評価を頂きました。ユーザーの反応をリアルタイムで知る事が出来たのも良かったです。 関口:今後も折角繋がったユーザーさんと継続的に繋がっていかなければと思っていますし、今回新たにいろんなメディアさんにも取り上げて頂いたので、引き続き若い方とどうやって密なコミュニケーションをしていくべきか、考えていく必要があるなと感じているところです。 濱田:社内でも2回目はいつ?などと言った反応も出てきましたよ。 —ちなみに出演された「JAL JETS」の方にはどうしたら会えるんでしょうか…? 濱田:本当に現役の客室乗務員なので、飛行機に乗って頂れば「あっ!」と気づくと思います(笑)。

株式会社 JALブランドコミュニケーション WEB戦略部 マーケティンググループ グループ長 関口 和生さん(中) 日本航空株式会社 Web販売部 1to1マーケティンググループ 濱田 卓さん(右) 日本航空株式会社 Web販売部 Web・コールセンター企画グループ アシスタントマネジャー 藤山 健治さん(左)

カンヌ受賞事例・オフィスとビーチ兼用スーツ「TRUE WETSUITS」開発から実現までの舞台裏

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Case: QUIKSILVER「TRUE WETSUITS」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。 今回はQUIKSILVER「TRUE WETSUITS」を取り上げます。この「働くサーファーのためのビジネススーツ」をコンセプトにした、高度な防水機能を備え、オフィスでもビーチでも着用することが出来るスーツは、今年のカンヌライオンズでPR部門で金賞・銀賞、デザイン部門で銀賞と、国内外で大きな話題となりました(PR部門「SECTORS – Luxury Goods, Fashion & Beauty」金賞、「PRACTICES & SPECIALISMS – Launch or re-launch」銀賞、デザイン部門「VISUAL LANGUAGE & GRAPHICS –Promotional item design」銀賞)。 コンセプト立案から商品開発、プロモーションまでをQUIKSILVERのパートナーとして担当したTBWA\HAKUHODO エグゼクティブクリエイティブディレクター 佐藤カズーさん、クリエイティブディレクター 細田高広さん、インタラクティブプラナー 鈴木徹さん、アートディレクター 清水恵介さんにお話を伺いました。
Interview & Text : 市來 孝人 (Takato Ichiki)
この商品開発を通して「仕事とサーフィンの両立」のライフスタイルを話題に
—まずはこのプロジェクトが始まった経緯についてお聞かせ下さい。 細田:今回は、通常の広告を作る形ではない、つまりオリエンを受けてからスタートするという話題の作り方があるのではとスタートしました。お題も最初からフリーの状態で考えて、(そのテーマに合う)クライアントに提案しに行くというスタイルを取ったプロジェクトです。こうして生まれてきたアイデアが、まさに「ビジネスでも使えるウェットスーツ」です。 このアイデアをQUIKSILVERさんに提案したところ非常に喜んで頂きました。QUIKSILVERさんと議論させて頂いたのは、まず、サーフィンが特に日本では頭打ちで、日本人が忙しすぎてサーフィンに行けないような状況だということです。そして、リーディングブランドであるからには、商品の機能性を一つ一つ訴えていくより、サーフィン自体を盛り上げなきゃいけない。そんな意識の確認からひとつひとつプロジェクトを進めて行きました。 —やはり、ターゲット層としては動画に出てくるようなビジネスマンをイメージされていたのでしょうか? 細田:若い頃にサーフィンをしていたけれど、仕事の忙しさのあまり、そのライフスタイルを手放してしまう。そんな多忙なビジネスマンは少なくありません。彼らが今回の企画のメインターゲットでした。彼らに実際にこのスーツを着て、サーフィンとオフィスを行き来してもらうのが一番の目的ですが、それだけではありません。この商品自体を広く話題にすることで「仕事とサーフィンの両立」が必然的に世間の話題になることを念頭に置いていました。「もう一回やってみようかな」とか、「自分もやってみようかな」とか、そういった話題を喚起することができたように思えます。 —みなさんも、やはりサーフィンがお好きだったんですか? 細田:僕はロサンゼルスにいた頃「これはやるしかない」と、サンタモニカサーフスクールという、いかにも現地らしい名前のところに通う事にしたんですが…実際やってみたらなんて過酷なスポーツなんだ!と。ただ僕は本当ににわかサーファーです(笑)。QUIKSILVERさんにつないでくれたのは、ガチサーファーの鈴木です。 鈴木:知り合いに元QUIKSILVERさんの方がいて、その繋がりでプレゼンさせてほしいと、お願いさせて頂きました。 —最初に、QUIKSILVERさんにアイデアを持って行った時の反応はいかがでしたか? 細田:アイデア自体はすぐに「面白いですね」と言って頂きました。ただそこからどうつくるか、という話になった時には「少々お時間をください」と。日本に工場があって、職人さんがいらっしゃるのですが、この商品を作るには通常のラインを一回止めなければいけないんです。それは口で言うほどカンタンな決断ではありません。もう一つ検討しなければいけなかったのは、シャツやネクタイなども含めた一式が本当に出来るのか、ということでした。すぐに解決策は見つかりませんでしたが、その後、議論を重ねて3Mさんと一緒に開発している素材でシャツがつくれる見込みが立ったんです。こうした小さな課題を一つ一つクリアにしていくことで完成に近づいて行きました。 —ということは、実際に動き出すまでは少々時間がかかったのでしょうか。 細田:最終的に前向きなお返事を頂くまで一ヶ月ほどかかりました。その後、実際に作るにあたってはスーツとしても違和感無く着用出来るものにすべく、著名なスタイリストにチームに参加して頂き、シルエットやカット、ネクタイのディテールなど、職人さんも含めたチームで対話を重ねて制作していきました。 清水:普段の広告デザインとは違い、プロダクトデザインって広告の何倍も時間がかかるんですね。だからプロダクト製作のスケジュールは非常にタイトで、サンプルを作ってやり直してっていう時間がなく一発勝負でした。そこでスタイリストさんとパタンナーさん、職人さんと知恵を出し合って、素材違いやデザイン違いのネクタイの柄を一度に何十種類も作って、その中から一番良いものを選ぶという綱渡りな進行がチャレンジでした。 —商品を実際に着用して撮影されたムービーも印象的でした。 佐藤:ストーリーは極めてシンプルに書きました。商品のコンセプトがそもそもディスラプティブなので、奇をてらわずに、ストレートに書くのがベストかなと。大事にしたのは、スーツでサーフィンする瞬間です。音楽ががらっと変わって、キャストが別人格となるような雰囲気を出したく、音の設計と映像がシンクロするように企画しました。 鈴木:どこで撮るか、場所の選定をずっとしていましたね。天気も加味して。 佐藤:波は自然のものなので、撮りたいものが撮れる保証がないのです。なので、短い時間の勝負になることも想定し、とにかく考えうる全てのカメラとアングルで収めたいと考えました。本番は撮影滞在期間の8割が雨(笑)。絵になるような良い波が出たのが帰る4時間前だったという。ロケは本当怖い。 —今回のムービーの主役は、確かにビジネスもサーフィンも両立していそうな雰囲気をお持ちですよね。この人選はやはり意識されたのでしょうか? 細田:サーフィンが上手い方で、かつオフィスにいるような雰囲気の方って実は結構少ないんです。出演しているマーシー(三浦理志)さんは雑誌「OCEANS」でもモデルとして登場していて、まさにターゲットである「仕事もやるけどサーフィンも手放さない」という方が読んでいるような雑誌でのトップモデルさんです。マーシーさんも「これは僕の仕事です!」と言ってくださって。
国内のみの発売にも関わらず、海外からの反響も
—商品を実際に購入されたのは、どういった方が多かったですか? 細田: 20-40代の都心の方が多いというデータは出ていて、まさに僕らが買って欲しい人でしたね。 佐藤:海外からの問い合わせも多いです。 鈴木:海外からは「買わせて欲しい!」とか「セレクトショップで扱いたい!」という問い合わせが多かったですね。他には「会社のCEOに着させて映像を撮りたいんだ」なんて問い合わせもありました。 —ということは、今後海外での展開も有り得るのでしょうか? 鈴木:現状は国内限定のみの販売ですが、今後の可能性を検討中です。 細田:EC経由ではなく、セレクトショップで扱ってもらうということはあるかもしれないですね。 —カンヌのPR部門・デザイン部門で評価された理由は、それぞれどういった点だと思われますか。 細田:(PR部門は)ワークライフバランスを解決する為のアイデア、この商品によって態度変容を作れたという点が大きいのではないかと思います。アプローチとしての手法が、バイラルプロダクトとして面白く見えたんじゃないかと。 清水:(デザイン部門は)サーフィンができるスーツという誰も見たことのない、さらに一度見たら誰かに言いたくなってしまうデザイン、つまり広告をしなくても勝手にバイラルするデザインという点で評価頂いたからだと考えています。 —実際にカンヌに行かれて、現地での反応はいかがでしたか。 鈴木:審査員の方々や、外国人の方々からすごく話しかけられましたね。この商品がみなさんに強く印象に残っているのを実感できて、嬉しかったです。 佐藤:今年もソーシャルグッドが目立ったカンヌでしたが、この企画も視点を変えればソーシャルグッドなんです。サラリーマンのライフバランスを変えようとしているので。そんな中、我々の仕事が仮に突き抜けて見えた理由があるとしたら、そのソリューション(解決法)にあるのではないかと考えます。オーディエンスをGOOD CAUSEで動かすといった所謂“いい話企画”に対し、サラリーマンがスーツのまま海でサーフィンするという異常値で解決させようとするアイデアのユニークさにあったのではないかと。 鈴木:「世の中を良くしよう」というアイデアが多い中でも、#HandsOff(アダルトサイトを一定の条件をクリアすれば無料で見ることが出来る作品)など、単純に面白い事例はやっぱり好きでした(笑)。世の中を良くする事例と、とにかく面白いことを本気でやる事例、大きくは2つあって、僕らの事例は後者だと思いますが、TBWAっぽくて良いなと改めて思いました。 佐藤:「世の中を良くしよう」という傾向は、減ることもなく、むしろと増えたようには感じます。来年は減るのか?という憶測もありますが、僕はもっと増えていくと思います。BRAND CITIZENSHIP(ブランドの市民権)という言葉にある通り、クライアント企業は事業の推進だけでなく、それを超えた様々な価値を社会へ届ける必要性が増してきていると思います。自分達のビジネスに何らかの接点を持つコミュニティや人々に影響を及ぼす課題の解決に積極的に取り組んでいかないと世の中に受け入れられない時代に突入してきているのではじゃないでしょうか。ただそういった課題のソリューションとしてTRUE WETSUITSのようなFUNなアプローチがもっと増えてもいいのではと思ったりしています。

