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Channel: BEHIND THE BUZZ – AdGang
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オーストラリアの壮大な魅力を訴求する「世界最大画素数の自撮り」を実現させるまで

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Case: オーストラリア政府観光局「GIGA Selfie」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。今回はオーストラリア政府観光局「GIGA Selfie」を取り上げます。 「同じ旅は二度とない。だから写真に残してほしい。スマホを見つめる笑顔だけじゃなくて、目の前に広がる景色のすべても。」そんな想いから生まれた、手元のスマホからシャッターを切ると、高解像度の写真を数百枚繋ぎ合わせた巨大な自撮り写真が届くというこの施策。初回として、9月にオーストラリア・ゴールドコーストで撮影イベントが実施されました。この施策を手がけた、株式会社 TBWA\HAKUHODO インタラクティブプランナー/コピーライター 荒井信洋さんにお話を伺いました。
Interview & Text : 市來 孝人 (Takato Ichiki)
「今までにないバズムービーをつくりたい」から発展した企画
—まずは、今回の施策の背景から教えて頂けますか。 これまでオーストラリア政府観光局では、おもにテレビや雑誌、OOHの広告を通じてオーストラリアの魅力を伝える活動を行っていましたが、従来の活動に加え、もっとアクティブにソーシャルメディアを活用してオーストラリアを盛り上げていけないか、という課題がありました。 そのような中で、「今までにないバズムービーをつくりたい」というお題をいただき、クライアントさんと私たちでチームを組んで取り組むことになりました。 —「バズムービーをつくりたい」から、実際に大規模な自撮りが出来るスポットの提案へと発展したんですね。 オーストラリアという国の魅力を発信するときに、単に観光局から発信するという形ではなく、旅行者を起点にした拡散ができないかと考えました。そこでチームが着目したのが「自撮り」。Facebookを眺めているとわかりますが、旅行中に自撮りをする人がとても多いんです。特別なプロモーションをしなくても、旅行者にはそもそも「旅を楽しむ自分」を拡散したいモチベーションがあるのだと気づきました。 ただ自撮りだけだと顔のアップなので、なかなかどこで撮ったのかは分かりづらい。そこで、自撮りの拡散力は活かしつつも、その土地の魅力までも写す新しい自撮りの方法はないか?と考え、今回の「世界最大画素数の自撮り」という企画にたどりつきました。 —実際に撮影会を行う前にムービーをアップされていますが、こちらのコンセプトは。 これはバズムービーというよりは、プレゼンテーションビデオに近いつくり方を意識しました。ムービーを見て満足して終わりという施策ではなく、「あ、私もやってみたい」と思わせることが一番の目的だったので。このムービーはクライアントの皆さんと一緒につくりあげたものですが、ムービーの寄り・引きのスピードなど、チームで話し合いながら細部にまでこだわって制作しました。 —どのようなメカニズムによって、この自撮りは実現したのでしょうか? GigaPan Stitchという、高解像度の写真を数百枚繋ぎ合わせて巨大な写真を作るという技術を応用しています。100m以上離れている場所にカメラを設置。超・高解像度+超・望遠のレンズを使って、被写体となる旅行者とのその周囲の景色を合計600枚ほど撮影し、自動的に繋ぎ合わせるというプログラムを組んでいます。 —準備されるにあたって、苦労した点などはありますか? 撮影してから写真として手元に届くまでの時間ですね。今回は極力、普段の自撮りに近い体験にしたいと思っていたので、例えばシャッターも自分のスマホから押してもらう形をとっています。自撮りって、撮った後に友達と見せ合うとか、「リアルなシェア」をする行動がある。そういった行動をする時に、写真を繋ぎ合わせる工程に時間がかかってしまっては醒めてしまう。だから、「旅先で写真を撮ってシェアする」という時の楽しい気分をとにかく守ってあげたい、とにかく早く届けたいなと。 最終的にはスマホからシャッターを押してから2分程度で届けることが出来ました。
「写真を撮る」という行為には国を超えた魅力がある
—現地で体験された方は、どういった方が多かったですか? 本当にありがたいことに多くの方に来て頂きました。やっぱり、この「写真を撮る」という行為には国を超えた魅力があると感じました。日本人の方はもちろん他のアジア各国の方もいましたし、ヨーロッパの方もいましたし。長い時には1時間待ちという盛況になりました。 今回は、Facebookページに投稿したムービーが、日本人のオーストラリアファンの方がシェアをして、アジア、欧米とどんどん広がっていったという実感がありました。 —海外のメディアからも反応はありましたか? CNN、The Washington Post、WIRED、GQ、Esquireなど、デジタル系・アド系の媒体に限らず、あらゆる媒体に広がりました。自撮りという文化自体がちょうど海外で旬な時期だったので、その流れに乗れた部分も非常に拡散力につながりました。 —1回目の撮影イベントが終了したとのことですが、次のご予定は? まずはゴールドコーストで実施しましたが、多くの皆さんからとても好評でしたので、他のオーストラリアの都市・名所でも第2弾、第3弾と実施したいです。例えばオペラハウスだったり、エアーズロックだったり、魅力的で壮大な景色は山ほどありますから。世界中にバズったという結果はもちろんですが、そのバズって広がったという時にオーストラリアの一番の魅力である自然の豊かさという面も訴求出来たことが評価を頂いた理由だと思います。

A video posted by Australia (@australia.jp) on

株式会社 TBWA\HAKUHODO インタラクティブプランナー/コピーライター 荒井 信洋さん


8つのサイト+1つの漫画で一挙展開!金麦〈琥珀のくつろぎ〉の“くつろぎ族”キャンペーン実施の狙い

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Case: サントリー「金麦〈琥珀のくつろぎ〉-くつろぎ族」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。今回はサントリー「金麦〈琥珀のくつろぎ〉」発売に合わせ実施されたWEBキャンペーン「くつろぎ族」を取り上げます。 特設サイトから、外部の8つのサイトでの記事広告へ誘導。硬軟織り交ぜたコンテンツで「くつろぎ」を訴求するとともに、漫画「フェイスブックポリス」がSNS上で大人気となった「かっぴー」さんによる、家飲みを題材とした書き下ろし漫画も収録。計9つのコンテンツを同時多発的にWEB上で展開することにより、商品の話題化を実現しました。 このキャンペーン実施の舞台裏をサントリービール株式会社 宣伝部 徳久無限さん・同 ブランド戦略部 三浦良介さん、サントリービジネスエキスパート株式会社 宣伝部 中村勇介さん、面白法人カヤック 企画部・人事部 兼康希望さん・同 企画部・人事部 伊藤大輔(かっぴー)さんに伺いました。
Interview : 市來 孝人 / Text : 坂巻 渚
色んな方向に散らばったコンテンツから一つの世界観を作り上げていく企画
—まず、今回のキャンペーンが立ち上がったきっかけを教えて頂けますか。 三浦:「金麦〈琥珀のくつろぎ〉」は、昨年好評だった商品で、今年も発売することになりました。発売2年目なので、今年もしっかりニュース性を持って商品を出していきたいという点がきっかけです。 徳久: 2年目の商品は1年目と比べ商品の話題性が低く「2年目のジンクス」として売れ行きも悪くなりがちなのですが、そんな2年目でも売れ行きを伸ばすべく、何かしら宣伝を入れようという話になりました。ただ、季節限定の商品なので出荷の時期も限られます。ならばWebで瞬発的に話題化ができたらと。 中村:バナー出稿でリーチをとっていくという案もあったのですが、もうちょっと爆発力を狙っていきたいな、という想いで実施しました。 —当初のキャンペーンの構想はどういうものだったのでしょうか? 兼康: 2つ案をご提案させていただきました。1つは、ビジネスマン向けのパワーポイントのクイズ・検定をするというもの。もう1つは、色んなメディアさんとコラボし、同時期に一斉告知することによって、Web上をお祭り状態にするというものでした。 —2つの案をご覧になられた時の印象はいかがでしたか? 三浦:「どっちも面白い!」と率直に思いました。ただパワーポイントの方は、スマホでは見られないという障壁が大きいかなと。 中村:やっぱり最近は「スマホで楽しめること」は欠かせない気がしています。最後はそこが決め手になりましたね。 徳久:また、もう一つのメディアコラボ案の方が、バズりそうな予感がしましたね。プレゼンを聞いている時から、笑いが起きるくらいの企画だったので(笑)

提案に使用された企画書の一部

—媒体選定が肝だったと思うのですが、選定はどういった基準でされたのですか? 兼康:弊社内で「面白い」と人気だったWebメディアをまず選定しました。コンテンツ勝負の企画だったので、Web上で人気のコンテンツを作れる方たちにお願いしたかったので。 —今回8メディア+1漫画を採用されていますが、候補はいくつくらいあったのですか? 兼康:最初は15〜20くらい候補がありましたね。 —その中で8つに絞っていった基準はどういったものだったのでしょうか? 兼康:Webでシェアされやすいかどうかという点を最重要視して選びました。 中村:やはり、まずは爆発力があるかどうかですね。あとは、色んな人にバランスよく届くようにという点も意識しました。 —ビジネス寄りの企画から、伊藤さんの漫画のように柔らかい企画まで様々ですが、それぞれのメディアとはどのように企画を練っていったのですか? 兼康:各メディアさんには、「くつろぎ族」という大枠と、「赤い金麦」が頭に残るという前提の元、「くつろぎ」をテーマとした企画をお願いしました。ある程度イメージはお伝えしたのですが、基本的にはメディアさんに企画をお任せしました。 —ぶっ飛んだ企画のメディアさんもありますし(笑)、サントリーさんの社内でお話を通すのは大変ではなかったですか? 徳久:そこが1番大変でした(笑)ただ、今回は特定のメディアとのタイアップではなく、「くつろぎ族」という大枠について、色んな方向に散らばったコンテンツから一つの世界観を作り上げていく企画だという話をしましたね。「色んな所で、くつろぎ族というバズを起こしましょう」というのが、今回カヤックさんと一緒に話をしていたので、その作戦が通ったという感じですね。 —商品の持つ世界感を大切にしつつ、チューニングしながら選定されたのが今回の8つのメディアということですね。 三浦:季節限定品だからこそ認知を取りに、面白い所に一歩踏み込んでみたいと思いました。そのうえでチューニングはしつつ、出来る所まで踏み込んでみたのが今回の企画という感じです。 —期間限定品でこのような冒険をされたことは、これまでもありましたか? 中村:バズ施策に対するチャレンジはこれまでもありましたが、今回はかなり思い切ってやったと思います。 —特に「金麦」は上質なイメージがあったので意外な印象でした。 中村:世界観と面白さのギリギリのせめぎ合いの中で、ただやっぱり広がってほしいという思いで、結構そこは議論しましたね。上質さの線を超え過ぎず、でも面白いというバランスを考えながら。カヤックさんに色々と案をいただきつつ、これはOK、これはNGと、何度もやり取りを重ねて着地しました。各メディアさんともお会いして直接お話しながらできたのでよかったですね。メディアごとに特性があるので、その特性を活かそうという話はしていたので、それぞれに味が出て良かったかなと思います。 三浦:カヤックさんの対応も驚くほど早かったです(笑)。 —兼康さんとしては各メディアさんとのやり取りが一番気を遣われた部分ですか? 兼康:そうですね、窓口が8つあるので、各メディアさんとのやりとりも最後の方は混乱しそうで(笑)。 徳久:最後の確認作業は地獄でしたね(笑)。 —そんな中、かっぴーさんこと伊藤さんの漫画が加わったというのは、これもかなりの冒険だったと思うのですが、その時の経緯を教えて頂けますか? 兼康:ちょうど、女性向けのコンテンツがもう一声あればいいなと思っていたんですが、その時ちょうど、伊藤がシルバーウィークにプライベートで公開した漫画「フェイスブックポリス」がヒットしていて。このキャンペーンのリリースもちょうど2週間前のタイミングだったので、「このコンテンツだ!」と思いました。 徳久:「急遽1つ加えました!」と、伊藤さんの漫画案を出されたんです。たまたま私はその漫画を見たことがあったので、「これコンテンツにできるんだ」と思いました。しかもその時、既に漫画を書いて下さっていて。とても早くて驚きました。 —家飲みあるあるがテーマの漫画ですよね。 伊藤:15分くらいブレストして、20から30個くらい「あるある」の候補が出てきました。 兼康:ブレストしたその日の夜には、原稿が出来上がっていました。 伊藤:ただ「フェイスブックポリス」などはラフを描かないんですが、今回はラフもちゃんと描きましたね(笑)。 —今回は女子会が舞台ですが、元ネタはやはり女性のお友達などにヒアリングしたりしたのですか? 伊藤:普通に、自分が家飲みをやった時に思っていたことです。「なんでお前だけお土産持ってくるんだよ、みんなに言っとけよー」とか常に思ってて。そういったあるあるが面白いなって。女子会を舞台にしましたが、男の人でも共感してもらえる内容だと思います。 —サントリーさん内で最初に読まれた時の印象はいかがでしたか? 徳久:まず、僕らが読んだ時点で「面白い!」「これはすごい!」と思いましたね(笑)。(打合せ時に)兼康さんがPCでスクロールしながら冷静に読むんですが、みんなクスクスと笑いを抑えきれない感じでした。 —漫画の中にしっかり商品が入り込んでいましたが、意識して考えられたのですか? 伊藤:これまでずっと広告業界で仕事をしてきたのですが、こういったコンテンツでの紹介の場合、結構商品の登場の仕方が唐突だったり、不自然なケースが多かったりするので、そうではなく、「宅飲みっていいな」「女子会っていいな」っていう話の流れにあった形で商品を入れるように、そこは気を遣いましたね。ちゃんと流れとして面白いし、無理矢理じゃないように。
「2年目のジンクス」を打開
—キャンペーンの反響としてはいかがでしたか? 三浦:売れ行きという点では、昨年並みに売れていて「2年目のジンクス」を打開できたということは大きかったです。 —店頭での動きとの連動はどのように意識されたのでしょうか? 三浦:商品の発売が10月20日だったのですが、発売直前の10月5日にこのサイトをローンチし、そこでバズを生み、商品発売後にお客さんにお店に足を運んでもらうという設計でした。 中村:サイトは店頭で思い出してもらうところを意識しましたね。商品が持つ赤のイメージがしっかりと残るように。 —ユーザーからの反響で印象に残ったものはありますか? 兼康:キャンペーン手法を分析して「こんな手法があったのか」と仕組み自体に注目してブログを書いてくれた人がいたのは印象に残っていますね。 中村:ちょうど9つのコンテンツがあったので「打線を組んでみた」なんていうツイートとか。 徳久:あとは、「もう流行りのかっぴーさんを採用してる!サントリーめちゃめちゃ早いな!」というツイートもありました。 —特に、ネット界からの反響が多い印象です。 中村:入り口はそこなのかなと思っています。そこから波及していって、必ずしもネットヘビーユーザーではない方にもしっかり届いていったっていう所がよかったと。もともと幅広いメディアと組むことで、色んなとこで「くつろぎ族」を見かける状態を作りたかったので、それが体現されたと感じています。 —Webでバズらせる場合いろいろな手法がある中、今回はタイアップ記事だけでバズらせるということが斬新だった印象があるのですが、今回の手法を実施されての手応えはいかがでしたか? 中村:旬なものをいかに早く取り入れるかが重要だと感じました。それは動画も記事も同じですが、今回でいうと、まさに流行り始めていたかっぴーさん(伊藤さん)に漫画を描いてもらえたことや、漫画の内容もSNSならではの「タグ付け」ネタを入れたりだとか。今回ご提案いただいたメディアのラインナップもとにかく旬なところばかりで、今回のタイミングでは、まさにその旬なものがWebの記事という形だったということだと思っています。 兼康:個人的には、このタイミングでかっぴーを使うことが出来たのも大きかったですね(笑) 徳久:ラフ案の作成から修正までもとても早かったですし、Twitterのバナーのビジュアルまで描いて頂いて。 —漫画の執筆含め、全体的にスピード感という意味でも、「Web的」だったというところでしょうか? 中村:そうですね、Webは他メディアでのコミュニケーションとは早さがちょっと違うのかなと感じました。カヤックさんとお仕事することでその早さは鍛えられていますね。 —大手メーカーであり、一大ブランドを持つ御社がWebでこういった攻めた企画をしたことで、新たなファンができたのではないでしょうか? 中村:今回、マスコミュニケーションだけではなかなか振り向いてもらえないお客さんたちに振り向いてもらうきっかけは作れたかなと感じています。ネットヘビーユーザーの方を着火点に、お客様の言の葉に乗って話題が広がっていくという画が描けたことが良かったです。