TBWA\HAKUHODO (左から) アートディレクター 清水恵介さん クリエイティブディレクター 細田高広さん エグゼクティブクリエイティブディレクター 佐藤カズーさん インタラクティブプラナー 鈴木徹さん

コピーライター+アーティストがタッグを組み生まれるものとは:「クリープハイプ」の場合

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Case: クリープハイプ
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。 今回は8月に一部映画館で先行上映・9月12日に全国公開される映画「私たちのハァハァ」の題材ともなっているアーティスト「クリープハイプ」の事例を取り上げます。彼らのコミュニケーション面をサポートしているのが株式会社 電通 ビジネス・クリエーション・センター 未来創造室 コピーライター 阿部広太郎さん。広告代理店に勤めるコピーライターとアーティストが手を組むことによる醍醐味や繋がったきっかけなど、その背景について伺いました。
Interview & Text : 市來 孝人 (Takato Ichiki)
自分が働いてきて蓄えてきた力を、同世代の仲間で何か形にしたい
—まず、クリープハイプさんと関わるようになったきっかけは? 大学の同級生に松居大悟という監督がいて、彼と出会った事が始まりでした。2011年に松居監督から「クリープハイプというバンドが良いよ」という話を聞いていて、僕も聞きはじめたんです。2012年にバンドがメジャーデビューした時に、松居監督がMVを担当することを知って、「良いなあ」と思ったことを今も鮮明に覚えています。そして2013年、松居監督がこれまでつくったクリープハイプのMVをひとつなぎにして映画にしたんです。そのニュースを見てすぐに「楽しみにしてます!」とメールをしたら「盛り上げたりできる?」という返信が来て、試写に行きました。 「どれくらい本気で連絡してきたんだろう?」と、松居監督から挑戦状的な意味合いも感じていたので、僕もこれまで培ってきた力をすべて出すぞと「心をなぐる106分。」というポスターをはじめとして、宣伝プランをプレゼンしたんです。 そこから松居監督との信頼関係ができたんですよね。映画の宣伝をきっかけに、クリープハイプのメンバーとも、ちょっとずつ関わりが出来てきたので、そもそも大好きですし、映画だけで終わらせずに、もっと力になりたいなと思い、ユニバーサルミュージックさんに「クリープハイプをこう考えている」というプレゼンをしたんです。それ以降、例えばジャケットのアートワークを一緒に考えたり、宣伝プランを考えたり、あらゆる活動をご一緒させて頂いています。 —電通でコピーライターとして働きながら、アーティストの方の活動に深く関わっていく、こういう方は多いですか?珍しいですか? 異質な存在だと思います。もちろん会社の大先輩の中には、アーティストの活動について、様々な企画や相談を受けている人もいるんですが、30歳前後の同世代でそういう人がいるか、というと珍しい方だと思います。 自分が働いてきて蓄えてきた力を、同世代の仲間で何か形にしたいなという想いが強いんです。クリープハイプは音楽で頑張っていて、松居監督は映画で頑張っていて、ならば僕は広告で、業界の壁を超えて点と点を結んで線にして、さらには面にしていけたら良いなと。コピーライターって「言葉をあつかう商人」だと思っているのですが、商人って昔から、色んな垣根や国境を超えて移動していくじゃないですか。どんどん繋がりながら自分の市場を大きくしている感じですね。 —THINK30というプロジェクトから生まれた歌「二十九、三十」、こちらはどういった経緯で生まれたのでしょう? フリーマガジンの「R25」担当をしている会社の同期がいるのですが、彼から相談を受けたのがはじまりでした。10年前の創刊当時、僕が大学生だった頃って、どこのラックに行ってもR25ってすぐになくなってたんですよね。ただ今は、社会環境やメディアの変化で昔の様にはいかなくなってきた。そこで、もう一度盛り上げようと相談を持ちかけてくれたんです。 その時に、メディア・シェイカーズと電通で30オトコを応援するプロジェクトチーム「THINK30」を立ち上げると同時に、30オトコの背中を押せるテーマソングがあると、さらに広がるのではないかと考えたんです。僕たちの世代って、例えばサッカーの本田選手が頑張っていて自分も頑張らなきゃと思ったり、同世代の活躍に背中を押してもらえたりするじゃないですか。歌も、上の世代にがんばれ!と言われるのではなくて、同世代のアーティストに歌ってもらうのがいいよねと考えました。 —やはりクリープハイプさんにもこの座組・企画をプレゼンされたんですか? TOKYO FMの「SCHOOL OF LOCK!」というラジオ番組の収録終わりを待って本人に直接プレゼンしました。この時はあえて事前にアポを取らずに待ち伏せして、その場でA3の紙芝居形式でプレゼンしたんです。そして「やりましょう!」という話になったんです。 —この曲の反響としてはいかがでしたか。 今という時代を懸命に生きようとしている届くべき人に伝わったなと思っています。同世代の働いている人はもちろん、大学生でアルバイトをしている人が「今からバイトに行く時に元気出る」と反応してくれたり、嬉しい反応がいくつもありました。
コピーライターがアーティストと組むことで「時代とタイアップする」
—今後クリープハイプさんと考えている企画はありますか? 常に時代を考えつつ、社会に向けてコピーを書いているコピーライターがアーティストと組む意義としては、「時代とタイアップする」ことだと考えています。時代をどう捉えて、今なにをすべきなのか。日頃から会話をしたり、曲が出来た時のストーリーテリング・宣伝の部分まで考えたり、いろんな人を巻き込んで何ができるかを探る打合せをしたりしています。 9月12日に公開される松居監督の最新作「私たちのハァハァ」も僕がコピーを担当しました。田舎の女子高生4人組が、クリープハイプのライブのために、福岡から1000キロ離れた東京へ自転車で向かう青春ロードムービーです。「好き」を追い掛けてる人にぜひ観て欲しいなと思ってます。 —阿部さん自らの興味の元、仕事を開拓していったという点がとても印象的ですが、そういった働き方に対する想いについて、改めて聞かせて頂けますか。 今はどの業界のどの仕事においても、いろんな境界が溶けてきていると思っていると思います。広告会社以外の方が企業の広告をつくることも当たり前のようにあったりしますよね。そんな時に、一定の場所にとどまっていること自体がリスクにもなりうると思っているので、自分の意志を大切にしながらどんどん動いていく働き方がもっと広まったり、もっと活発になっていくといいなと思っています。 特に30歳前後は、一番そういうことが出来る世代だと思うんです。若い世代が盛り上げていかないと世代交代なんて起きないですよね。コピーライターって、ただコピーを書くだけの人ではなく、言葉の力を味方につけて、あらゆる課題を解決できると思っています。これからも、出会う人との間にある「半径3mの社会」を大切にしながら、活動していきたいと思います。

株式会社 電通 ビジネス・クリエーション・センター 未来創造室 コピーライター/プロデューサー 阿部 広太郎さん

ローラさんが「Story」を熱唱するDAMのCMに込められた狙いとは

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Case: 第一興商「LIVE DAM STADIUM」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。 今回は第一興商による通信カラオケDAMの最新機種「LIVE DAM STADIUM」の新TVCMを取り上げます。ローラさんが出演し、AIさんの「Story」を熱唱。TVとともにYouTubeでも100万回に迫る勢いと話題になっています。ローラさんが歌うという意外性、懐かしい「Story」を選曲した意図など、株式会社第一興商 宣伝部 宣伝販促課 チーフ 米田卓也さんにお話を伺いました。
Interview : 石原 愛美(Aimi Ishihara)/Text : 市來 孝人 (Takato Ichiki)
「Story」は懐かしい曲でありながら、毎年ランキング上位にくる曲
—まず、このCMの展開の経緯についてお聞かせ下さい。 まずこの「LIVE DAM STADIUM」が今年4月に発売となったので、その認知拡大が目的です。メイン画面ではアーティスト本人、サブ画面ではオーディエンスなど、2つの画面から異なる映像を出せる「デュアルモニター」機能や、3Dライブサウンドという、ライブの音の再現をかなり忠実にできるようになったという特長を(CMの中で)体験する人として、幅広い層に人気のあるローラさんにオファーさせて頂きました。 CMの構成はスタジアムライブを行うアーティストになりきってもらうことで、カラオケユーザーの誰もが最高の臨場感・ライブ感を味わえることを表現しました。 —CM自体のターゲット層は。 まずは、BtoBの面が大きいです。我々のクライアントであるカラオケボックスを運営する企業に対して、新商品のブランディングという面が大きいので。その先に広がるカラオケユーザーにも届けば嬉しく思います。 —AIさんの「Story」、原曲は2005年と懐かしい曲ですが、あえて選曲された理由は? 元々ローラさんもこの曲が好きだったという事もありますし、弊社の近々のランキングを見ていても、懐かしい曲でありながら実は毎年上位にくる曲なのです。映画「ベイマックス」で英語版が流行ったこともあり、若い人にもこの曲が、AIさんが歌っているということは認知されている印象です。 —撮影現場の様子はいかがでしたか? 演者としてパーフェクトでした。我々もOKテイクだと思いながらカメラチェックしていても、ローラさんは「もう一回やらせてほしい」と。例えば指先の見え方ひとつとっても気を遣って頂きました。 ライブアーティストを表現するため、細やかな表情や指先の動きにまでこだわりを見せるその姿に、彼女の仕事にかける情熱を感じました。 —CMの演出面でのこだわりは。 「最高のライブを、すべての人に。」というコピーのもと、商品特性を踏まえて、ただ歌っているだけにはならないということはスタッフ一同思っていました。スケール感を出す為にセットにグランドピアノを置いたり、例えば周りを囲んでいるバレリーナさんだけで30-40人以上起用したりと、迫力・熱量を表現するために細部にまでこだわりました。
BtoB、BtoC、両面での反応があった
—YouTubeでの再生数も100万再生に迫る勢いですが、SNSでの反応はいかがですか。 SNSでも「歌がうまい」「全部聴きたい」などといった様々な反応がありました。特に印象に残ったのが、実際にお客様からお電話を頂いて「ローラさんのあの歌を、カラオケで配信してくれないんですか」という声があったことです。CMでは15秒ですが「一曲まるごと聴きたい」「DVDは発売されないんですか」などと、本当にありがたいお言葉ばかり頂きましたね。 —こちらのCM効果はありますか。 商品自体は4月から発売を開始して、実はローラさんの販促ツールなども用意していたのですが、それらの販促ツールがこの「LIVE DAM STADIUM」とは直接的には結びついていませんでした。ただ、CMを開始してからはBtoB面ではやはりローラさんイコール「LIVE DAM STADIUM」としてこの機種を認知して頂いたり、BtoCでも店頭での機種指名が増えたり、両面で効果が出ています。 —今後の展開は。 第二弾をするか、30秒verをするか等はまだ時期も含めて検討中です。直近では、カラオケの曲と曲の合間でも流しています、カラオケで一曲目を選ぶまで時間がかかったりするので、案外CMを見て頂ける事が多いです。ここで流す事で「あ、この機種なんだ、じゃあ歌ってみよう」というきっかけにもなっています。 画像提供:第一興商