サントリービール株式会社 宣伝部 徳久無限さん(後列・右から2人目) サントリービール株式会社 ブランド戦略部 三浦良介さん(前列) サントリービジネスエキスパート株式会社 宣伝部 中村勇介さん(後列・右から1人目) 面白法人カヤック 企画部・人事部 兼康希望さん(後列・右から4人目) 面白法人カヤック企画部・人事部 伊藤大輔さん(後列・右から3人目)

♪ゾ ゾ ゾゾゾのゾ―― の歌と豪華キャストで話題に。ZOZOTOWN「ゾゾゾの鬼太郎」実現の舞台裏

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Case: ZOZOTOWN「ゾゾゾの鬼太郎」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。 今回はECファッションサイト ZOZOTOWNによる2年半ぶりの新TVCM「ゾゾゾの鬼太郎」を取り上げます。人気アニメシリーズ「ゲゲゲの鬼太郎」のリメイクと豪華キャストに注目が集まった本CM。誰もが知っている原作のリメイクに挑んだ経緯や、制作のこだわりなど、株式会社HAKUHODO THE DAY エグゼクティブクリエイティブディレクター 佐藤夏生さんにお話を伺いました。
Interview & Text : 香川 妙美
記憶に強く残る響きを、CMの軸に
—今回のCMが生まれた経緯をお聞かせください。 今回のCMは、アプリのリニューアルが訴求ポイントでした。ですが、それをそのまま説明するのではなく、存在として何か強く記憶に残せるものにしたいな、と。それでいうと、ZOZOTOWNは、ユーザーから「ゾゾ」と呼ばれているのですが、その響きがすごく掴みがあるんです。なので、そこをCMの真ん中に出来ないかなと思いました。で、真っ先に思いついたのが、『ゾゾゾの鬼太郎』。ここからが大変で。本物へのオマージュを込めながらも、広告だからこその新しさを打ち出さないと。その部分を表現するのに相当苦心しました。 —特にこだわった部分を教えてください。 まずは、キャスティングですね。課題はZOZOTOWNの間口を広げることなので、誰もが知っている親しみやすい方ということで、女優の大島優子さんに鬼太郎役をお願いしました。そして、ファッションECですから、とびっきりおしゃれなイメージを打ち出したいとも思っていたので脇を固めるねずみ男と猫むすめは、ファッションのイメージの強い方を起用したい。そこで、俳優の浅野忠信さん、モデルの土屋アンナさんをキャスティングしました。 衣装にもすごくこだわりました。打ち合わせだけでも10回はしたと思います。CMではそこまで見えませんが、鬼太郎のちゃんちゃんこはすべてビーズでできていて、猫むすめの衣装にある刺しゅうやタッセルもすべて手縫いなんです。浅野さん(ねずみ男役)の鼻ピアスも数種類用意して、挿す角度を何度も試したり、そういうディティールをとても大切にしました。 衣装は当初、別の案があったんです。そのときは、「かっこいい」って盛り上がったのですが、しばらくするとどこか気取った感じが気になりはじめてしっくりこない。オシャレにしすぎてなんかパリコレみたいだなと。妖怪っぽくないなと。妖怪とは何なのか。何をどう表現すると妖怪に見えるのか。その凄みがでるのか。そこを突き詰めていったら、「清貧さ」にたどり着きました。 —清貧さ、というと。 ゲゲゲの鬼太郎って、お化けでもモンスターでもなく、妖怪なんです。妖怪って日本独自の存在なんですよね。どこかおぞましくて人間とは違う生活習慣のなかで生きている。たとえば、お風呂に入ったり、着替えたりするイメージはないですよね。でも、みすぼらしい感じはしないし、不潔な感じもしない。そのサマを「清貧さ」という言葉にしたら腹に落ちたんです。妖怪っぽさを表現することは、清貧さをまとうことなんだなと。 ―このほかにこだわった部分はありますか? そうですね。どう見せるのかという部分ですかね。佇まいのつくりかた、とでも言いましょうか。この点は、キャストの3人がただ立っているだけで鬼太郎の世界観が成立することが大事だなと思って、動の部分は周りの浮遊霊(バレリーナ)のダンスに委ねました。 ―CMではついキャストに目が行きがちですが、一反木綿がひらりと飛ぶシーンや浮遊している目玉おやじ等、観るほどに奥深さがあります。 その部分は、監督の黒田さんのこだわりが強いですね。ディティールをとても大切にされる方なので、じっくり観ていただくと色々な発見があると思います。
原作のイメージは超えられない。でも、ファンの期待値は超えられる
―原作をリメイクしたTVCMを昨今よく見かけますが、佐藤さんが今回、本CMを手がけるにあたって大切にされたことは何でしょうか。 CMに限らず、映画やドラマもそうだと思うのですが、リメイク作品って原作の持つイメージを超えることはできません。ただ、それを承知のうえでファンの期待値を超えることはできると思っています。そのためには、作者やファンが大切にしているものを理解した上で、原作とは違うインパクトに挑まなければいけません。簡単ではありませんが、中途半端なものをつくってファンをがっかりさせたくないですから。その点、ゾゾゾの鬼太郎は、妖怪らしさをとことん追求し細部までこだわり抜くことで、その期待に向き合えたんじゃないかと思っています。 ―CMの反響はいかがですか。 手ごたえを感じていますし、原作とはひと味違う鬼太郎を打ち出せた点は、すごく良かったと思っています。

HAKUHODO THE DAY エグゼクティブクリエイティブディレクター 佐藤夏生さん

お風呂でシンクロ!「おんせん県おおいた」による「シンフロ」ムービーが実現するまで

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Case: 大分県「シンフロ」
「おんせん県おおいた」大分県による、お風呂でシンクロする前代未聞の"シンフロ"ムービー。プロのシンクロナイズドスイミングチームと大分県に実在するバラエティ豊かな温泉を掛け合わせた動画です。 今回は、当サイト「AdGang」の運営母体であり、プレスリリース配信サービスを提供するPR TIMESがPRを手掛けた「シンフロ」舞台裏を取りあげます。シンクロを行うのはオリンピックメダリスト・藤井来夏氏主宰のプロシンクロナイズドスイミングチーム「RAIKA ENTERTAINMENT」所属メンバー、「OK Go」のPV『I Won’t Let You Down』も担当した振付稼業air:manさんが振り付けを担当、「森の木琴」など国内外の広告賞で多数の受賞歴を誇るInvisible Designs Lab.清川進也さんが音楽を担当、と豪華キャストで実施された当動画。 「お風呂」で「シンクロ」するという前代未聞の企画はどのようにして実現されたのか、そして、この動画をいかにしてPRしていったか。株式会社 CS西広 CDセンター 副部長 クリエイティブディレクター 福嶋毅さん、株式会社 西広 大分支社 クリエイティブディレクター 緒方徹さん、株式会社PR TIMES マーケティング本部マネージャー 千田里美による舞台裏インタビューです。
「ふざけている、けれど美しい」映像を目指した
—まずは今回のプロジェクトがスタートした経緯について、お聞かせ下さい。 福嶋:今年の春、元々はコンペでした。自治体PR動画は近年増えていて、自虐的にPRするというものが多いですよね。ただ、その時期の感覚としては「そういったものは少し食傷気味かな?」とも感じていました。このタイミングで動画を出せば一定量は見られるかなとは思っていたのですが、今までの潮流とは逆の「美しい」方向のものが出来たらいいなと考えていました。ちょうど動画の時流として、海外でウケて日本でも人気になるという動きもあったので、海外の人にウケるにはどうしたらいいかという点も考えながら。 延々ブレストをしている中、ぽろっと「シンフロ」が出てきたんですね。ちょうど大分駅が新しくなったり、美術館が新しく出来たり、新しい「温泉県」としての大分を打ち出していくべきと話していた時に「新」「風呂」=「シンフロ」からシンクロへと繋がったんです。 —最初のご提案時、大分県さんの反応はいかがでしたか? 福嶋:「ふざけている、けれど美しい」映像を目指しますとプレゼンした結果、理解して頂くことが出来ました。

[実際に提案に使用された絵コンテ]