株式会社第一興商 宣伝部 宣伝販促課 チーフ 米田 卓也さん


子どもが両親を撮影“史上最年少監督”に。メットライフ生命「~わたしのパパとママ~」制作の舞台裏

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Case: メットライフ生命「~わたしのパパとママ~」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。今回はメットライフ生命による家族のきずなをテーマにした動画「~わたしのパパとママ~」を取り上げます。 収入保障保険「MYDEAREST(マイディアレスト)」の発売に合わせ、家族のきずなの大切さを“子どもの目線”を通して伝えようというこの動画は、主役が両親、子どもが"監督"となり映像を撮影し、両親にはサプライズの試写会という形で披露されるという模様が描かれています。 この制作の舞台裏について、メットライフ生命保険株式会社 ブランドマーケティング部 ブランドアクティベーション課 後藤俊介さん、同 ソーシャルメディアマーケティング課 大槻真理子さん、Isobar Japan クリエイティブ ディレクター 恵本浩透さん、337inc. 企画と演出 泉貴文さん、アルバカーキ フィルム Inc. プロデューサー 坂本幸一さんに伺いました。
Interview & Text : 市來 孝人 (Takato Ichiki)
どういう動画を作ったら「家族のきずな」が深まるだろうか
—この企画がスタートしたきっかけは。 大槻:弊社の香港チームが制作した「パパは嘘つき」という動画が日本でも話題になり、それを踏まえ「日本人の感性に合った動画を日本で作ろう」という話があがりました。 後藤:SNSの影響力が強くなり、地上波CMの費用対効果に変化が出てきている中で、香港でバズの事例が起こり、ちょうど同じタイミングで「収入保障保険」という商品が、「家族のきずなを深める保険MYDEAREST」というコンセプトに改訂されました。ならば、このタイミングで動画を作ることで商品も後押し出来るのではと。 —この動画のお話があった最初から、この完成形のイメージがおありだったのでしょうか。 恵本:いえ、「家族のきずな」を表現するものというイメージはありましたが、どういう動画を作ったらそのきずなが深まるだろうか…と最初はまだ考えていましたね。ただ、実際に家族を持つ方に生の声を聞こう、その声から出てくるものにヒントがあるだろう、という前提はありました。その声を聞く中で見えてきたのが、家族の中心に子どもがあること、ただ夫婦がお互いをちゃんと見ているかというと少し希薄な感があったことでした。一方で、子どもから見ると、お父さんとお母さんが仲良くしているかどうかが「家族のきずな」という点において重要なポイントとしてあるのかなという点も見えてきました。 —子どもが撮影するという企画はやはり新鮮な印象でしたか? 大槻:今回この企画を聞いた時に、死を連想する悲しみの涙ではなく、感動の涙になるというのがとても新鮮で、これは「いける」かもしれないと思いましたね。 後藤:完成形として新しく、とても面白いというイメージが出来たので。ただ、どうやって撮るんだろうとは思いながらでしたが(笑)。
「一緒にお父さんやお母さんをびっくりさせようよ」とチームに巻き込むイメージで
—iPod Touchを使用されたとのことでしたが。 泉: GoPro、小さなデジカメ、等々いろいろ検討しました。 坂本:その中でiPod Touchだとシンプルに録画が出来ますし。一旦テストとして撮ってきてもらった時に6歳以下の子どもたちだとなかなか上手く撮れなくて、10歳くらいの子になると結構面白いものを撮ってきてくれて、これは可能性があるなと。 恵本:今回はあくまで「普段の何気ない日常生活」の中で、家族の絆を見つけていくことが大事だと考えながら、どうすればちゃんと撮影してきてくれるんだろうという点は毎日議論しました。 —お子さんはどのように選ばれたのでしょうか? 坂本:子役として事務所に所属しているお子さんという点を前提にしました。 泉:子ども達にオーディションとしてインタビューする際に、保育士さんも交えて、子ども目線での声を引き出しながら人選を進めていきました。キャラクターとしてユニークな子でもビデオを撮ってくるのはあまり得意ではなかったり、受け答えがシンプルな子でも撮ってきてもらうと面白かったりとか、いい意味で裏切られながら、予想を超えることが多かったですね。 坂本:まずiPod Touchを渡して、撮りたいものを撮ってきてもらい、一週間後に我々も一緒に見て、そこから「次はじゃあインタビューしてみようか」などと子ども達に寄り添いながら進めていきました。 泉:宿題を一緒にやってみようという感じ、僕らのチームに引き込んで「一緒にお父さんやお母さんをびっくりさせようよ」という感じで接しました。制作スタッフの一員として撮影してきてもらうというイメージです。「こういうことを撮ってきてほしい」とお願いするときも、何と言ったらやる気を出してくれるかと保育士さんと一緒に考えたり、気をつけましたね。 恵本:子ども達がこの企画を自ら楽しんでもらえるようにとひたすら考えていました。 —その動画を、ご両親へ試写会という形で見せるという形は最初からアイデアとしてあったのでしょうか。 泉:最初の企画の時点で、撮ってもらったものを映画と名付けて、子ども達が映画監督である、という座組はイメージしていました。試写会についてはどういう会場がふさわしいか色々検討しました、カフェっぽいところとか、僕らがCM制作で使っているようなスタジオとか…ただやはり映画の試写室というのが最も盛り上がるだろうと、角川大映スタジオの試写室を使わせて頂きました。 —試写会まで、この企画のために撮っていたとバレないようにするのも大変だったのでは? 泉:撮ってきてもらう子によって「お母さんには言ってもいいけど、お父さんには内緒で」などと方法論はいくつか、ちょっとずつ変えていました。 —完成した動画をご覧になられていかがでしたか? 大槻:後藤は制作の段階から動画をチェックしていましたが、私はSNS担当として完成したものを「シェアしたくなるか」ユーザー目線で見極める、という役割でした。当初13分の動画のみを出して頂いたのですが、一般の方が全く知らない状態でこれを見てもバイラルしづらいのではという面と、営業がお客さまのところにいって会話のタッチポイントにするには長いとの思いから、2分半の動画も編集してもらうようお願いをしました。 申し訳ないなと思いつつあえて13分の動画は見ずに、2分半の動画を一般消費者のまっさらな感覚で見た時のインスピレーションにかけようと。私は次の日の朝、その2分半の動画を見て思わず泣いてしまい、あ、これは大丈夫だな、いい作品だなと思いました。
実名で投稿されるFacebookページで、あえて感想を書いて下さったことが嬉しかった
—公開になったあと、どのように拡散されていったのでしょうか。 大槻:社内外で盛り上げていく必要があると考えました、実は弊社はセキュリティ上社内でYouTubeが見れないんですね。その壁を突破しないと社内の反応も聞こえないですし、営業の現場でも使えないですから、何とか他部門にも協力を仰ぎ、QRコードの連携でスマートフォンからの閲覧を簡易化する等の方法で閲覧して貰いました。社外の反応は主にTwitterでしたが、若いユーザー、いわば未来のパパ・ママが「結婚したくなった」とか、「自分が親になったらこういう親になりたい」という声もありました。 後藤:「広告はいつも飛ばすけどこれは見ちゃう」という反応もありました。 恵本:嬉しい反応でしたよね。 後藤:また、動画に商品の細かい内容がほぼ入っていないので、メットライフを体現しているような動画、企業ブランディングになっているのも良かったかなと思います。こんな動画を作るメットライフっていい会社だよね、という風に思ってもらうことが大事なので。 —メットライフさんの他国の法人でも、こちらの事例が共有されることもあるのですか? 後藤:ニューヨークでの会議で流したところ、評判がいいと聞いています。また香港にアジアのリージョナル本社があるので、そこでも取り上げてもらっているようです。 —今回の動画制作を振り返ってみていかがですか。 恵本:保険というものに対して、本質的な価値観を作りたかったんですね。それを追求することで、動画を見た人がなんらかの形で心の奥底にささって、その部分が保険の新しい価値観になるのではないかなと。例えばSNS上でのコメントでも「旦那に感謝して、大切にしなきゃって思った」というものがあって、別に特別なことでもないけれども実は言えない、そんなことを言いたいと思えたのは新しい価値観が芽生えたことだと思っています。 後藤:この動画をきっかけに契約に至ったという反応も頂いていますね。 恵本:Facebookページにも「離婚を考えていたけれど踏みとどまった」というコメントがありました。この動画にはいわば家族の喜怒哀楽が全部出ているので。見る人それぞれのタイミングや環境次第で、どこかに必ずピンとくるものがあるのかなと思っています。このコメントが投稿された時に大槻さんが「Facebookページを立ち上げて以来、このコメントにすべてが救われました」とおっしゃっていたのが印象に残っています。 大槻:Facebookって匿名性が低いので、コメントを書きたくても書かない人も多いじゃないですか、そんな中であえて書いて下さったというのが、とても嬉しかったですね。 恵本:後藤さんにも「今回のお子さんが大人になったときに、結婚式のムービーとしてこれを流すとか、そういうこともあるかもしれないですね」とおっしゃって頂いて、それが実現すると制作冥利に尽きますよね。クライアントも制作スタッフも全て(撮影対象の家族に)寄り添って、本質的な価値を追求することにこだわった結果、今回のような作品が出来たことをうれしく思います。

メットライフ生命保険株式会社 ブランドマーケティング部 ブランドアクティベーション課 後藤俊介さん(下段右) メットライフ生命保険株式会社 ブランドマーケティング部 ソーシャルメディアマーケティング課 大槻真理子さん(下段左) Isobar Japan クリエイティブ ディレクター 恵本浩透さん(上段左) 337inc. 企画と演出 泉貴文さん(上段中) アルバカーキ フィルム Inc. プロデューサー 坂本幸一さん(上段右)