—一箇所ではなく、かなりの数の温泉が登場していますね。 緒方:撮影した温泉は11箇所です。ロケハン自体は40箇所以上行っています。 福嶋:泉質で、世界中にある11のうち10があると大分に聞いていて「それはすごい、数を見せよう」と考えました。その基準が制作中に「10のうちの8」に変わったりはしたんですが、泉質だけではなくお湯の色も様々な種類があるので。実際にロケハンしてみるとここに撮影にあたっての広さ・深さ・熱さなど色々な比較要素が出てきて…というように、ロケハンが一番時間がかかっています。 —実際にシンクロを行うにあたって、キャスティングはどのように進めていったのでしょうか。 福嶋:まず振り付けは、OK GOのPVも話題になっていた振付稼業air:manさんにお願いしたいと当初より思っていました。実際にシンクロを演じて頂いたRAIKA ENTERTAINMENTさんには、普段と違う環境で演じて頂くので、まずは同じくらいの深さの子供用プールのようなところで検証頂きました。 ただ検証しても大変なのは、温泉だとさらに岩があったり、同じ深さでも全く環境が異なることですね。ビニールを下に敷いてはいるものの、ゴツゴツ当たって青あざが出来たりといった環境でした。さらに営業時間などを配慮すると1-2時間しか実際は撮影が出来ないので、そんな中で演じて頂いて「プロだな」と実感しましたね。 —音楽面は、清川進也さんがご担当されていますね。 福嶋:やはり音楽面も肝になるということは県の方にもおっしゃっていて、実は瀧廉太郎さんが大分出身という情報も頂いて「花」を使うことにしました。映像監督を通して清川さんにお話させて頂いたのですが、清川さんのバイタリティにはすごく助けられましたね。大分の本当にいろんな音を録って回って頂いたので。 —この「花」BGMの裏側の動画を、シンクロの動画とは別に公開されましたよね。その狙いというのは? 福嶋:二度目のバズをつくろうとはかねてから考えていて、普通のメイキング動画を出そうかとも考えていたのですが、清川さんがせっかく大分の80箇所の音を録ってきて下さるので「それで動画も一本作れるじゃないか」と映像も撮って急きょ作ることにしたんです。
社会的背景や県の取り組みなどを合わせて、一過性ではないものとしてメディアにはお伝えした
—こうした動画を広めていくにあたって、PR面ではどのように動かれたのでしょうか? 千田:「シンフロ」は作品としての完成度だけでなくキャスティング面の話題性もありますから、動画に対して語れるポイントが多く、単体でもポテンシャルが高い作品だと思いました。その面白さを裏付けるために、まずリサーチに徹しました。自治体発信の動画が頻出する社会的背景や、「おんせん県おおいた」としての取り組みの歴史など、「シンフロ」を取り巻く外的・内的環境がどうであるか。動画に対する印象が「インパクトのある動画だなぁ」で終わらないよう、「おんせん県おおいた」にとって一過性の取り組みではないことも添えて、情報提供をしていこうと考えました。 媒体社への情報提供については、一社ごとにアプローチを変えました。少人数運営のためなかなかお会いすることが難しいケースもありましたが、メディア特性に合わせて1件1件お電話とメールでマメに連絡しましたね。読者が好む領域に合うよう、経済・ビジネス系の媒体社には自治体広報の動向と合わせるなど、とにかく一社ずつ。毎日何百と情報が届く中で編集者は「このネタ、読者は喜ぶかな?」と必ず考えますので、ポテンシャルの高さだけで直球勝負するのではなく、そこがうまくはまるように意識はしました。 —メディアへの出方としては、予想通りでしたか? 千田:正直、想像を超えていました。ただ初日の動きはそんなに大きくなかったんですよ。「どうしたものか」とドキドキしていましたが、公開当日に取り上げてくれたメディアが「火付け役」となって、そこからの伸びは本当に凄かったです。最終的なWebニュースの露出量は300件以上、動画埋め込みまでしてくれた記事が120件以上、Yahooトップの「話題なう」にも入りました。 またネット上のプレゼンスが上がったことでTV放映にも繋がって、全国ネットからローカル局まで計12番組で取り上げて頂きました。動画PRの場合、素直にプレスリリースから情報を拾ってもらうことはなかなか難しいので、「火付け役」のメディアが掲載したことをきっかけに、情報のサイクルがうまく回っていけばいいなと。 それも拾われる可能性をただ願って待つのではなく、ある程度情報が自走していくメカニズムを掴んだ上で、記者が「うちも話題にしたい」と感じてくれたときに、その方の手元にちゃんと必要な情報がある状態を目指しました。 —掲載されたことが意外だったり、印象に残ったメディアはありますか? 千田:印象的だったのは地域の観光情報などを扱っていらっしゃるジモトのココロさんですね。編集長の方が大分県ご出身で、熱のこもったすごく良い記事を書いて下さりました。またビジネスジャーナルさんには話題沸騰中の動画としてピックアップしてもらい、大分県の宿泊客の経年変化や、旅行業界に詳しいジャーナリストのコメントなどと合わせて記事にまとめてくれました。観光PRという意味では訴求力の高い露出になったと思います。 —ユーザーからの反響としてはいかがでしたか。 千田: Yahoo!リアルタイム検索の反響がとても良かったのが印象的でした。SNSの全リアクションに対する「感情の推移」は、通常ポジティブな反響の割合は10%程度に留まることが多いのですが、今回のシンフロ動画は25%を超え、改めて西広さんの作品力の高さを感じましたね。 動画は再生数で評価されることも多いですが、大事なのはその動画に対する「評価」のほうで、おんせん県の魅力を伝える手段が動画であっても動画以外のものであっても、「好き」になってもらえないと意味がありません。広告的な視点だとリーチを取ることが優先されがちですが、PR的には地元を誇りに思えたり、ちょっと温泉旅行に出かけたくなる方が増えたりすることを目指したいので、そういった意味で、シンフロの魅力が埋もれずに伝わった!というのは本当に良かったです。 緒方:チームのみんなでリアルタイム検索はずっと見ていました(笑)。印象的だったのが、大分の人達からも「こういうものを地元が打ち出してくれてうれしい」と反響を頂いたことですね。今は住んでいる人もSNSを通して発信者になれるので、そういった地元の支持も巻き込めたことは良かったです。 福嶋:「オチが大事ではないんだ」「オチでインパクトをつけるのではなく、いい映像コンテンツであれば何度も見たくなるはずだ」という話はよくしていました。 緒方:「オチ」ネタではなく、見る人の心にすっと入っていくコンテンツにしたことが、良かったのだろうなと思います。 —自治体による動画コンテンツはとても盛り上がっていますが、「自治体PR」今後についてはどのようにお考えですか。 福嶋:今回よかったことは「守りに入らなかった」こと、そして「徹底的に真面目に作り込んだこと」です。前者はどうしても様々な事例や過去の例がある中で入りがちな面、これがなかったこと、後者は、シンクロや温泉を笑うのではなく、とにかく真面目にその魅力が伝わるように作り込んだことですね。ただ、他の県で全く同じことができるといえば、そういうわけではないんですよね。当然、全く同じやりかたをどこでも出来るわけじゃない。その都市の何を活かしていくかを考えることが大事です。

株式会社 CS西広 CDセンター 副部長 クリエイティブディレクター 福嶋 毅さん(左) 株式会社 西広 大分支社 クリエイティブディレクター 緒方 徹さん(右) 株式会社PR TIMES マーケティング本部マネージャー 千田 里美(中)

[当記事は「AdGang」を運営する株式会社PR TIMESの事例です]

リンゴをかじってデンタルチェック「Dentapple」に込められた開発者の思いとは

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Case: 松本りんご協会「Dentapple」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。 今回は、松本りんご協会「Dentapple」を取り上げます。「あなたは元気よくリンゴをかじれますか?」――昭和時代に流れた歯みがき粉のTVCMのフレーズを記憶に残している人は多いのではないでしょうか。このCMに着想を得て開発された、Dentapple(デンタプル)は、リンゴをかじるだけで歯の健康状態がテストできるユニークなデンタルサービスです。 なぜ長野県松本市のリンゴだったのか?プロダクトの狙いは?そんな開発の裏側を、株式会社博報堂ケトル プラナー 畑中翔太さん、株式会社博報堂 iディレクション局 須田チーム インタラクティブスーパーバイザー 上條圭太郎さん、株式会社マテリアル マーケティングコミュニケーションプランニング局 チーフコミュニケーションプランナー 関航さんに話を伺いました。
Interview & Text : 香川 妙美
健康な歯でリンゴをかじるTVCMのイメージが発案のヒントに
-今回の企画が生まれた背景、経緯をお聞かせください。 上條:リンゴといえば、青森県というイメージが強いのではないでしょうか。実際、リンゴの生産量は青森県が1位、次いで長野県なのですが、これをシェアで見ると青森県の5割超に対し、長野県は2割ほど。ここには大きな開きがあります。この差をどう埋めていくのか。それが今回のテーマでした。クライアントである松本りんご協会さんは、自分たちのリンゴに絶対の自信を持っています。だからといって、「おいしいリンゴ」とアピールしても、それはどこも言っているので訴求ポイントにはなりません。そこで、リンゴに「食べる」以外の付加価値を付けるとおもしろいのではないかと考えました。 畑中:市場の推移を見ても、1世帯当たりのリンゴの購入量は年々下がっていて、ここ20年で25パーセントも減少しています。皮を剥くのが面倒だったり、独特の歯ごたえを敬遠されたり、さらにはフルーツとしての目新しさが無い。言わば、『ダウントレンドにあるフルーツ』という認識を僕らも持っていたので、改めてリンゴの存在に気付いてもらうにはどうすればよいのか、というのも企画の焦点でした。 いろいろ話をするなか、ふと思い浮かんだのが、リンゴを丸かじりする姿。歯ブラシや歯みがき粉のCMの影響もあり、日本人なら誰もが想像しやすいイメージだと思うんですよね。で、実際にリンゴをかじって歯から血が出る現象のなかに歯周病のリスクが隠れていることを知り、「こんなふうに食べ物で分かることがあるんだ」と率直に思ったりもしました。 これらをヒントに、『歯のリスクをチェックする』という、付加価値を思いつきました。リンゴに再びスポットを当てられるし、「食べる」という最終的な目的にも落とし込めている。松本市で栽培しているリンゴのなかに、『ふじ』という品種があるのですが、適度な噛み応えがあり、甘みも強くておいしい。歯のチェックにも松本のリンゴをPRするのにも最適でした。発案したときから、「これはいけるんじゃないか」という感触がありました。 ―開発にあたり、試行した点や検討を重ねた点はありましたか? 上條:当初、Dentapple用にリンゴを品種改良するという案も出ていました。リンゴの下部をくぼませて歯の形に見えるようにするというもので、海外の事例を調べたり専門家に会いに行ったりもしたのですが、リンゴの形状や性質から難しいという結論になりました。 畑中:結果として、新品種にチャレンジしなくてよかったと思っています。形を変えるとちょっとグロテスクになる可能性もあるし、食べ物として見てもらえなくなるリスクもありますから。それにオリジナルのリンゴをつくるとそのための生産が必要になり、松本のリンゴを食べてもらうという本来の目的からもずれてしまい、一過性の話題として終わってしまう懸念が生まれるところでした。 現在は、リンゴに専用のシールを張ることでDentappleとして出荷しています。このシールが張られたリンゴであれば、どれでもデンタルチェックができるので、生産者を限定することもないですし、出荷作業も簡単です。さらに協会のリンゴには、このシールを張ることができるというブランドづくりにも一役買っているので、ゆくゆくは加入する生産者の増加にもつながっていくのでは、と期待もしています。 上條:もう一つ試行した点を挙げるとしたら、歯科テストの部分でしょうか。Dentappleは、リンゴを食べながら専用アプリを使ってテストをするのですが、本当にリンゴをかじるだけでチェックできるのかは、最初イメージの域を出なかったので、開発にあたって慎重になりました。 そこで、歯科の先生に監修していただき、リンゴをかじることで何が分かるのかをヒアリングさせて頂きました。結果として、歯周病や虫歯のリスク、顎関節症の判断材料になるのではという回答をいただいたので、次にどんな質問をすれば、それらのリスクを読み取れるのかを考え、それに基づいて出てきた答えを数値化しました。 また、利用者にはかじったリンゴの断面画像を送ってもらうのですが、その画像を歯科衛生士さんが実際に目で確認しています。利用者には、これらに基づいて判断された結果をお伝えしているのですが、その内容が断定的にならないよう言い回しをソフトにするなど、あくまでも歯の健康状態を知ってもらうという領域から逸脱しないよう気を配りました。
ブームはいきなりつくれない。緻密な情報戦略により生まれるもの
―今回、広告は打たず、販売チャネルも限定した形でローンチされています。話題化に向けて取り組んだことやその反響を聞かせてください。 関:ブームははじめから大きくつくれるものではないので、まずはPRの力で徐々に情報を広げていくことを考えました。その際に時系列に沿ってメディアの文脈が変化することを念頭に置き、コミュニケーションプランを構築しました。特に、今回狙いたかった報道系メディアの場合、それ相応の深みのあるニュースバリューをDentappleに持たせる必要があるため、360°の視点で考えつつも、そこに深みを持たせる形で情報をつくりました。おかげさまで出荷前から継続した話題を創出することができ、反響は想像以上でした。 畑中:販売面は、初年ということもあり世の中がどう反応するのかを観察したい気持ちもあり、旬八青果さんによる店頭販売とECサイトでのみ展開しましたが、Dentappleとして売る予定ではなかったリンゴまで出荷に回すほど購入いただき、僕らが考えていたよりも速いスピードで売れていきました。 関:そういった面では、戦略的な情報伝搬設計の結果、これまでリンゴに接点を持ちにくかった、若い層からのトライアルを数多く獲得できたと思っています。さらには、新規トライアルだけでなく、デパートのバイヤーやデンタルメーカーから問い合わせをいただくなど、松本のふじリンゴのビジネスチャンスを多方面に広げるきっかけとしても、良い影響を及ぼせたと思っています。 ―Dentappleの今後の展開予定などがあれば、お聞かせください。 畑中:現在は一部販売店とインターネットが主な販路なので、来年に向けて販路拡大や違うルートの開拓ができればと考えています。たとえば、福利厚生の一環として企業に導入を勧めたり、デンタルクリニックでの取り扱いをスタートしたりなど、ダイレクトチャネルがうまれるとよいですね。 Dentappleの一番の目的は、松本のリンゴの消費拡大なので。加えて、リンゴのシーズンである10月末から12月を、Dentappleによる歯の定期チェックの時期として定着させていければと思っています。いきなり歯医者に行くことをハードルが高いと感じられる方もいると思うので、まずは手軽にリンゴをかじることから歯の健康に意識を向けてもらえるようになるとよいですね。 上條:現在、日本の農業はTPPのさなかにあり、今後より厳しい環境も予想されていますが、このDentappleのように農産物に「食べる」以外の価値を見出せたことは、一つのアドバンテージになっていくんじゃないかと思います。Dentappleとしては、松本りんご協会に入っていただく生産者を増やしたり、歯科診断のできる提携歯科を増やしたり、さらには歯科団体との連携も視野にしつつ運動体としての広がりをつくっていけたらと思っています。