期間限定「ピノフォンデュカフェ」に見る、リッチなブランド体験のための場所づくりとは

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Case: ピノ「ピノフォンデュカフェ」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。今回は「ピノフォンデュカフェ」を取り上げます。 この「ピノフォンデュカフェ」は「ピノアイス」に特製チョコレートソースやマシュマロクリームなどを自分で自由につけて楽しむことができる「ピノフォンデュ」専門店としてこの夏(2015年7月3日~8月30日)、東急プラザ 表参道原宿に期間限定で展開されました。この店舗のコンセプトや成果について、株式会社 タンバリン 代表取締役共同CEO クリエイティブディレクター 藤井一成さん、株式会社アーキセプトシティ 代表取締役 クリエイティブディレクター 室井淳司さんに伺いました。
Interview : 石原 愛美(Aimi Ishihara)/Text : 市來 孝人 (Takato Ichiki)
「買いたい」と思ってもらえる場にすることが「自分が選んだブランド」という信頼感につながる
―商品自体も歴史がある中で、今年あえてリアル店舗という形の施策を始めたきっかけはどのようなものですか? 藤井:昨年オリエンを受けた際、空気のような当たり前の存在になってしまったピノを能動的に買いたくなるような企画を自由に提案してほしいというお話を頂きました。ピノは100億円以上の売り上げがある、数少ないアイスのブランドのひとつで、来年40周年を迎えるロングセラー商品です。ただデータを見ると(ロングセラーである分)ヘビーユーザーがシニア化し、20代以下の若者の認知と喫食が低下しつつある傾向にあったので、ブランドの未来をつくるためには若年層のエントリーをしっかりとっていかないといけないと思いました。若年層を取り巻く情報は多く、また嗜好も多様化しているので、好みが見えなくなっていますよね。そんな彼ら・彼女らに、アイス売場で並んでいるピノが「輝いて見える」ようにすることが大事だと思いました。 そういった今のピノの状況では、CMで情報を一方的に訴求するより、若者の日常で話題になるように入り込むことが必要だと思いました。ピノの一粒で小さくてかわいい形状は、アイスの中でも個性的ですよね。その個性ゆえ、もともと友達や家族と分けて食べたりした「楽しい記憶」があるブランドなんです。改めて、みんなで楽しく食べて強い記憶に残る今の時代に合った新しいピノ体験が出来る場所を作らないといけないと思いました。そこでパートナーとして、空間における体験づくりのプロフェッショナルである彼に声をかけました。 ―その空間のこだわりについてお聞かせ下さい。 室井:これまで、博報堂にいた頃からブランド戦略に沿った空間のデザイン・体験に携わっていました。そんな中で情報発信の環境としてはブログが10年程前から出始めて、さらにTwitterも出てきて、消費者がイージーに情報を出せるようになってきました。そんな中では、いかに自発的にポジティブな情報を個人から発信してもらえるブランド体験の機会を作っていけるかが大事だと考えています。 今若い子達の中ではアイスといっても選択肢の幅があります。昔はピノの六粒がプレミアムなものだったのが、今は様々なブランドが出てきて「せっかくだからアイスを食べよう」となると、よりプレミアムなものを買うんですよね。たとえ少し高くても、その値段で買った体験がいかに楽しいかというのがブランドへの信頼度になるので、そういった体験を作る為に「ピノをどうやったら楽しく食べてもらえるか」というメニュー開発は力を入れました。 藤井:今の若い子達がピノを「楽しい」と思う体験やメニューは何だろう、とかなり考えましたね。例えばフルーツを混ぜたりとか、パフェにしたり、マカロンみたいに色鮮やかに並べたりとか。 ―その中でフォンデュに決まったのは、どういった理由ですか? 室井:こちらでメニューを作ってお出しするのではなくて、体験として、お客さんが最後ひと手間かけて作るのが大事なのではないかと考えました。 藤井:お店では商品のチョコより少しリッチなチョコを使っているのですが、アイスが冷たいので、チョコを浸けるとまるで科学の実験のように数秒で固まります。そのあとマシュマロクリームをつけます。さらに6つの中から選んだ2つのトッピングを乗せて、色を楽しんだり、歯ごたえを楽しんだり出来ます。 そして最後に商品をのせるトレイですが、これこそが今回のクリエイティブの最終アウトプット。通常の広告におけるCMやグラフィックと同じものなんですよね。お客様の手元にあるアウトプットがチープだと、体験そのものが結局残念なものになってしまう。このトレイについては室井くんからいろいろなタイプの提案をもらい時間をかけて決めました。ここはちゃんとコストをかけようと予算の配分をし、このトレイで提供されることで、ブランドの体験がリッチなものになるようにと考えました。 室井:太さ、重さ、持ち感…チープにならずに、かつピノ感も出しつつ。店舗のトンマナにも合わせて。 藤井:また、350円という値段も実はすごく吟味しました。元々のピノの価格も鑑みつつ、このカフェでの体験がどれだけお客さんの期待を超えられるかという点でコストパフォーマンスは重要でした。例えば700円だったり800円だったり、値段が高いと「こんなもんか」になりかねないので。 室井:プロモーションで陥りがちなのが、全部ブランドのロゴやカラーで作ってしまうことです。そうしてしまうと企業主語になってしまうのであくまで「ただで配ります」「試食」というように見えてしまうんです。お客さんにとって、お金を払ってでも「買いたい」と思ってもらえる場にすることが「自分が選んだ」という信頼感につながります。 その考えでは、ピノの世界観で(パッケージの)真っ赤に染めるのではなく、ターゲットとなる10代後半から20代前半の女の子に「かわいい」と思ってもらえる、そういった空間を作ることが重要だったんですよね。居心地のよい木目調のインテリアの一方、商品のロゴは最小限にしました。「お客さんがアイスを楽しんでいて、それがたまたまピノだった」というのが文脈として最も美しいので。 ―期間限定の展開とした理由は。 藤井:長期的に、例えば 1年やるということも最初は案としてあったのですが、ある期間に集中することでより「強い体験」を提供したかったのです。ただしそれが短すぎてもメディアの方が取り上げにくくなるので、メディアでの広がりをつくることができるよう十分な期間を考慮しました。 ―こういった施策を、実際にクライアントへ提案したときの反応はいかがでしたか。 藤井:CMも含めたオリエンでしたが、我々は「リアルな体験を核にした情報のつくり方」を提案いたしました。クライアントのご担当者も今までとは違った新しいお客さんとの関係づくりが必要と思われていたようで、決定までは非常に早かったです。ただその後時間をかけて話し合ったのは「ピノらしさ」と「新しさ」の配分ですね。全てにおいてそのバランスの調整が大変でした。やはりこれまではブランドそのものをいかに強く伝えるかという施策が多かったようでしたので、若者の日常に入り込むための「引き算」の程度に関しては慎重に決定していきました。
「写真」については強く意識。どこをとっても写真を撮りたくなるような空間に
―立ち上げる際の告知などはどのようにされたのですか。 藤井:今後情報の核となる体験も、純広も全く無い中で、立ち上げ時からお客さんが入る絶対的な保証は無しでした。ですから、6月18日に解禁したリリースでお店での体験への期待感をつくる必要がありました。AD岡室健氏(博報堂)のてがけたグラフィックは、トッピングなどのパーツをすべて手で切り取り、そのパーツを重ねて再び撮影をするという手の混んだもので、まさにひと手間かけて可愛く美味しい体験へ期待をさせるものに仕上がりました。このグラフィックを含んだリリース情報が事前にネット上で凄い勢いで広がったことも、開店初日からの行列につながったと思っています。 ―ピノフォンデュの写真の投稿を促すキャンペーンも実施されていますが、こちらの狙いについては。 藤井:今回は「写真」について強く意識をしました。このお店の、どこをとっても写真を撮りたくなるようなフォトジェニックな空間にしようと、例えば看板の位置を顔と同じ高さにして来店の記念写真を撮りたくなるようにしたりとか。 SNSでの情報拡散の元ネタは「(無理に)押し出さないといけない」と思うものは結局なかなか広がらない。でも、いいものは自然に広がるものじゃないですか。原宿の一店舗での体験の楽しさが全国に広がるためには、自発的に、話したくなったり、推奨したくなるような、強くて、伝えやすい体験を作る必要がありました。 ―来店客の方の反応はどのようなものが多かったですか。 藤井:オープンから連日行列が絶えないほどの盛況で、地方からも多くのお客様に来店を頂きました。想像を大きく超える反応ですね。20代以下のお客さまを中心に、友達とご来店頂きピノの共体験をして、楽しんでくださりました。そして、ほぼすべてのお客さまが(写真を撮る為に)携帯を片手に、行列に並んでいるところから撮影が始まり、ピノを作って、食べるまでずっと撮影をしてくれていました(笑)。ターゲット層の夏休みの出来ゴトである花火やショッピング、お泊り、オープンキャンパスなどの日常の中にピノを入れて頂きたかったので、夏のひとコマにピノフォンデュカフェで楽しんでいる姿がInstagramやTwitterに溢れて、とてもうれしかったですね。 ―さらには、原宿という立地なので、外国人観光客の方も多かったのではないですか? 藤井:実はその点は、最初は考えていなかったのですが多かったですね。特に欧米の方が多いです。 室井:欧米のアイスはリッチ文脈で描かれていることが多いですが、こういうグラフィックも日本のアニメなどのポップカルチャーを想起させて新鮮なのかもしれないですね。 ―今回の施策のポイントについて、お二人それぞれの観点から改めて振り返って頂けますか。 室井:商品特性やタイミングによって「体験」が必要な企業と、必要ではない企業があると思っていて、ピノは食べる体験が出来ますし、前者が必要なタイミングでもありました。また、その体験自体にどう非日常感やちょっとした新しさをどう作っていくかが大事だなと思っています。 藤井:こういったリアル体験をつくる施策の場合、企画するだけではなく最終アウトプットまでディレクションを出来る体制をつくることが大事です。例えば今回で言うと、飲食提供の部分をアウトソースしてしまうとメニューにも関われなかったり、厨房の状況を把握出来なかったりするんです。今回は店舗のオペレーションまでを含めひとつのチームを構築したことで、クリエイティブすべての状況を常に把握してワンストップでディレクション出来ました。僕も厨房に入ってスタッフと話をしたり、企画の意図を理解してもらうために説明をしたり、スタッフみんなでご飯に行ったりして現場の状況をヒアリングしたりしています。彼ら店舗スタッフはCMでいうと出演のタレントさんと同じでとても大切な存在なんですよ。企画段階から毎日お店で提供されるアウトプットまでを一つ一つを見ていくことが成功の秘訣かなと思います。

株式会社 タンバリン 代表取締役共同CEO クリエイティブディレクター 藤井一成さん(右) 株式会社アーキセプトシティ 代表取締役 クリエイティブディレクター 室井淳司さん(左)

スペースシャワーTV “ロックの爆音でスカートをめくる”コンテンツは、どのように提案・実現されたのか

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Case: スペースシャワーTV「Rock 'n' Roll Panty」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。 今回はスペースシャワーTV「Rock 'n' Roll Panty」を取り上げます。これは“ロックンロールの爆音で、パンティを奏でよう”をテーマに制作された、ステーションIDとスマホゲームで、巨大スピーカーから出力される際に強い共振と風を巻き起こす事でスカートをめくるシステムが開発されました。 この驚きのコンテンツは果たしてどのように提案され、どのように実現までこじつけたのか。その舞台裏を、株式会社スペースシャワーネットワーク コンテンツプロデュース本部 マーケティング部 プロモーション課 クリエイティブディレクター 齋藤新さん、dot by dot inc. Planner / CEO 富永勇亮さん、dot by dot inc. Creative Director / CCO 谷口恭介さんに伺いました。(また今回は特別に、企画書の一部もご提供頂きました!)
Interview & Text : 市來 孝人 (Takato Ichiki)
「ロック」と「中学生の妄想」は相性がいいという発想
—まずは、今回のアイデアが生まれた経緯を教えて頂けますか? 齋藤:最初はざっくりと、音楽をテーマにした映像で、「スペシャ」(スペースシャワーTV)を好きになってもらいたいというオーダーをさせて頂きました。 谷口:ステーションIDは普段映像系の監督が手がけられることが多い中で、我々にお話を頂いたということは、WEB上での話題化も出来るようにということだろうなと。色々アイデアを考えたのですが、最後にパンティ案が浮上しました。 富永:最初はもっと真面目なものもあって(笑)。ステーションIDという言葉から「駅」を思い浮かべて、山手線をぐるぐる回りながらGPSによって音楽が変わっていくようなものを作るとか。 谷口:学園祭のステージで楽器を演奏することって、音楽に関する男子の妄想としてあるじゃないですか。その様子を主観視点で撮ってキャーキャー言われているような映像とか。 富永:映像作品を一つ決めて提案というよりは、「こういう考えのもと、こんなアイデアがあります」と複数お持ちして、そこから掘っていくという形で結構広くご提案しました。 谷口:10案くらいお持ちした中で、何個か「いいね」という反応を頂きつつも「もう一歩考えてみましょうか」というところで出したのが、最終的にはパンティ案だったという。先ほどお話した学園祭の妄想ライブもそうですが、音楽、ロックと中学生の妄想って相性がいいなと思っていて、その発想からパンティ案が生まれました。(提案した時は)シンプルに「パンティはロックだ」です。 —このご提案を受けた時の第一印象はいかがでしたか? 齋藤:「面白い企画になるな」というのは直感的に感じた一方、テレビなので色んな方が観られる点も気を遣わなければいけないので、「僕はこれで行きたいけど、ちょっと持ち帰らせて下さい」と(笑)。一回社内で検討しました。ステーションIDは自由な表現の場にしたいという思いがあって、その一方見せ方には気を遣おうと。例えば、パンティの柄もひとつひとつチェックさせて頂いたり。このお尻はいいけど、このお尻はダメとか。女性の方も嫌悪感を抱かないようにという点は重要でしたね。 富永:実は、ゲーム用とテレビ用でパンティの形状を変えたり、細かい部分での検討を重ねているんです。
風を生み出すまでの試行錯誤
—風を生み出す巨大スピーカーはどのように作られたのですか? 谷口:齋藤さんから「せっかくdot by dot inc. さんとやるので、もう一歩テクノロジー面で何か出来ないか」というお話を頂いて、「なぜスカートがめくれているのか」という部分の検討に入りました。例えば「バック・トゥ・ザ・フューチャー」でマーティがでっかいスピーカーからの風圧でぶっ飛んでいくシーンとか、4万ワットのウーファーを積んでいる車の中で、髪の毛が舞い上がったりとか、という映像を見たことがあったので、実際にロックの爆音とリアルタイムに連動してスピーカーからの風圧でスカートをめくるという仕組みがつくれたら面白いなぁと。
(上:4万ワットのウーファーを積んでいる車の中で、髪の毛が舞い上がる動画)
富永:最初の段階で見積もりを取ったら、この(車の)動画と同じスピーカーを買うだけでもめちゃくちゃ高くてあきらめかけたのですが、音楽とテクノロジーが結びついてスカートがめくれる、これはなんとか実現出来ないかとインビジブル・デザインズ・ラボの松尾(謙二郎)さんに相談しました。(NTTドコモの)「森の木琴」など、音楽をテクノロジーで生み出すという時には最高の方なので、Facebookで相談のメッセージを送ったら「アホやなぁ」みたいな反応がありながら、その日の夜には真剣に考え始めてくれていて。 —そのメカニズムとは? 富永:松尾さんも色々探って頂いて、バスレフ型というスピーカーの構造のものであれば風圧がかなり出るので、そのスピーカーを使えば可能性があるかもしれない、と。その次の選択肢としては超巨大なものを用意するか、沢山数を用意するか。そこからはもう実験するしかないなと。 谷口:他には、一箇所だけ穴をあけた箱の中にスピーカーを入れて、スピーカーの振動により空気砲の原理で風を起こすという案もありました。 富永:それを既存のスピーカーをベースにしつつ、どう再現するかというところだったんです。 齋藤:野外やライブハウスで使っているような巨大なスピーカーを使っているんですよ。 谷口:スピーカーを製作されているHIRANYA ACCESSさんという会社に相談したところ、巨大なスピーカーを持っているということなので、それを借りて実験させてくださいとお願いしました。 富永:都内の近場でかつ国内でも有数のノウハウを持ち、かつこういった企画にも快くのってくれる会社さん、という点でいうとベストチョイスでした。スピーカーの周りに囲いを着けて、どのように空気を密集させるか。動画で送って頂いて検証したんです。どれくらいの周波数がいいかとか、本当に細かいところまで調べて頂きました。
(上:本実験前の検証動画)
—椎名ひかりさんとKING BROTHERSさん。このキャスティングの意図についてもお聞かせ下さい。 谷口:最も意識したのはロックとパンティの対比です。女の子はなるべくポップで、アーティストは本格派のロックバンドがいいなと。 齋藤:「ぴかりん」こと椎名さんはアイドルとしてシンボリックで、いやらしくなく、またネットとの親和性も高い方だったので。KING BROTHERSさんはロックバンドとして、ステーションのイメージにもふさわしかったですね。 —キャスティングの面でもネットでの拡散を意識されていたんですね。 齋藤:日本最大の音楽専門チャンネルなのですが、やはり音楽ファン、音楽にリテラシーが高い人が視聴者としては中心なので、それ以外の方、特に若い人達に「スペシャ」の名前を覚えてほしいと思っていました。 —スマホブラウザゲームを制作されたのも、やはりネット上での話題化を意識されてですか? 谷口:そうですね、スペシャさんのサイトのアクセスのうち7割ほどがスマホ経由ということだったので。
「どういう風に作っているか」を知ってもらうことで、良さが伝わると考えていた
—動画が公開後、様々な媒体に記事が出て「バズった」印象が強いのですが、そういったバズを起こす部分も、元々強く意識されていたのでしょうか? 富永:映像のインパクトだけではなく、「どういう風に作っているか」が知られて初めて良さが伝わるコンテンツとは思っていましたね。 齋藤:通常は、制作頂いたものは作品が出来たらこちらでPRするという動きが多いんですが、今回はメイキング映像や海外版のリリースを用意するなど、PR戦略から一緒に色々考えて頂きました。 富永:僕らは普段からいわゆる「コンテンツっぽい」広告を作っているので、話題になる道筋をつけるというのは比較的得意な部分でもあります。ただ制作から公開までが凄く短かったので、PR戦略をじっくり練っていけるという状況でもなかったので、まず実験が決まってすぐ(KAI-YOUで実験密着記事を寄稿した)塩谷(舞)さんには来て頂いて。塩谷さんとはアートとテクノロジーとお笑いが好きっていう話をしていたら…ちょうどその時にパンティの企画が浮かんでいたので「実はこんな話があって..」と話してみたら楽しんでくれて。普段も、我々は媒体費に予算を取るというよりは、予算は出来るだけコンテンツ制作に使うという考え方なので。コンテンツを本当に面白がってくれるライターさんに情報をご提供するということが多いんです。 —SNS上を見ていても、こちらの記事が起爆剤になった印象があります。 富永:僕たちでは発想できないようなまとめ方をしてくれました。僕たちだともっと制作色の強い淡々としたまとめ方をしてしまいがちですが、ちゃんとストーリーとして組み立ててくれたので。実は現場は「今日出来なければ間に合わない」とけっこう殺伐としてたんですよ。よくあの状況で冷静に観察してたものだと感心しました。 齋藤:他のニュースサイトさんも、記者さんの「自分の言葉」で記事にしてくれましたね。 富永:パンチラの実現の裏にある部分に興味を持って頂けたかなと思いますね。 谷口:日本らしい「変態クラフト」みたいな文脈にも乗ったかもしれません。世界よ、これが日本の技術力だ!みたいな。 —今後の可能性としては? 齋藤:映像とスマホを使って面白いことを拡散する、という可能性は今回のプロジェクトで見えたので、また何かチャレンジしたいと思いますね。