株式会社博報堂ケトル プラナー 畑中翔太さん

株式会社博報堂 iディレクション局 須田チーム インタラクティブスーパーバイザー 上條圭太郎さん

株式会社マテリアル マーケティングコミュニケーションプランニング局 チーフコミュニケーションプランナー 関航さん

スマートフォンを繋げてエレクトリカルパレード!『SYNC! ILLUMINATION』実現の舞台裏

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Case: 東京ディズニーリゾート「SYNC! ILLUMINATION」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。今回は、東京ディズニーリゾート『SYNC! ILLUMINATION(シンク!イルミネーション)』を取り上げます。 1年でまちじゅうがもっとも輝くクリスマス。きらびやかなイルミネーションに心躍らせながら、今年の予定を考えている方も多いのではないでしょうか。本格的なシーズンに先駆け、10月29日に公開された、この『SYNC! ILLUMINATION』は、多くのファンがいる「東京ディズニーランド・エレクトリカルパレード・ドリームライツ」をスマートフォンの画面で楽しめるデジタルコンテンツ。スマホを連携して大勢で楽しむと、特別な演出やフロートが登場するなど、わくわくする仕掛けも満載です。 この幻想的なコンテンツはどのようにつくられたのでしょうか。株式会社オリエンタルランド マーケティングコミュニケーション部 WEBコミュニケーショングループ シニアリーディングスタッフ 今井淳一さん、同チーフリーディングスタッフ 中田聖良さんにお話を伺いました。
Interview & Text : 香川 妙美
一人で使うスマホを、大勢で楽しめるスマホに。
—『SYNC! ILLUMINATION』は、東京ディズニーリゾートで11月9日から開催されているクリスマスのスペシャルイベントに連動したプロモーションということですが、過去にもデジタルコンテンツを使った施策はあったのでしょうか? 今井:直近ですと、ディズニー・イースターの時期にウェブサイト上で行えるゲーミフィケーションコンテンツを展開したことはありますが、今回のプロモーションは、それと比べると規模もレベルもはるかに大きなスケールです。 この『SYNC! ILLUMINATION』もまた、ウェブサイト上で行っているのですが、かなりインタラクティブなコンテンツになっていて、ウェブブラウザの限界に挑戦するというか、その性能をフルに使って展開しています。アプリケーションで提供することも考えましたが、ダウンロードの手間があるので、短期間のみ利用するコンテンツの為に、アプリをダウンロードさせるのはハードルが高いというデータも持っていました。その点を踏まえゲスト視点で体験のハードルが低く、プロモーション施策として好ましいウェブブラウザでの提供を選択しました。 ―開発にあたり、苦労した点やこだわられた点はありましたか? 今井:まず、知的財産をどう扱うのかという全社最適視点での課題がありました。当社のように価値のある知的財産を扱う企業がコンテンツマーケティングを実施する際、どうやって、どのレベルまでそのアセットをマーケティングに活用するのかという点は熟慮し調整を重ねました。今回はリテンションを起こさないよう、基本的には1, 2度の体験で終わるよう設計しています。 加えて、アプリはダウンロードができれば基本的に楽しめるものですが、『SYNC! ILLUMINATION』は、ブラウザ上で楽しむものなので、OSのバージョン、ブラウザの種類、端末のスペックなどすべてに適合させるという部分は本当に苦労しました。テストのときも端末の組み合わせや連携する台数で不具合が起きたりと、なかなか大変でした。対応機種を狭めようという話も出たりしたのですが、そうすると技術ありきになり、出来る限り多くのゲストに楽しんでいただくという必須要件がおざなりになってしまうので、ここはどうしてもクリアしなければならないポイントでした。やはり、たくさんの方に楽しんでいただきたいので技術面は本当に力を入れました。 ―スマホ上で流れるエレクトリカルパレードはすごくクオリティが高くて、とても驚いています。 今井:このプログラミング映像は今回のプロモーションのためにすべて撮り下ろし、スマートフォンで表示したときに最適となるようレタッチをしています。 また、音楽と実際のエレクトリカルパレードでおなじみのショー開始時の電子ボイスも、このコンテンツのために再録音しています。実際のエレクトリカルパレードをご存知の方は、その出来栄えと比較をされると思うので、見劣りしたり違和感があったりすると逆にネガティブになってしまうな、と考えました。ここはプレッシャーでもあったのですが、こだわりをしっかり持ちました。 ―スマートフォンを10台以上つなげると特別な演出が登場することも、話題になりました。 今井:そうですね。連携するスマホが増えると何かが起きる楽しみを、みんなで集まることのインセンティブにしようと思い、メディアにもはじめからその情報をお伝えしていきました。 背景として、一人でも完結するスマホ上の体験を、いかに周りの人に波及させていくかを課題として抱えていました。スマートフォンは、現在テレビに次いで多くの方にリーチできる端末ですが、基本一人で使うものという認識を誰もが持っているのではないでしょうか。ディズニー・イースターのプロモーションのときも、コンテンツで遊んだ方のデータを分析すると、他のコミュニケーションで既にリーチできているであろう同じデモグラフィックの東京ディズニーリゾート高関与層がほとんどでしたので、いかに低関与層にリーチさせるのかは今回のチャレンジでした。 その点で、『SYNC! ILLUMINATION』は、一人で楽しむこともできますが、大勢で体験するとさらに楽しめるように設計したので、私たちが大切にしている“生の体験”や”人とのふれあい”につながるだけでなく、東京ディズニーリゾートの情報に普段触れていない低関与層へのリーチというターゲット戦略にもはまりました。 ―動画の反響もかなりありますよね。どういうシチュエーションを設定したのでしょうか? 中田:『SYNC! ILLUMINATION』はスマートフォン上の施策なので、10~30代の一日のほとんどの情報接取をスマホ上でおこなっているユーザー層が観たときに体験欲求が掻き立てられることを念頭に、キャストもそういった年代の方に出演いただきました。 ドキュメンタリータッチに仕上げたのは、コンティングマーケティングの位置づけを強化する戦略に基づいています。そのため広告色をできるだけ排除しようとクレジットなども必要最小限にし、自然な感じを意識しました。おかげさまで再生回数も100万回を超え、当社の動画コンテンツのなかでも群を抜いています。
メディア戦略は話題化の絶対条件。設計段階から要件として意識した
―話題づくりという点での取り組みをお聞かせください。 今井:本コンテンツのコミュニケーションデザインをする中で、今までリーチできなかったターゲットにも届けるためにも、マスメディアにのせることは絶対条件だと考え、設計の段階から一つの要素として盛り込んでいました。しかしスマホを使った施策は画として映しづらいこともあり、ときにTVからは敬遠されてしまいます。 今回は、スマホをつなげて一枚絵に見えるようにすることでこの部分が解消できました。結果としてTVでも多く取り上げていただき、SNSやウェブに火をつける起爆剤にもなり、大きなバズを生みだしました。 ―SNS上の反応はいかがでしたか? 今井:キャンペーン終了後に効果分析の為の調査を予定していますが、ここまで見ている限り思った以上に「パークに行きたくなった」という声が多い印象を持っています。 私たちとしては『SYNC! ILLUMINATION』の体験だけで満足されてしまうと、マーケティングとしての最終的なゴールは達成できなかったことになるので、そのような声がたくさん見られることには、強い手ごたえを感じています。 『SYNC! ILLUMINATION』を体験したその場で、「今度みんなで行こうよ」のような会話のやり取りがされていると思うので、コンテンツを発端にしたゲスト間でのパーク来園への誘い・誘われも発生していると考えています。 中田:ソーシャルメディアでは、今回はインスタグラムが盛り上がっていましたね。短い動画が投稿されていたり独自のハッシュタグが生まれていたり、ユーザーの自発的な取り組みが印象的でした。 ―今回のプロモーションを振り返っていかがでしょうか。 今井:東京ディズニーリゾートは、常に質の高いカスタマーエクスペリエンスをゲストの皆さまに提供し続けるべく邁進していますが、その魅力を一人でも多くの方にお伝えできるようマーケティングにも日々注力しています。 その中でも今回は、東京ディズニーリゾートが得意とする『アート』と『テクノロジー』の掛け合わせによる、新しいデジタルコミュニケーション施策の成功事例となりました。ぜひ東京ディズニーリゾートからのクリスマスプレゼント『SYNC! ILLUMINATION』をお楽しみください!

株式会社オリエンタルランド マーケティングコミュニケーション部 WEBコミュニケーショングループ シニアリーディングスタッフ 今井淳一さん(左)
株式会社オリエンタルランド マーケティングコミュニケーション部 WEBコミュニケーショングループ チーフリーディングスタッフ 中田聖良さん(右)

あなたもきっと騙される!? 資生堂「メーク女子高生のヒミツ」動画拡散によって得た成果とは

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Case: 資生堂「High School Girl? メーク女子高生のヒミツ」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。 今回は資生堂によるWeb動画「High School Girl? メーク女子高生のヒミツ」を取り上げます。「女子高校生だと思っていた子たちが、実は全員女装した男子高校生だった」という驚きのエンディングが、SNS上でも話題を呼んだ今回のWeb動画。 このプロジェクト開始のきっかけから、SNS上での拡散、撮影の裏話まで、株式会社 資生堂 宣伝・デザイン部 小助川雅人さん、資生堂ジャパン株式会社 コミュニケーション統括部 メディア戦略室 デジタルメディアグループ グループリーダー 仙田浩一郎さん、資生堂ジャパン株式会社 コミュニケーション統括部 メディア戦略室 デジタルメディアグループ 木村桃子さんにお話を伺いました。
Interview : 市來 孝人 / Text : 坂巻 渚
拡散される文脈をとことん追求、絞り込まれたアイディア
—まず、今回の動画制作の経緯を教えて頂けますか。 木村:昨今、色々な企業さんが動画を活用していることもあり、弊社でも何か動画を使って面白いことをしてみたいと考えていました。そこで今年の2月にコミュニケーション統括部と宣伝・デザイン部、そして制作会社のワッツオブトーキョーさんとで「動画プロジェクト」を立ち上げて動き始めました。 これまで高校生・大学生・20代前半など、若年層との接触が課題だったこともあり、今回は、彼女たちに共感してもらえるような動画を作ろうということになりました。 若年層はテレビよりもWeb上での動画をよく見る傾向にありますし。 —今回のアイディアに行き着くまでには、他にも色々と案があったのですか? 木村:最初は30案ほどありました。その中で、女子高生・女子大生にグループインタビューをした所、「女装男子」の案がダントツ人気だったんです。社会人男性の女装の案も考えてはいたんですが、彼女たちに男子高校生の女装の案を話した所、「それ面白い!そんなのがあったらシェアしたい!」とすごく盛り上がったので。 テーマの大枠が決まってからは、PRのネタになりそうな要素や、シェアされそうな要素について議論を重ね、その結果「女子高生全員が、実は男子高校生だった!」という内容に決まりました。10代の子たちがシェアする動画は「おもしろ系」が多いというデータが出ていたという面もあります。

[企画時の絵コンテ]

7時間に及ぶ撮影。秒刻みの過酷な進行も
—今回キャスティングについても、かなりこだわられたのではないですか? 木村:そうですね。高校生向け雑誌「HR」に出たことのある男の子の中から、化粧映えや、メークを落とした時もイケメンか等を基準に出演者を決めました。 —特設サイトにある「女装男子の写真をこすると、その子の素顔が見える」コンテンツも面白いですよね。やはり動画を見て特設サイトにもアクセスしてもらうという導線を意識してサイトを設計されたのでしょうか。 木村:はい。「このカッコいい男の子たち、誰だろう?」と関心を持ってサイトに来てくれた女の子たちに、更に楽しんでもらうために、「写真をこする」というアクションを取り入れています。 —撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?若い世代が揃ったということで、賑やかだったのでは。 木村:撮影前日にリハーサルをしたんですが、その時はまだ男の子たちもちょっと緊張していましたね。 小助川:みんな最初は友達同士ではなかったので、メークテストなどで徐々に顔見知りになっていくという感じでした。 木村:リハーサル日はみんなで泊まったり、撮影当日は過酷な撮影を一緒に乗り切ったりで、撮影が終わる頃にはみんな本当のクラスメイトみたいに仲良くなっていました。

[撮影時のオフショット]

—過酷な撮影だったんですか? 小助川:7時間という長時間の撮影で、ずっと同じ姿勢を保つのがかなり大変だったと思います。 仙田:ペンをずっと持っていなきゃいけなくて、手がプルプルしたり(笑)。 木村:特にメークを落とすシーンは1発撮りだったので、失敗しちゃいけないし、動いちゃいけないしでプレッシャーもあったと思います。動画では足だけしか写っていない場面でも、ずっと止まってなきゃいけないんです。あとは、ヘア&メーキャップアーティストもかなり大変だったと思います。男の子1人の変身時間が1時間と決まっていて、「はい、次は髪!」「10秒後に、眉へ入ります!」と秒刻みで時間と戦っていましたね。

[撮影時のオフショット]

動画コンテンツ拡散の経路を探る狙いも
—動画公開のタイミングではPRや広告等は仕掛けられたのですか? 木村:色々と考えた結果、公開時にはPRも広告も一切打ちませんでした。出演した男の子たちやスタッフがTwitterで公開について投稿してくれたくらいです。様子を見て、全然拡散しなかったらPRを打とうと思っていました。実際最初の2日はあまり拡散しなかったんですが、3日目くらいから一気に爆発していきました。 —拡散に火が着いたきっかけは何でしたか? 仙田:最初は個人のアカウントのリツイートが積み重なり、それをバズ系メディアに取り上げられたことが大きかったと思います。そこから色々なメディアで取り上げてもらうことができたので。 木村: 10月16日に動画を公開したのですが、19日にはYahoo!映像トピックスの総合ランキング1位になり、Togetterでも『資生堂の新CM 衝撃のラストにザワつくTL「プロすげえ」「パーカーの子だけは信じてたのに…」』の記事がかなり盛り上がったおかげで、公開から4日後にはYahoo!トピックスでTOPページにも取り上げて頂くことができました。 —公開から1週間後にはリリース記事も出されていますが、このリリースの意図を教えて頂けますか。 木村:動画に色々な小ネタを仕込んでいるのですが、その小ネタにもっと気づいてもらえたらという狙いです。あとは、動画についての質問がSNS上に結構あがっていたので、それに答えて、その小ネタからまた話題になってくれたらという思いもありました。 —動画公開時にリリースを出すことが多い中で、今回のように「小ネタを明かしていく」というリリース記事の出し方は珍しいですよね。 小助川:「どういう経路をたどって拡散していくかを知りたい」という目的もあったので、最初は何もしなかったんです。ただ蓋を開けると、テレビを含め、ほとんどのメディアに取り上げていただくことができて。更に小ネタを出すことで、まだ取り上げてもらっていないライターさんにも興味を持ってもらえたらと。

[撮影時のオフショット]

メークの面白さを真正面から伝える
—成果としては、予想と比べていかがでしたか? 小助川:現時点で800万回再生と予想ははるかに超えましたね。100万回再生が目標だったんですが、はじめはそれも厳しいかなと思っていたので。意外と海外からの反響が大きかったのも驚きでした。 木村:「100万回を超える動画を作るのはまず難しい」「動画をアップしたタイミングで広告を打たないと」など、(公開前には)メディアや代理店の方から色々なご意見も頂いてはいました。 —社内での反響も大きかったのではないでしょうか。 小助川:リリースを出さなかったこともあり、後から動画のことを知って、色々質問攻めにあいました。 仙田:「この動画の目的は?」「効果はどうだったの?」など質問があまりに多くて、社内対応が結構大変でしたね(笑)。 —今回得たノウハウを、今後社内でどうのように活用されていくご予定ですか? 小助川:今回大きく2つのノウハウが蓄積されたと思っています。1つは「動画を作る」という部分のノウハウ。もう1つは「どういう経路で拡散していったのか」というコミュニケ−ションのノウハウですね。どういったメディアに取り上げてもらうことが重要なのかなど、今まさに詳細を分析しています。今後は今回得たノウハウをブランドのコミュニケーション戦略に活かしていければと思います。 木村:「動画を作る」という点で言うと、今回はテーマ決めから制作までかなり議論を重ねたこともあり、どういう視点で動画を作っていくのがいいのかなど、色々と共有できると思っています。あとはSNS上で打った広告やその効果なども共有していきたいですね。 —お客さんからの反応はいかがでしたか? 木村:「さすが資生堂!」などという声がSNS上で飛び交ったのは純粋に嬉しかったです。メーク技術に対する声や、動画の意外な切り口に賞賛の声がありました。 小助川:「メークがしたくなった!」という声も多くありました。会社や商品をアピールしていくよりも、メークの面白さをまっすぐ伝える内容の方が見ている方にも受け入れられやすいということを知ることが出来たことも大きかったと思います。 仙田:今回「メークをもっと楽しもうよ」という大枠をコンセプトにしていたので、資生堂のロゴは最後まで出てこないんです。でもそこから更に、実はその動画は資生堂が作っていて、「資生堂ってすごいね!」とつながったのは嬉しかったですね。あとは、特設サイトに載せているメイキング動画も90万回以上再生されていて。本編の動画を見た約1割もの方が興味を持ってメイキングまで見てくださっているという点は、やはり嬉しいですね。

株式会社 資生堂 宣伝・デザイン部 小助川雅人さん(中) 資生堂ジャパン株式会社 コミュニケーション統括部 メディア戦略室 デジタルメディアグループ グループリーダー 仙田浩一郎さん(右) 資生堂ジャパン株式会社 コミュニケーション統括部 メディア戦略室 デジタルメディアグループ 木村桃子さん(左)

「不思議の国のアリス」が東京に迷い込む!? キヤノン 新たなYouTubeチャンネル立ち上げの狙いとは

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Case: キヤノン「Canon Imaging Plaza」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。 今回はキヤノンの公式YouTubeチャンネル「Canon Imaging Plaza」で公開している動画のうち、「FANTASTIC RESTAURANT」・「Fun to shoot! Fun to see!」・「Alice in Tokyo」・「#SightShooting」の4シリーズについて取り上げます。YouTubeチャンネルの立ち上げから、各シリーズに込められた想い、撮影の裏話、そして目指している広告の形まで、キヤノン株式会社 宣伝部 和田訓子さんにお話を伺いました。
Interview & Text : 坂巻 渚
「写真の楽しさ」をYouTubeで世界に発信
—公式YouTubeチャンネル「Canon Imaging Plaza」を立ち上げた経緯を教えていただけますか? このチャンネルを立ち上げたのは2014年11月末だったのですが、グローバルで見るとその時既に沢山の企業チャンネルがあり、後追いの状況でのスタートでした。弊社内で見ても、私たち本社よりも先に、世界各国にある販売会社が個々にチャンネルを立ち上げていました。 本社として今から始めるのであれば、企業のホームページの機能と同様に企業紹介動画やTVCMのアーカイブをするようなチャンネルではなく、もっと「写真・映像表現の楽しさ」や「製品を支える技術」を伝えるチャンネルを作りたいと思い、「Canon Imaging Plaza」を立ち上げました。また、若者のテレビ離れが進む中で、CMでは伝えきれないメッセージを彼らに伝えたいという想いもありました。 —様々なシリーズを新たに公開された目的、また動画を作るにあたってのこだわった点、苦労した点など教えていただけますか? グローバル本社として、日本だけでなく、全世界に向けてのファン作り・ブランディングをすることが今回の目的でした。これまで築いてきたブランドイメージを守りながらも、いかにWeb動画を見慣れている人にも楽しんでもらえる動画を作るか、という点にはこだわりましたね。若手クリエイティブの人たちにも協力してもらいながら、会社としても新しい表現に挑戦しました。実際に動画を見てくださった方からも、「今までにないCanonだった!」などの声をいただきました。 また、グローバルに楽しんでもらえる動画を作るという点には苦労しました。今回、世界各地に広告配信・運用管理できるYouTubeの「True View」を使っているため、動画は全て英語で作っているのですが、できるだけ言葉を少なくしたり、メッセージを分かりやすくして、映像を見ているだけで面白かったり心地よくなれるよう意識しました。
それぞれのシリーズに込められた想い
—それぞれのシリーズについてお聞かせいただければと思いますが、「FANTASTIC RESTAURANT」のテーマはどのように考えられたのですか? この動画は、普段スマホで写真を撮ることが中心の若年層がターゲットで、そういった方がどういうシーンであれば一眼レフを使いたくなるかを考える所から始まりました。 そこで最初に出てきたのは、「空港にスターが到着した瞬間」。よくワイドショーなどで見る映像ですが、みんな必死でスターが通り過ぎる一瞬をスマホで撮るものの、なかなか綺麗に撮れている人を見たことがないという話になって。 「スマホで写真を撮ってもいい場面もあるけれど、一眼レフで撮るとよりいい場面がある」ということを、共感や納得感を得られる形で表現できればという想いから、「劇的な瞬間、逃さずキレイに」というテーマが生まれました。そんな中、代理店から「FANTASTIC RESTAURANT」の案をいただきました。まさに私たちが伝えたいテーマを面白く、しかも分かりやすく伝えてくれていると思い採用しました。

[実際に使用された絵コンテの一部]

—撮影もかなり大変だったのではないですか? 卵を空中で切ったり、玉ねぎをジャグリングしたり、1日がかりのハードな撮影でした(笑)。一眼レフの機能であれば、当然ぶれずに撮ることはできるのですが、「劇的な瞬間」を「美しく」撮影しなければならないので、納得いくまで何テイクもトライしました。撮影しながら私たち自身が、スマホとの対比で言いたかった「撮れる」と「美しく撮る」ということの違いを体感しました。 —「Fun to shoot! Fun to see!」のテーマについても教えていただけますか。 このシリーズも「FANTASTIC RESTAURANT」と同様にスマホで撮影の機会が増えた若年層がターゲットだったのですが、タイトル通り、「写真を撮ることも、観ることも楽しもう!」というメッセージを込めた動画です。 料理やお花のような、形として一生は残らない趣味、せっかくならそれを写真に撮って誰かに見せたり、プリントして飾る所まで趣味にしてもらえたらと思い、「大切なものを最高の形で残してほしい」ということを動画の軸に決めました。代理店からは、それをストレートに訴求しつつも、ちょっとおかしなドキュメンタリー風にまとめたシリーズと、共通のコミュニティーのなかで写真を楽しむシリーズの2案をいただいたのですが、どちらもテーマに合っていたので採用しました。 中でもボディービルダーは衝撃でしたね(笑)ただよくよく考えてみると、彼らにとって鍛え上げられた肉体は立派な作品ですよね。それを同じコミュニティーで撮影し合って楽しむというのは、理想的な姿だと思いました。実際に撮影でも、みなさんお互いの筋肉を撮影しながら「きれてる!」の連発で(笑)心から撮影を楽しんでくださっていたようでよかったです。 —「Alice in Tokyo」のターゲットはどのような方になりますか? このシリーズは先ほどの2シリーズよりは「カメラに興味がある方」がターゲットでした。一眼レフのユ−ザーは30代〜40代男性が多いのですが、写真が好きになってきたという、潜在顧客層の女性や若い世代にもアプローチしたいと思っていました。レンズ交換によって写真が変わることを伝えたかったので、5本のシリーズを見ると個々のレンズの違いが伝わるようにしています。 —「Alice in Tokyo」は、今回新しく作った動画の中でも特にクールな雰囲気ですね。 映像作家・志賀匠さんに監督をしていただき、スタイリッシュな中にもかわいらしさを残すような演出をしていただきました。広告配信でTrue Viewを使っているので、できるだけスキップされないよう、最初の5秒のアニメーションや音楽の響きは特に意識しました。 あとはシリーズものなので、毎回動画の最後に白うさぎを登場させて次を見てもらうフックにしたり。私たちは特にレンズにこだわりがあるので、このレンズではこういうシーンを撮ってほしいなど、制作チームとはかなりやり取りを重ねました。女性の人気もとても高いシリーズだったので、新しいターゲットを取り込むという点でもよかったですね。 —撮影にはどれくらいの時間がかかったのですか?また印象に残っているシーンがあれば教えてください。 5シリーズ撮るのに、合計で3日間かかりました。成田空港のシーンは、飛行機の発着が夜の10時すぎまであったので深夜の撮影で。飛行機から降りてきた方々が、アリスやハンプティ・ダンプティがベンチで待機しているのを見てとても不思議そうな顔をしていたのを覚えています(笑)空港の他には、「COOL JAPAN」を意識しながら、海外で人気の原宿や渋谷を中心に、アリスが降りたって絵になる場所を探しました。 —「#SightShooting」は映像も音楽も心地よい動画でしたが、このシリーズで特にこだわられた点を教えてください。 「Alice in Tokyo」同様、ターゲットが比較的カメラに興味がある人だったので、作例にはこだわりました。王道な観光名所から細い小道にある伝統工芸品のお店まで、一眼レフならではで撮れるシーンを探しました。あとは「#SightShooting」という言葉が生まれたのもよかったなと思っています。 ただ「観光(Sightseeing)」するだけでなく、「写真を撮りながら観光する(SightShooting)」と、旅がもっと楽しくなるというメッセージを雰囲気の良い動画で伝えられたと思います。このシリーズは約2分と長いので動画広告の枠には向いていない気もしたのですが、心地よい音楽で流れるように見ることが出来るからか、完全視聴率がかなり高い動画でした。特にヨーロッパの人たちは「こんなにもスキップしないで見てくれたの?!」と驚くような視聴率でした。
喜ばれる広告が企業のブランディングにつながる
—SNSでの反応はいかがでしたか? YouTubeアナリティクスでFacebookでのシェアがかなり多かったことがわかっています。Twitterでは「広告なのに、最後まで見ちゃった!」「広告を初めてスキップしなかった!」などのコメントを沢山いただきました。PRを打っていないにも関わらずTrue Viewの広告だけを見てこれだけ能動的に発信していただいていることに驚いています。 純粋に喜ばれる広告を作ることが出来たのは嬉しいですし、これまで接点がなかった人たちに、キヤノンやカメラに興味を持ってもらえるきっかけになって良かったです。シリーズによってコメントをいただく層にも特徴があって、「Alice in Tokyo」「#SightShooting」はカメラ好きや映画好き、音楽関係者などクリエイティブな方、「FANTASTIC RESTAURANT」と「Fun to shoot! Fun to see!」についてはネットヘビーユーザーの方が多かったですね。 —成果としては、当初の予想と比べていかがでしたか? 今回グローバルな施策だったということもあり、全世界を横並びで一元管理できるYouTubeのTrue Viewを軸に広告出稿をし、KPIには再生回数を設定していました。 運用型の動画広告では、お金をかけた分だけ再生回数が担保されるは当然のことですが、同じ予算をかけてもクリエイティブが良くないと決まった期間内で配信が完了しなかったり、再生回数が想定を下回ることもあります。その点、今回は想定をはるかに超える再生回数になり、費用対効果の高い広告出稿ができました。枠を有効活用するのにクリエイティブがいかに重要かということを再認識しました。 また今回の動画施策で、YouTubeチャンネルのファン登録が6000人近く増えたり、SNS等で能動的に発信してくれる人が増えたということを見ると、グロ−バル本社としての目的だったファン作り・ブランディングにつなげることができたと考えています。 —今後はどのような運営をされていくのでしょうか。 YouTubeチャンネルについては、新しいファンから既存のファンまで幅広い方々がいるので、お客さんが検索して見に来るような機能紹介やHow To動画などの動画から、今回のように「写真の楽しさ」を伝える動画まで幅広く増やしていきたいと思っています。 また今回新しく動画制作のノウハウがたまったので、それを社内で共有していきたいと思っています。実は今まさに共有し始めているのですが、社内からはまだまだ「動画広告って、本当に見られているの?」という声もあるので。今回グローバルに動画施策を実施したことで、国・年代・性別での動画広告の視聴特性を、感覚ではなくデータで伝えられるため、納得してもらいやすいですね。 —今回の動画施策は、会社としてもかなりチャレンジな施策だったということですね。 そうですね。いいクリエイティブを作れば、動画広告の活用の仕方はまだまだあるということを感じました。広告を出す側が広告を楽しいものにしていけば、受け取る側にも楽しんでもらうことができるので、私たちが「広告=悪者」にしてはいけないと感じています。 生活者目線で共感できる広告を作り、企業のブランディングにもつながるようなWin-Winな流れができれば、広告業界ももっと活性化していくと思っています。