株式会社スペースシャワーネットワーク コンテンツプロデュース本部 マーケティング部 プロモーション課 クリエイティブディレクター 齋藤新さん(右から2人目) dot by dot inc. Planner / CEO 富永勇亮さん(右から1人目) dot by dot inc. Creative Director / CCO 谷口恭介さん(右から4人目)

“愛の力”で飲酒運転の抑止を…アルコール検出機能付き自転車ロック「ALCOHO-LOCK」開発の狙いとは

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Case: KOOWHO「ALCOHO-LOCK」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。今回はバイクショップKOOWHOが開発・製品化を発表した、世界初のアルコール検出機能付き自転車ロック「ALCOHO-LOCK」(アルコホロック)を取り上げます。 この製品は、ロック本体にアルコール検知センサーとBluetoothを搭載。本体の検知センサーに息を吹きかけ、アルコールが検出された場合は、スマートフォンアプリの画面にアルコールの濃度やアラートが表示されるという仕組みです。また、家族・恋人・友人など登録したパートナーのスマートフォンにも、検出されたアルコール濃度数値と検出場所がアラートとして送信され、パートナーは飲酒自転車運転をしないよう"説得"することが出来ます。現在はALCOHO-LOCK公式サイトにて予約受付中。この製品開発の狙いについて、株式会社 グレイワールドワイド Senior Copywriter 佐藤 秀昭さんに伺いました。
Interview & Text : 市來 孝人 (Takato Ichiki)
大切な人を思い出してもらうことが飲酒運転の抑止につながる
—元々このプロダクトが生まれたきっかけは何ですか? Executive Creative Directorの尾形がKOOWHO代表の永井さんと知り合いだったこともあり、何かKOOWHOさんとコラボして社会的意義のあるプロジェクトをできないか、というところから企画がスタートしました。最初の大きな気づきは、海外を含め自動車の飲酒運転防止キャンペーンはたくさんあるのに、自転車では見たことがないなということでした。そこから「DON’T DRINK & RIDE」というコピーが生まれ、それを元にしたいくつかの企画の中から実現に至ったのが、今回のALCOHO-LOCKでした。 —6月に道路交通法が改正され、自転車の危険行為を厳しく取り締まるようになったという社会的背景もあってということでしょうか? 実はその前、昨年の12月頃にすでにKOOWHOさんにご提案はしていたんです。そこからプロトタイプができたのが今年の3月頃です。KOOWHO代表の永井さんは自転車業界では有名な方で、自転車に関する本の監修もされています。自転車に乗る人に対するマナーの教育や啓蒙等もしっかり考えていこうという方なので、自転車のプロの目から様々なアドバイスを頂きながら完成させていきました。 そんな中、完成に至ったタイミングでちょうど道交法の改正があって、社会的にホットなテーマだったので多くのメディアで取り上げて頂けました。実際、自分の周りにも、飲酒自転車運転が刑事罰の対象になるということを初めて知ったという人もたくさんいました。 —アプリの仕組みについて教えてください。 ロックとアプリ(Android版はリリース済み/iOS版は申請中)はBluetoothで接続されていて、ロックに息を吹き込んでアルコール検査をし、アプリの画面上の「解錠」をタップするとロックが開く仕組みになっています。アルコールが検出された場合に鍵が開かないと放置自転車になってしまうので、アプリの方では鍵が開く代わりに自転車を押して帰るよう注意を促すメッセージを表示するようにしています。 アプリには「友達機能」があって、奥さんだったり恋人だったり大切な人をあらかじめ登録できます。そうして登録した相手方のアプリにも、アルコールが検知されると「◯◯の息からアルコールが検知されました」と検知された数値と場所がアラートとして届きます。相手方には「愛の力で説得しよう!」という表示が出ますが、これをタップすると電話かメールが出来るようになっています。 こういった仕組みなので、ズルをしようと思えばいくらでも出来るんです。例えば、一緒にいる飲んでいない友達の息を吹きかけたりとか。また、検知された後に自転車を押して帰るか乗って帰るかはその人次第です。ただそこは、大切な人を思い出してもらうことが飲酒運転の抑止につながるのではないかと思っています。 —制作にあたって苦労された点はありますか? プロボノプロジェクトとして実施したので、莫大な予算があったわけではありません。ロックとアプリの制作は、自社の海外ネットワークを活かして、グレイ・シンガポールの人からインドの制作会社さんを紹介してもらうことでコストを抑えました。アプリはADの坂本がデザインしたのですが、坂本の指示とは異なるデザインでテスト版アプリが送られてきたり(笑)。日本とインドでクオリティに対する考え方が全く違ったので、その差を埋めていったりといった点も大変でした。 プロモーションムービーの制作を担当してくれたアマナさんも、限られた予算とスケジュールの中で良いものができるよう、いろいろと手を尽くしてくれました。
ヨーロッパから多くの引き合いも
—様々なメディアで取り上げられ話題になった印象がありますが、メディアを通しての話題化はやはり意識されていたのでしょうか。 飲酒自転車運転について考えてもらうきっかけになればいいなと思っていたので、そういう意味では話題化させることはかなり意識していました。多くのメディアで取り上げていただけたのは、社会の注目が集まっているタイミングはもちろん、いわゆる「街の自転車屋さん」がなぜこういった商品を?という意外性もあったかもしれません。 —今後の発売に向けての予定を教えてください。 年末と考えていましたが、まだ正式には決まっていません。実際に販売するには、雨などを防ぐ防水対策や、センサーの精度を高めるなどといった多くのハードルがあります。ある程度の販売数が見込める状況にならないと、販売開始は難しいかなと考えています。一方で、日本以上に自転車文化が発展しているヨーロッパなどからは多くの引き合いが来ていて、ライセンスを供与してくれないかという話や自社のショッピングサイトで販売させて欲しいという話も来ています。 —海外からの反応が良かった理由は? 海外のジャーナリストの方からの問い合わせでわかったのですが、我々が思っていた以上に、海外でも自転車の危険運転は大きな問題になっているようでした。それと、やはり日本は面白い商品をつくるというイメージがあると思うので、「また日本から変な商品が出たぞ!」と興味をもってもらえたみたいです。海外のWIREDやGIZMODE、Engadgetといった著名サイトで紹介されて、ものすごい数のシェアをされたことも大きかったです。