キヤノン株式会社 宣伝部 和田訓子さん


“BIG”とつくものなら、何でも割引対象に!バーガーキング「BIG割」実施の狙いとは

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Case: バーガーキング「BIG割」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。 今回は、バーガーキング・ジャパンが実施したキャンペーン『BIG割』を取り上げます(現在は終了)。期間限定で販売されたハンバーガー、BIG KINGのキャンペーン施策として行われた、この『BIG割』は、“BIG”と名の付く商品やレシートを提示すると、BIG KING4.0を割引価格で食べられるというもの。いろいろな“BIG”で割引きに挑戦するユーザーの投稿が大きな話題になりました。 このユニークなキャンペーンはどのように発案されたのでしょうか。株式会社バーガーキング・ジャパン マーケティング部 ブランドマネージャー 家永佳奈さんにお話を伺いました。
Interview & Text : 香川 妙美
「新規のお客様にアプローチしたい」。BIG KINGが担ったバーガーキングの課題
—本キャンペーンが生まれたきっかけを教えてください。 BIG KINGは昨年4月にも期間限定販売している商品です。すでに本国アメリカをはじめ各国でレギュラーメニュー化される人気商品だけあり、登場感も手伝って昨年の期間限定商品のなかでは一番の売り上げとなりました。ただ、前回はバーガーキングを普段からご利用になるお客様の購入が主で、新規のお客様の開拓に結びついていませんでした。そこで11月に行った今回のキャンペーンでは、いかに新規のお客様に食べていただくかを本質に据えました。 加えてバーガーキングの一番の特徴は、ビーフパティを直火で焼いていることなのですが、そのことがお客様に伝わっていないという課題がありました。食べていただければおいしさが伝わる自信はあるものの、そこまでのハードルが高い印象を持っていたので、BIG KINGの販売に合わせて直火焼きのおいしさを発信することで、食べていただくきっかけにしていただこうと考えました。 ―他社と比較する打ち出しは、とても衝撃的でした。『BIG割』が決定にいたるまでのプロセスをお聞かせください。 直火焼きのおいしさをダイレクトに伝えるには、他のハンバーガーの味を知っている方に食べていただくことが一番。この考えは満場一致でした。しかし、その手段として他社さんのハンバーガーと比較することには、正直なところ賛否両論あり、「他社さんと比べるのではなく、自社の商品の訴求に注力したほうがよいんじゃないか」という声も同じくらいあがりました。やはりキャンペーンは、お客様に好意的に受け容れていただくことが重要ですし、そこには売り上げもともないますから、かなりの議論に発展しました。 そこで、キャンペーンの効果をそれぞれシミュレーションし、ニュース性が強く話題にもなるという結論から、今回の『BIG割』に決まったのですが、最終的にはチャレンジしたいという空気が全体に生まれていました。外部調査機関によるテイスティングテストの結果もまた、後押しになりました。 ―今回のキャンペーンは、『“BIG”と名の付くものを提示すればBIG KING4.0が割り引きになる』というものですが、ネットでの盛り上がりが機運をより高めたように感じています。“BIG”のボーダーラインに挑戦する猛者がどんどん登場し、その模様がSNSを中心に投稿され、拡散されていきましたね。 そうですね。スタート当初は、皆さん似たような“BIG”をお持ちになっていたようですが、だんだん誰も持っていっていない“BIG”を提示するというほうに加速していったように思います。お客様同士が競うように投稿していく様子は本当におもしろく、わたしたちも楽しませていただきました。おかげさまで、当社がターゲットとしている30~40代の男性ばかりではなく、女性やシニア層の方にもたくさんご来店いただけました。 ―実際、何をお持ちになるお客様が多かったですか? 本当に多種多様でしたが、駄菓子やポイントカードをご提示になる方が多かったですね。もちろん他店のハンバーガーをお持ちになる方もいらっしゃいました。ほかにも、カードゲームのカードやCDアルバム、ユニークなところでは、“BIG”と書かれた付箋をお持ちになる方もいらっしゃいました(笑)。 ―“BIG”のジャッジメントは、お店やスタッフの判断にゆだねたとのことですが、平準化しないことで対応に温度差が出るなどの懸念はありませんでしたか。 このキャンペーンの本質は、一人でも多くの方に直火焼きパティのおいしさを知っていただくことでしたので、むしろ画一的なオペレーションが足かせになって、その機会を逸するのは絶対に避けたいと思っていました。ですので、本社からは、「お客様の“BIG”は、すべて受け止めてください」というアナウンスだけに留めました。 結果として、お客様に提示をご案内したり、お持ちでないお客様に、たとえば「”BIG”な夢を聞かせてください」とお声かけしたりといった、ユーザーファーストの考えに基づいた独自のオペレーションが生まれ、どんどん展開されていきました。これには、わたしたちも驚かされました。 ―キャッチコピーや、比較対象のハンバーガーにモザイクのかかったポスターもユニークでした。 これらのクリエイティブは、外部のクリエイターさんと、どう伝えていくかを考えながらつくりこんでいきました。ポスターはウェブサイトでも公開しているのですが、シェアも多かったですし、それに対するコメントも盛況でした。キャッチコピーもあえて直接的なものにはせず、ポスターのモザイクの粗さも何パターンか検証するなど、想像にお任せします的なニュアンスにはこだわりましたね。日本人独特の感性を大切にしました。
キャンペーンによって生まれたお客様とのコミュニケーションが思わぬ副産物に
―キャンペーンの意外な効果はありましたか。 お客様とスタッフの間のコミュニケーションがたくさん生まれ、企業ブランディングに寄与できたという点は非常に良かったですね。お客様がクーポンを提示して、スタッフが確認するという流れが普通だと思うのですが、今回は、お客様の“BIG”にスタッフが反応するといったやりとりが交わされたので、スタッフをとおして、バーガーキングとお客様の距離が近づいた、と感じています。思わぬ副産物の誕生が率直にうれしいです。 ―実際の売り上げやお客様の反応はいかがでしたか? 売り上げは昨年同月比110%増を目標にしていたのですが、実績は116%増となり、満足のいく結果を残せました。お客様の反応としては、「初めて食べた」というコメントが多かったですね。「お肉が全然違う」という声も多く聞けましたので、直火焼きの味わいを訴求する点もしっかりクリアできました。 ―今回の成功により、次回のキャンペーンのハードルが上がった気もしますが(笑)、BIG KINGが再登場する予定はありますか? 時期とタイミングを見ながらになるとは思いますが、またご提供していきたいと思っています。また、今回のキャンペーンは、日本で一番ポピュラーな直径約9センチのサイズでの展開でしたが、バーガーキングのハンバーガーは、看板商品のワッパーに象徴される直径約13cmのものが主流です。次回はこのワッパーサイズをお試しいただくことで、「本場のハンバーガーは大きいんだな」「アメリカから来たハンバーガーだけあるな」といった印象をお持ちいただけるようなキャンペーンを展開してもおもしろいかな、と考えています。 バーガーキングは再上陸からまだ9年目と、国内のファストフード市場ではまだまだ後発組なので、お客様に認知され選ばれていくためにも、自社の強みを積極的にお伝えできるインパクトあるキャンペーンに、どんどんチャレンジしていきたいと思っています。

株式会社バーガーキング・ジャパン マーケティング部 ブランドマネージャー 家永佳奈さん

「お前を守れるのはパスワードだけ」ーー原宿駅に登場した“胸キュン”ポスターの正体は

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Case: 独立行政法人 情報処理推進機構「パスワード –もっと強くキミを守りたい–」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。 今回は、独立行政法人 情報処理推進機構「パスワード –もっと強くキミを守りたい-」を取り上げます。昨年4月3日から原宿駅に掲出が開始された少女マンガ風の胸キュンポスター。「壁ドン」「あごグイ」をはじめとする甘酸っぱいタッチが一見高校生のラブストーリーと思いきや、セリフはどれもパスワードの重要性を説くものばかり。そのインパクトと意外性が注目を集め、多くのメディアで取り上げられたほか、SNSでも広く拡散されました。 この胸キュンポスター制作の裏側や施策の効果について、独立行政法人 情報処理推進機構 技術本部 セキュリティセンター 普及グループ グループリーダー 山北治さん、同グループ 藤井明宏さんにお話を伺いました。
Interview & Text : 香川 妙美
10代の若者にパスワードの重要性を啓発したい。独立行政法人がとった“らしからぬ”施策。
―本企画の背景をお聞かせください。 山北:情報セキュリティの重要性が叫ばれて久しいものの、残念ながらインターネットにまつわる犯罪被害は増加傾向にあります。これらのなかにはパスワードの不適切な管理が原因のものも多く、利用者のパスワードが単純であったり、使い回していることが一つの理由になっています。 パスワードは秘密の鍵であり、サービス利用者は第三者に推測されないように作成する必要があります。サービスを提供する企業がいくら頑健な仕組みを用意しても、サービス利用者のパスワードに対する意識が高まらなければ被害の発生を食い止めることはできないといった側面があり、特に低年齢層ほど意識の低いことが独自の調査を通じて分かっていたので、10代に向けた啓発をする必要があると考えていました。 ―原宿駅や駅周辺のボードをジャックする施策は、視認性が高いことに加え、ターゲットとの親和性も高く、効果が大きかったのではないでしょうか。 山北:そうですね。10代は興味のあるものにしか反応しない傾向があり、どのようなアプローチをすれば効果を出せるのかは、私たちがかねがね持っていた課題でもありました。その点、今回の『原宿ファッションジョイボード文化展』は、若者の街である「原宿」という立地や展示ボードをジャックするという展示規模から、かねての課題をクリアーでき、さらには社会性のあるテーマのみを扱うという本文化展の主旨に照らして、公的機関として積極的に広報するのに最適な媒体でした。 ―クリエイティブは公募されたそうですが、どのような過程を経て決定したのでしょうか。 藤井:まず、12社から29作品が集まりました。選定にあたっては、新聞社の社会部記者、日本PTA全国協議会の前監事、ネット教育アナリスト、情報セキュリティや教育の見識家など、言わば、“若者のプロ” “情報セキュリティのプロ”に審査をお願いし、ここ機構内の技術者を加えました。また、当機構内においても、ターゲット年齢が近い若手女性職員一人ひとりから参考意見を聞く機会を事前に設けたりもしたのですが、それぞれ好みは分かれるものの、全員が一様に胸キュンポスターが気になる、と答えていましたので、今回のクリエイティブは、『どこか琴線に引っ掛かる作品』という印象を当初から持っていました。 審査当日も審査員の反応が大きく、描写の美しさ、作品としてのおもしろさ、見られ方と訴求内容のギャップという意外性、そこからくる話題性など、さまざまな視点から広告効果が一番見込めるということで、満場一致で選ばれました。 山北:余談ですが、決定報告を当機構の経営層にした際、理事長以下全員が一瞬固まりまして(笑)。少しの間のあと、理事長の口から「最近の若者には、こういった感じのものがいいんだな」という感想が出て、ようやく私たちもホッとできました。実は納得してもらえないことも想定して次点作品も用意していました。 そういった側面でいえば、ローンチして市井の反応を見るまでは、「炎上するんじゃないか」という不安もぬぐえず、ドキドキでした。あくまでも当機構は国の機関ですし、真面目な姿勢は崩せませんので、その印象の対極にあるともいえる今回のクリエイティブは、内外から「よく通りましたね」と声をかけられるなど、まさに”挑戦“的なクリエイティブになりました。 ―ポスターは、全部で15枚あるとのことですが、イラストとコピーの構成は、どのように決まったのでしょうか。 山北:今回の訴求テーマは、『パスワードの強化』でした。「パスワードは長く複雑にする」「使い回しはしない」。この2点を10代に向けて啓発するという骨子を当機構からお伝えし、発注先のクリエイターやコピーライターがそれに基づいた構成を整えるという形で進んでいきましたが、このコピーで伝えたいことが伝わるのか、テクニカルな間違いはないのかなど、機構内の技術者が専門家の視点でチェックしています。 描写は絵コンテの段階から基本的に変更はありませんが、集中線の密度は、制作の段階で薄いトーンに変わり、やわらかな印象に仕上がっていましたね。描写のトレンドというか、10代の好む構図をかなり意識していただきました。 ―実際に掲出して、反応はいかがでしたか。 山北:まず、原宿駅ホームでの展示からスタートしたのですが、TVや新聞をはじめ、多くのメディアで大々的に取り上げていただきました。 初日にテレビ局が女子学生何組かにインタビューを行ったのですが、全員が「パスワードを使い回している」と答えていまして。「私たちのねらいにぴたりはまっている」と手ごたえを感じた瞬間でした。 ウェブメディアでも200本以上の記事が掲載され、短期間で話題化できたことも良かったですね。Yahooトップの「話題なう」にも掲載されました。 藤井:SNSの拡散も大きかったです。Twitter上では、展示から1週間で4,500を超えるツイートが見られたのですが、なかにはリツイートが8,000を超えるものもあり、拡散力の大きさに驚きました。感想としては、「おもしろい」「笑った」といったコメントが目立ちました。この反応は、『少女マンガなのにパスワード強化の啓発』というギャップに対してのものなので、私たちが訴求したい本質の部分を汲み取ってもらえているという実感もありました。
「ポスターを譲ってほしい」。大学や企業の声を発端にポスターを販売
―反響は、展示だけに留まらなかったそうですね。 山北:ええ。展示から1週間のうちに、大学や企業から「ポスターを活用したい」「譲ってほしい」という問い合わせが相次ぎました。その声に応え、8月よりA2版のポスター15枚セットの販売を行っています。すでに200セット近く売れているのですが、学校や企業に混ざって個人の購入も目立っています。 学校の内訳を見ると、大学や短大の購入が約6割と多くありました。計算機センターの利用だけでなく、このごろはレポートや課題をオンラインで提出させる大学も増えてきているので、パスワードに関連する課題をお持ちのところは多いようですね。また、掲示目的以外にも、「講座の教材にしたい」「顧客サービスに活用したい」という声もあり、種々活用いただいているようでありがたいです。 ちなみに、ポスター販売の記事が、9月5日のYahooトピックスに掲載され、再び注目を集めることになりました。販売時期に合わせて、東京メトロ全駅でポスターの掲示も行ったのですが、4月からの取り組みが一巡したタイミングだったので、新たな盛り上がりをつくれた点も良かったです。さらには、内閣府の外郭団体が10月に行った「サイバーセキュリティ国際キャンペーン」の取り組みとして、ASEAN10か国の言語に翻訳したポスターを各国政府に展開したことも好機となりました。 ―パスワードへの意識の高まりといった点での効果はいかがでしょうか。 山北:かつてない反響を感じており、届けたいターゲットに向け意識付けできた点では、効果を感じています。特設ウェブページから啓発映像へ遷移する数も順調に伸びており、パスワードの強化について、さらに関心を高めようとする人が増えているようにも感じています。 ポスターの掲出以外にも、全国の学校を回る出前授業や地域の団体とタイアップした広報活動を各地で展開しています。今後もマスを意識した活動と地道な啓発活動による情報発信を続けることで、パスワードの重要性を一層説いていきたいと思っています。

独立行政法人 情報処理推進機構 技術本部 セキュリティセンター 普及グループ グループリーダー 山北治さん(右) 藤井明宏さん(左)