株式会社 グレイワールドワイド Executive Creative Director 尾形 靖さん(中) Senior Copywriter 佐藤 秀昭さん(左) Senior Art Director 坂本 尊徳さん(右)

ハロウィンも楽しめる!「ちゃんりおメーカー」開発の舞台裏と今後の展開

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Case: サンリオ「ちゃんりおメーカー」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。今回はサンリオによる「ちゃんりおメーカー」を取り上げます。 「ちゃんりお」は「サンリオ好きなみんなのためのピューロランドオリジナルキャラクター」。WEBサイト上でアバターのような「ちゃんりお」を作成し、シェアして楽しめるだけではなく、ピューロランドに行って楽しめる仕掛けも用意されています(バーチャルパレードへの参加、買い物や食事に使える「ちゃんりおカード」作成、館内にある「秘密のあいことば」でオリジナルパーツをゲット等)。好評により期間が延長され、「ちゃんりお」を作成する際のパーツには、ハロウィンバージョンのものも追加されました。 この「ちゃんりおメーカー」開発の舞台裏について株式会社 サンリオエンターテイメント 宣伝部 宣伝課 課長代理 真鍋和弘さん、株式会社 博報堂 アクティベーション企画局 プロモーションプラニング三部 部長 大久保重伸さんに伺いました。
Interview : 石原 愛美(Aimi Ishihara)/Text : 市來 孝人 (Takato Ichiki)
「サンリオらしさ」を研究して、一つ一つの顔のパーツを作った
—まずは、このちゃんりおメーカーが生まれた背景についてお聞かせ下さい。 真鍋:まず、サンリオピューロランドが開業して25年になります。ピューロランドは「大人向け」として開業したのですが、ふたを開けてみるとお子様・ファミリー層がとても多く、顧客層のグラフが20代で一番下がるという不思議な形をしていたのです。そこに転機が訪れたのが、2年前に「サンリオタウン」という新しいエリアを作ったことです。それにあわせて広告戦略も、営業戦略も、ここ2年間試行錯誤しながら、これまでの「新しいアトラクションが出来ました」だけではない、あらゆる層に届く訴求の仕方をしてきました。 昨年までもある程度手応えを感じていたのですが、今年改めて、メディアの環境もさらに変わっていく中、これから5-10年先を見据えた戦略を取っていこうと。 —その環境を踏まえ、ちゃんりおメーカーという施策になった理由は何ですか? 大久保:社内にはサンリオが好きな女性スタッフもたくさんいて、いろいろ話をしていくと「ピューロランドって、行くとかわいい・嬉しい気分になれる。けれどなかなか行く機会がない」という反応がありました。また、テーマパークはなかなか一人で行かなかったりするので、誘いたくなる・口コミが生まれる仕掛けを作った方がいいなと考えました。今回のターゲット(20代)の行動上にその仕掛けを置くというのが狙いです。 ピューロランドに実際に行く前に、まずはちゃんりおメーカーを通して自分がサンリオのキャラクターになれることで、サンリオのかわいさを体験してもらえるのではと考えました。さらに、そこでつくったちゃんりおがピューロランドでも実際に楽しめることで二次元のキャラクターと三次元の自分が融合してしまう。そんな異次元・夢の世界を作り出して楽しんでもらえたら、自分自身もかわいい気持ちになれるのではないかと。さらに、ソーシャルのアイコンにもしやすいという拡散性も考慮しています。 —この提案があって、社内でのリアクションはいかがでしたか? 真鍋:今までの施策と全く違うので、今だから言えますが簡単にはいかなかったです(笑)。告知が載っていないのにこれで人が来るのか、といったリアクションもありました。若い世代はアメーバピグなどでこういうアバターには慣れていますが、上層部にはアバターとは何かというところから説明したりもしました。 ちなみに最初のプランでは、サンリオのキャラクターをもっと大胆に組み入れたアバター案もあったんです。 大久保:さすがに、既存のキャラクターのパーツを部分的に使うということは難しいということでした。ただ、いかにも「サンリオらしい」自分のアバターが出来ることで自分ごと化するので、弊社のサンリオ好きなデザイナーにサンリオのそれぞれのキャラクターの「サンリオらしさ」をつぶさに調べて、研究して、一つ一つの顔のパーツを作ってもらいました。全部でパーツは1,900ほどあるのですが、これらをサンリオさんに一つ一つ確認を取っていって、サンリオさんとしても「これだったら問題ない」、ユーザーにとっても「サンリオらしい」、その感覚からずれないように作っていきました。 —ちゃんりおを写真から作るか、自分で最初からパーツを組み合わせて作るか、この2パターンを用意された理由は何ですか? 大久保:写真を使っての占いツールなどがちょっと前にも流行りましたしね。また写真を使うということは手間もいらないので気軽に出来るんですね。さらには写真が変化するということは、魔法のような、ひとつのエンターテイメントにもなります。一方で、自分でこだわって作りたいという方もいらっしゃいますから、この2つの入り口を用意しました。 —「ちゃんりお」というネーミングもとても印象に残りますが… 大久保:「サンリオ」と、他の人を誘って一緒に遊びに行くきっかけにしたいという意図もあったので、「〜ちゃん、行こうよ」と友達を誘う時のような親しさを表現、つまり人を呼ぶときの「ちゃん」を掛け合わせました。
「サンリオさんは面白いことやってますよね」と言われ始めるように
—限定パーツを手に入れたり、パレードに参加出来たり、ピューロランドへ実際に来園したときの楽しみ方も沢山ありますね。 大久保:実はここを一番、気をつけて作り込んでいきました。あくまでも目的は来園者を伸ばすことですから、ちゃんりおメーカーは友達を誘って行きたくなるきっかけ、そのちゃんりおがピューロランドに行くと動き出す、そしてグッズにもなる…それらリアルの場での施策も一気通貫したものになるように、(ちゃんりおメーカー単体ではなく)初期から全て計画してご提案させて頂きました。 —YouTubeにはムービーも複数種類(10種類)アップされていました。 大久保:今回は、マス広告はほとんどなくWEBまわりの施策を色々広げていく方向でした。最近は動画コンテンツも多いので、また見たくなる・シェアしたくなるような色々なパターンを全部で10パターン作り、「ちゃんりおメーカーを使って楽しくなる」という点をいろんな角度から訴求していこうと考えました。 —ユーザーの反応はいかがですか? 真鍋:WEBでの施策はすぐには数字に出ないのですが、7月10日から始めてすぐにどんどん数字も上がってきました。メディアにも取り上げて頂きましたし、夏の来場者の数値にも反映されてきました。デジタル全盛の時代、「デジタルで作った」だけではない、それが体験できるということに楽しいと思って頂けたのは面白いですね。8月に来場者アンケートを取った時に、20代の反応も上がりました。同業者とも話をしているのですが、若い人が来ると活気が出て、結果的に上の世代も下の世代も来るようになるんです。 サンリオは今まで良い子のイメージだったのですが、最近は色んなところから「サンリオさんは面白いことやってますよね」と言われ始めています。ここ1-2年で、広告に限らずキャラクターなども含めて、サンリオも変わりつつあると、若い人も注目してもらえるブランドになりはじめてきています。 —今後のご予定は? 真鍋: 1,700万人以上の方がちゃんりおを作ってくれているという、せっかくここまで育ったものはさらに喜んで頂けるものにしないと…という声も社内で大きいので、引き続き継続しています。カードやクリアファイルなどのグッズ化も需要が高いので、それ(カードやクリアファイル)以外のものも作ろうとは思っています。他社さんからの引き合いも多いので、外部とのコラボレーションも出来ないかと検討しています。

株式会社 サンリオエンターテイメント 宣伝部 宣伝課 課長代理 真鍋 和弘さん(左) 株式会社 博報堂 アクティベーション企画局 プロモーションプラニング三部 部長 大久保 重伸さん(右)

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