あなたの“願い”や“悩み”に応じてオーダーメイド。お守り「OMAMO」開発の理由

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Case: 池上實相寺「OMAMO」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。 話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。今回は、池上實相寺(いけがみじっそうじ)のオリジナルお守り「OMAMO(オマモ)」を取り上げます。 2016年の幕が開けたと思えば、1月ももう終わり。あなたは初詣に出かけましたか?参拝先でおみくじやお守りを求め、厄除けや招福を祈念した人も多いのではないでしょうか。そんな護符の代表ともいえる「お守り」を現代風にアレンジした「OMAMO」が、昨年末に正式リリースされました(現在、販売再開に向けてメール予約受付中。2月より発送開始予定)。 これは、日本に伝わる紋様の意味や効用を使って、それぞれの願いや悩みに合わせたお守りを作るというサービス。もちろん實相寺 副住職による祈祷もされています。本プロダクトの開発の狙いを、株式会社I&S BBDO コンテンツディベロップメントグループ アートディレクター 古野照雄さんに伺いました。
Interview & Text : 香川 妙美
お坊さんとの新しいコミュニケーションをお守りがつなぐ。
―今回のプロダクトの背景をお聞かせください。 大田区池上は日蓮が没した土地だそうで、日蓮宗の大本山である本門寺を中心に個人寺が多く点在する趣のある地域です。そんな特徴を生かして以前から池上を盛り上げようという動きがあり、これまでも音楽祭やヨガ、寺子屋などが寺院で行われています。 話は少し逸れるのですが、昔はお寺というと学校や役場としての機能があったり相談ごとが持ち込まれたりと、生活者にとって、いまよりずっと密接な関係にありました。しかし、これらに代わるサービスが時代の移り変わりとともに整備されたこともあり、昔のような関係は希薄化していきましたが、昨今新たに「パワースポット巡り」や「御朱印ガール」に代表されるカジュアルな関わり方が生まれています。参拝客に向け、お寺のほうからアプローチすることも珍しくなくなりました。 今回「OMAMO」を扱う實相寺もまた地域に開けたお寺であり、お寺を中心にしたコミュニティの形成にも意欲をお持ちです。そこで、池上を盛り上げる施策として、まずはお守りをフックにした取り組みをスタートすることになりました。 ―お守りに着目した理由は何でしょうか。 まず、一般の人とお寺、特にお坊さんをつなげたいと思いました。そこで、誰もが身近に感じているモチーフを介すことを考え、お守りが浮かびました。サイズが小さいぶん日常的に持ち歩けるものですし、ちょうど良いな、と。 さらには、このお守りを願いごとに合わせてカスタマイズしたり、見た目も現代風にアレンジしたりできたら、その過程でお坊さんとのコミュニケーションも生まれるんじゃないかと。バーテンダーがお客さんに合わせてカクテルをつくるようなイメージです。そんな話を實相寺の副住職である酒井智康(さかいちこう)さんに話したら、賛同してくださいまして。お守りを軸にすることは、すんなりと決まりました。
お守りの性格はそのまま。ビジュアルを新しくして現代らしさを訴求
―「OMAMO」の特長を教えてください。 まずは、デザインですね。「OMAMO」に使われている紋様は、旧来から日本にある、いまでもお守りに使われているものなのですが、一つひとつに意味や効用があります。たとえば、カメをモチーフにした亀甲柄には長寿の意味が、矢羽をモチーフにした矢絣(やがすり)は、まっすぐに飛んで目標を射止めることから厄除けの効果があると言われています。「OMAMO」は、この紋様をそのまま活かし、色をカラフルにすることでポップな印象にしました。 次に、「紋様の意味」と「ご祈祷」を組み合わせるというシステムが挙げられます。「OMAMO」は上下に二つの紋様と「ご祈祷内容」の組み合わせで無数のバリエーションを作ることができます。それによって、それぞれの願いにふさわしいお守りをお届けすることができるようになっています。 ここまで、かなり現代らしい感覚を打ち出していますが、元来お守りの持つ性格は、そのまま大切にするべきところなので、紋様の監修、祈祷は、すべて酒井副住職がされています。 ―開発にあたり、こだわった点はありますか? 素材選びにはすごくこだわりました。結論としてジャガード織を採用しているのですが、ここに行き着くまでに布プリントや刺しゅうなど色々試しました。お守りはスピリチュアルなものなので、カジュアルになりすぎるとありがたみが薄れますし、縫い目が詰まったものもちょっと重苦しく、お守りらしさに欠けてしまいます。 その点、ジャガード織は、織り目がきれいに出ますし、発色も美しい。見た目も一番しっくりきました。そういうトーン&マナーは、とても大切にしました。ただ、「OMAMO」は上下異なるデザインなので、対応できる紡績工場を見つけるのにまた苦労したり。試作品を見ては再オーダーを繰り返し、ようやく今の形が出来上がりました。 ―ところで、「OMAMO」というネーミングは、かなりかわいらしい印象を受けたのですが、意図するものはありましたか? 当初、コンセプトを元にした「あなただけのお守り」だったり、自分だけのものという意味合いから「OMYMORI(オマイモリ)」だったり、いろいろ挙がったのですが、「ネーミングにしては長い」「『お参り』と間違えられる」なんて意見が出て。それで、最近名称を途中で止める感覚が浸透しているじゃないですか、“インスタ”とか。 それが現代っぽくて、ポップだなあ、と。そこからヒントを得て「OMAMO」になったんですけど、古くからあるものが新しく蘇る感じがプロダクトにもぴたりときました。 アルファベット表記にしたのは、外国の方にもリーチできれば、と考えてのうえです。和柄は外国で人気がありますし、和の精神も海外からの関心が高いので、興味を引ければという期待も込めています。

 [実際に使用された企画書]

―海外の話が出ましたが、「OMAMO」は、昨年Spikes Asia 2015で受賞されたそうですね。 はい。デザイン部門でブロンズをいただきました。おかげさまでシンガポールなどから問い合わせをいただいたり、引き合いがきています。海外から火がついて日本に逆輸入という流れが生まれてもおもしろいと思っています。 ―今後の展開を教えてください。 「OMAMO」に関しては、他の寺院からの問い合わせもありますので、今後そういったことも視野に展開できればと考えています。 また、池上を盛り上げるという観点では、副住職と実際に話ができるサービスや個人寺をウェブ上でつなぐ施策を検討しており、実現できればお寺やお坊さんをより身近に感じていただけるきっかけになると期待しています。 池上にあるお寺は30代をはじめとする若いお坊さんが多く、新しいことにも積極的なので、古くからの慣習を大切にしつつ、いままでにない試みで「OMAMO」に続くサービスを開発していきたいですね。

株式会社I&S BBDO コンテンツディベロップメントグループ アートディレクター 古野照雄さん

外部との積極的なコラボで、佐賀県をPR〜「ロマンシング佐賀」実現の舞台裏

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Case: 佐賀県「サガプライズ!」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。今回は佐賀県によるプロジェクト「サガプライズ!」を取り上げます。 「サガプライズ!」とは、企業・ブランドとコラボレーションして佐賀の地域資産を磨き上げ、全国に佐賀県の魅力を発信。また、活動から得られた知見や手法を地域にフィードバックすることで、“情報発信による佐賀県の地方創生”を目指すプロジェクト。 今回は「サガプライズ!」の前身となる佐賀県の地方創生プロジェクト「FACTORY SAGA」にて実施した、ゲーム「ロマンシング サ・ガ」とのコラボ「ロマンシング佐賀」。そして「サガプライズ!」となって実施した「ロマンシング佐賀2」実現の舞台裏について、サガプライズ! プロジェクトリーダー 佐賀県 統括本部 危機管理・広報課 金子暖さん、サガプライズ!プロデューサー 佐賀県 統括本部 危機管理・広報課 田中裕資さんにお話を伺いました。
Interview & Text : 市來 孝人
情報発信による地方創生プロジェクト
—これまでの「FACTORY SAGA」「サガプライズ!」での、取り組みが始まった経緯についてお教え下さい。 金子:「FACTORY SAGA」が約2年前に立ち上がり、昨年7月にバージョンアップし「サガプライズ!」となりました。プロジェクトが立ち上がる前は県外への発信を、例えば有田焼のプロモーションなど個々では行っていたのですが、県全体では行っていませんでした。 「サガプライズ!」は情報発信による地方創生プロジェクトを銘打っています。一過性のバズをつくるというよりは、その先、佐賀の魅力をより深く知ってもらう、その手法として様々な企業さんとコラボをしていくという考え方になります。 —「情報発信」に目をつけられた理由は何でしょうか? 金子:例えばアンテナショップを作ったとしても、佐賀県のような魅力度が低い(全国46位)と言われる県の場合は、お客さんが入ってくるのをひたすら待たなくてはなりません。そのように受け身ではなく、プッシュ型で”佐賀”をユーザーの生活に出していく必要がありました。普段のライフスタイルの上にある企業さんやブランドさんと組むことで佐賀との接点を増やしてもらって「なんか最近よく佐賀に出会うな」と、佐賀が生活の中で面として出てくることで、気になったり、その先にある「行ってみよう」という気持ちのきっかけを作りたいなと。 もうひとつは、佐賀の企業さんや職人さんからよく言われるのは「どうやって話題になる商品を開発したらいいかよくわからない」ということです。そこでノウハウを持っている(他の)企業さんと一緒に活動することで、今の市場やトレンドを踏まえるとこうした商品がいいです、という知恵を注入頂けるとよいなという狙いもあります。
東京でイベントを実施し話題化。その後実際に佐賀に来てもらえるような施策を実施
—過去のコラボ施策の中でも、ゲーム「ロマンシング サ・ガ」とのコラボ「ロマンシング佐賀」は、佐賀県の施策の面白さがより広く認知される施策になった印象があります。こちらのきっかけはどのようなものだったのでしょうか? 田中:「サガ」シリーズが25周年を迎えるという機会に、当初は「サガ」シリーズのキャラクターを使った商品化をしませんかというご提案を頂きました。それを受けて「これはより大きなコラボ事業にしたい」とご挨拶に伺い、お互いの共通項は何だろうと半年くらいお話をし、六本木でのリアルイベントが実現しました。「サガ」シリーズは音楽やストーリーなど、アート的な要素が印象深いゲーム。佐賀県は有田焼などのアート的な伝統工芸品が盛ん。そこで「アート」の要素を融合させていこうとなりました。 イベントの目玉としては、熱狂的なファンも多い(「サガ」シリーズのイラストを手がける)小林智美さんによるイラストの入った有田焼を作り、展示し、販売しました。他にもゲームのパッケージを模した箱に、佐賀の海苔やようかんなどの入った800円のセットを販売したのですが、こちらは約1,300個売れました。 金子:これを購入した方が、そのようかんのお店をその後訪れたりと、佐賀との接点を作っていくいわば象徴的なボックスです。 —東京での「1」に続き、佐賀県での「2」もやろうという話は早くからあがっていたのでしょうか? 田中:2014年3月に六本木でのイベントを実施後、佐賀でもやらないんですかという声も多く頂きました。当時は「FACTORY SAGA」として佐賀県外で情報を発信するという役目だったので、佐賀県内での観光施策を実施しているおもてなし課に引継ぎ、東京での話題化から、実際に佐賀に来てもらえるような施策をしましょうということになりました。 大きな施策はラッピング列車です。「サガ」が自由気ままに旅をするゲームなので、そんなイメージで佐賀でも楽しんで頂けたらいいなと。また同時並行で東京でも、「サガ」シリーズに出てくるキャラクターがそれぞれ山手線の駅名をもじった名前になっているので、そのそれぞれの駅にポスターを掲示して話題化を図りました。 —Jリーグのクラブ・サガン鳥栖ともコラボして「ロマンシング サガン」という試合日のイベントも行われて、ネットでも話題になっていた印象があります。対戦相手がFC東京ですが、やはり首都圏から来るサポーターの見込みもあってというところでしょうか? 田中:FC東京のサポーターの方々は、佐賀のスーパーでよく売っている惣菜「ミンチ天」をよく買っていかれるのですが、実は六本木での「ロマンシング佐賀」イベントの時も販売して、サポーターの方を中心によく売れたんです。BEAMSさんとコラボした移動式アンテナショップで「ミンチ天バーガー」を出したときも行列が出来て、やはりミンチ天の力は強いなと感じたんですね。そこで試合の演出などはもちろん、今回も特製パッケージのミンチ天をスタジアムで販売したりしました。 —「1」「2」を総括してみて、いかがでしょうか? 田中:いきなり佐賀県でイベントを実施しても、県内や近隣の方にしか広がらないことも有り得ます。ならばまずは東京で話題になるようなイベントを実施し、足を運んでくれる方はもちろんメディアを通して全国にそのニュースを広げ、その後に佐賀県でやろう、という順番の方が行動に移してもらえるのではと考えています。 そういったサイクルがあると「ロマンシング佐賀」で感じることが出来ました。その後「FACTORY SAGA」を情報発信だけではなく、発信した情報を地元・佐賀県にフィードバックしていくサイクルを作る事業「サガプライズ!」に昇華させようということになりました。 —ゲームとコラボすることは、固定ファンが多いというメリットもありますか? 田中:ゲームファンの方はネットとの親和性も強いので、拡散力も強いです。面白いと思ったものをすごく書いてくれたり、拡散してくれたりするので、すごく有難いです。 [後編では「サガプライズ!」による今冬のプロジェクト、ゲーム「スプラトゥーン」とのコラボ「Sagakeen(サガケーン)」を取り上げます]

サガプライズ! プロジェクトリーダー 佐賀県 統括本部 危機管理・広報課 金子 暖さん(右) サガプライズ! プロデューサー 佐賀県 統括本部 危機管理・広報課 田中 裕資さん(左)

外部との積極的なコラボで、佐賀県をPR〜町の人口の約2倍の来場客「スプラトゥーン」との連携成果に迫る

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Case: 佐賀県「サガプライズ!」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。今回は佐賀県によるプロジェクト「サガプライズ!」を取り上げます。 「サガプライズ!」とは、企業・ブランドとコラボレーションして佐賀の地域資産を磨き上げ、全国に佐賀県の魅力を発信。また、活動から得られた知見や手法を地域にフィードバックすることで、“情報発信による佐賀県の地方創生”を目指すプロジェクト。 今回はゲーム「Splatoon(スプラトゥーン)」とのコラボ「Sagakeen(サガケーン)」を取り上げます。東京タワーでのイベント、佐賀・呼子でのイベント、両地域でのイベントを実現。実現の舞台裏について、サガプライズ! プロジェクトリーダー 佐賀県 統括本部 危機管理・広報課 金子暖さん、サガプライズ!プロデューサー 佐賀県 統括本部 危機管理・広報課 田中裕資さんにお話を伺いました。 [前編:「ロマンシング佐賀」実現の舞台裏はこちら]
Interview & Text : 市來 孝人
開始から40日間で、町の人口の2倍近くの方が来訪
—この冬はゲーム「Splatoon(スプラトゥーン)」とのコラボ企画が実施されていますね。 田中:毎朝のアイデア会議の中で「スプラトゥーン」が発売されてすぐに話題になっていて、ゲームメディアだけではなく、経済系のメディアも取り上げていて目に留まりました。このゲームの主人公はイカですが、佐賀県の呼子という地区はイカの名産地だし、何か出来るのではないかと。 早速任天堂さんに企画書をお持ちしたところ前向きに乗って頂きました。「ロマンシング佐賀」でのスクウェア・エニックスさんとの仕掛けもご存知で「ゲーム業界の中でも佐賀県は話題になっていますよね」とおっしゃって頂きました。最初は佐賀県で何かしましょうという提案だったのが、東京タワーでのイベントや、ゲーム作中での登場と、広がっていきました。 金子:今回は「ロマンシング佐賀」の「1」「2」でやったことを一回で凝縮してやった印象です。 —東京タワーでのイベントが12/25まで、佐賀県(呼子)でのイベントが1/31までと一ヶ月ずらしているのは、東京をはじめ県外から足を運んでもらおうという狙いですか? 田中:そうですね。東京でのイベントは事前の盛り上げという位置づけがあります。呼子自体は元々観光地として確立していて特に夏は気持ちよく過ごせるのですが、冬場になると落ち込んでしまうんですね。そこの谷間を埋めるという目的もあり、この時期に実施しています。現地では遊覧船をラッピングして「スプラ丸」として楽しんでもらったり、コラボグッズの販売、スタンプラリーなどを実施しています。 スタンプラリーは、元々呼子の中でも名所として知られる箇所にスタンプを設置しています。「スプラトゥーン」をきっかけに、元々あるその土地の魅力にも触れて頂きたいなと。 —進捗はいかがですか? 田中:1月10日(日)に1万人を突破したのですが、呼子エリアの人口が約4,900人なので、開始から40日間で町の人口の2倍近くの方に訪れて頂いている形になります。1万人目は山梨県笛吹市の家族連れで「このために初めて佐賀に来ました」とのことでした。 食事や遊覧船・グッズなどでお一人当たり約1万円程度使って頂いているわけですし、現地の方も「革命が起きたように人が来る」「こんなに若い人達が朝市を歩いている」といった声を寄せてくださっています。今回は特に若い方に来て頂いているので、将来家族を持った時などに、また来てくれるようになれば嬉しいです。 また、最新の動きとしては「スプラトゥーン」とコラボした有田焼豆皿1,000枚(1枚1,200円(税抜))を、1月27 日(水)より「呼子のイカす広場」で店頭販売。さらにイベント最終日の31日(日)には、コラボした唐津焼の小皿も25枚限定(1枚2,500円(税抜))で発売します。両商品は、「闘会議2016」(1月30日(土)、31日(日))での販売も予定しています。
「良い取り組み」と言われることより「話題になるかどうか」を重要視
—その他にもこれまで、BEAMSやゼクシィなど様々な企業・ブランドとコラボしていますが、企業側としてはどういう狙いで実現することが多いのでしょうか? 金子:ご提案を頂く場合、こちらからご提案する場合、それぞれ半分くらいですね。狙いとして最も多いのは、地方を元気にするということが商品のイメージアップにも繋がるという点です。今は地方創生の機運も高まり、地域貢献をしている企業の商品を買いたいというユーザーも多いようなので。 他には、地方と組んでのビジネスモデルづくりのモデルケースとしてという場合も多いです。例えば宝島社さんとのコラボムックが他の県でも展開されたり、ゼクシィさんの「ご当地結び」という企画が他の県で実現したりしています。新しいビジネスチャンスを佐賀と組むことで見つけて頂ければ嬉しいですし、我々としても、佐賀が第一弾になったプロジェクトは、他の県で実現した時に、「佐賀でも実施」ということが過去事例としてニュースに出てくるメリットもあります。 CSR・社会貢献的な企画については、我々は商品を開発したり、セールスプロモーションを実施するという意味合いが強いので、県の別の部署をご紹介させて頂くことになります。 —コラボする企業については、どのような基準で選定されているのでしょうか? 金子:8つほどの指針を設けています。この指針は開示していないのですが、前提としてはユーザーの生活の導線にある商品かどうか、特にこれから市場をリードしていくような20〜30代をターゲットにしています。佐賀に何かあるかを知らなかったり、はなわさんの歌(「佐賀県」)での比較的ネガティブな印象も残っていたりするようなので(笑)。 「話題になるかどうか」も重要な観点です。「良い取り組みだ」と評価されても、一般のユーザーにまで届かなかったりする場合も多かったりします。「良い取り組み」と言われることより「話題になるかどうか」を重要視するようにしています。この「話題」については毎日、新聞を読みながらどんなことが今トレンドとなっているか、スタッフ全員でブレスト会議をしています。 —仕事がまるでPR会社のようですね! 金子:実は企画書以外にも、佐賀の情報をまとめた「ファクトシート」の作成なども行っています。 —ちなみに金子さんは異業種(アパレル)にいらしたとのことですが、そのご経験も活かされているのでしょうか。 金子:アパレルでは新規事業開発をしていました。その時に例えば「今ウォーキングが流行っているから、ウォーキングのブランドを立ち上げよう」となった時に形にする仕事をしたり、地方の工芸品とのコラボをすることもありました。そういった経験から、自治体側に回ってみたいと思い、今に至ります。

サガプライズ! プロジェクトリーダー 佐賀県 統括本部 危機管理・広報課 金子 暖さん(右) サガプライズ! プロデューサー 佐賀県 統括本部 危機管理・広報課 田中 裕資さん(左)

ロングセラー商品「サンテ40」が今、漫画『ガラスの仮面』とコラボを始めた理由とは

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Case: 参天製薬『サンテ40 ガラスの仮面なりきりアイマスクキャンペーン』
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。 今回は、参天製薬『サンテ40 ガラスの仮面なりきりアイマスクキャンペーン』を取り上げます。1985年の発売以来、長く愛されている点眼薬「サンテ」シリーズのプレゼントキャンペーン。これは、演劇の世界を舞台に主人公・北島マヤの成長を描く、人気マンガ『ガラスの仮面』とタイアップしたもので、『ガラスの仮面なりきり診断』『月影千草主演 サンテ40ゴールド劇場』など、マンガの世界をパロディにしたウェブコンテンツも同時に楽しめるというもの。本施策をプランニングした、GMO NIKKO株式会社 コミュニケーションプランニング部門 部門長 神谷みめいさんに話を伺いました。
Interview & Text : 香川 妙美
コミュニケーションの敷居を低くして、セールスに最大限寄与する
―今回のキャンペーンの開始のきっかけをお聞かせください。 僕は家庭薬のクリエイティブを手がけることが多いのですが、そのつながりで一昨年の夏に大阪家庭薬協会のセミナーで講演する機会をいただきまして。参天製薬さんとは、そこで面識をいただきました。ちょうど2015年のクリエイティブを決定するコンペがあるからとお声をかけていただき、今回のキャンペーンの提案をさせていただいたのがはじまりです。 参天製薬さんというと、若い年代に人気のある『サンテFX』や、フレグランスを意識した『サンテ ボーティエ』など主力のものがいくつかあり、プロモーションもかなり大々的なのですが、今回の『サンテ40』というのは、これらと比べるとなかなか伸びないブランドなんですね。でも息の長い商品なので、とても大切にされていて、コンペにあたってはターゲットである40代の女性にリーチでき、かつセールスにつながることを期待されていました。 ―提案された企画はどのようにして生まれたのでしょうか? 僕は、キャラクターを使った企画をあまり行わないのですが、参天製薬さん自体はキャラクタータイアップが盛んで好みでもあるという印象を持っていたので、これを踏まえて、まず先方がジャッジしやすいものを採用しつつ家庭薬で培った僕のエッセンスが生きるものを提案したいと考えていました。 目が印象的なキャラクターとして、『ガラスの仮面』の起用にいたるわけなのですが、これはTVのバラエティ番組がヒントになりました。『ガラスの仮面』好きなタレントが作品愛を語るというものなのですが、その時点で『ガラスの仮面』を読んだことの無い僕でも、ときおり白目になる画風やマンガの持つ世界観がすぐに浮かんできたので、一般的にイメージしやすいと思いました。 そして、コミュニケーションの部分ですが、デジタルのキャンペーンは往々にして技術が先行しがちというか、新しい手法を取り入れることに意識が向いてしまうんですが、たとえ話題になったとしても、それを地方の主婦が知りさらに興味を持つのかは未知数です。やはり広告主のセールスにつなげることが一番大切ですから、テクニックに走るのではなく、分かりやすいコミュニケーションと話題化を図れるものということで、パロディで展開していくことにしました。

[企画当初の草案]

―『ガラスの仮面』を提案したときの、先方の反応はいかがでしたか? そんなに良くもなかったですね。これまでも、エヴァンゲリオンやももいろクローバーZなどとタイアップされてきていますから、僕の提案は相当渋かったようで、びっくりされました。「ガラスの仮面ですか……」みたいな(笑)。なので、事前に行っていた認知調査を合わせて提出しました。これは、さまざまなマンガを横並びにして年代別の認知度を測定したものなのですが、『ガラスの仮面』は、定量的に支持されており、ターゲットにも刺さることを説明しました。 ―実施にあたって、苦労した点があれば教えてください。 今回は勝手にキャラクターを喋らせたり、景品もちょっとおもしろいほうに寄せたりしたので、まずは原作者である美内すずえ先生の了承を得られるのかという不安がありました。作風をすごく大切にされる方と伺っていましたし、直近でも大きなキャンペーン企画をお断りされたと耳にしていたので、ここはイチかバチかで持っていくしかないな、と。 美内先生のマネジャーにも、「これはおもしろいですね。でも、先生の琴線がどこに振れるのかよく分からないので」なんて言われつつ、ドキドキしながらお会いしたのですが、「キャラクターがどんどんセリフを喋っていく展開はおもしろいわね」と言っていただいて、ようやくホッとできました。 このときの資料も、チームメンバー全員で必死にマンガを読んで、どのコマを使うのか検討して、セリフも考えてと、とても地道な作業でした。さらには、参天製薬さんは、マーケティングの分野には非常に高い知見をお持ちなのですが、デジタルキャンペーンの実績はこれまでなく、さらにはこういった分野の知識をお持ちではない美内先生にもご理解いただく必要がありましたので、プレゼンは紙芝居方式で行いました。コンペの参加が認められ、当日を迎えるまで1か月ほどでしたが、短い期間でここまで落とし込むのは本当に大変でした。 ―今回は、昨年の6月に実施された第1弾に続くキャンペーンとのことですが、前回と異なる部分はありますか? (プレゼントキャンペーンと合わせて)診断コンテンツを今回新たに盛り込みました。当初、第1弾からリリースする予定だったのですが、コンテンツを投下しないでどのくらいの応募があるかを知りたいという参天製薬さんの意向がありました。応募数も、参天製薬さんは過去のご経験から多少低めに予想していたようですが、僕が掲げていた4万件という見込みは、開始から3週間ほどで達成できました。 また、景品も前回はモノクロでしたが、今回はカラーで。これって全然大したことじゃないのですが、SNSでも「たったそれだけ」みたいな反応がユーザーから挙がることを当初から織り込んでいました。 今回に限らず、ユーザーの反応を先回りしてアウトプットに織り込むことは、クリエイティブをつくるうえで常に意識しています。想定されるざわつきに、あえてのっかることはいつも考えていますね。
広告のネタ化、バナーの量産、クリエイティブを支える数々の施策
―こだわった部分はありますか? 一つは広告のネタ化です。情報が話題化されていくときに、それが広告として広がらないと、クライアントのセールスに結びつきません。そういった点では、おもしろいと思った人が、自身の解釈で情報をシェアするときに僕らの意図しない文脈で流れるのは避けたかったので、どのように話題になるのかを考えてつくりこみました。 次に、ウェブ設計の部分になりますが、ブログが流行った時代は、あとで記事化されるので文章にしやすいことを念頭にしていましたが、現在主流のソーシャルメディアはその場で出ていくので、OGP(オープングラフプロトコル)を細かく設計することで、一律的に決まったページが表示されるのではなく、ユーザー自身がおもしろいと思った部分をシェアできるようにしています。 あとは、バナーをたくさんつくりましたね。そうするとまとめサイトに投稿してくれる人がいるんですよ。数があるとまとめたくなるみたいで。診断コンテンツの結果が16種類あるのもこの一環なんですが、ネタバレになって全然良いと思っています。キャンペーンサイトに来てもらえなくても、そこで認識して商品を買ってくれればよいので。 診断コンテンツは、冒頭にある性別を尋ねる設問にグーグルとヤフーのタグを埋め込んでおり、男女のリターゲティングが可能になるように設計しています。また、通常なら応募が完了した人には広告を表示しないようにすると思うのですが、本件では、目の症状を訴求する広告で女性にリターゲティングし、店頭での購買動機形成を図っています。これは、かなりの頻度で出現するのですが、クリックされない、つまり課金されないので費用対効果が悪くなるということもありません。 このように、表向きは分かりやすいコミュニケーションを打ち出していますが、裏側はセールスにつなげるための策を緻密な計算のうえ数多く実施しています。 ―応募者や当選者の反応はいかがでしたか? 他のキャンペーンとくらべて事務局への問い合わせが目立ちました。その内容のほとんどが、「わたし、当たりましたか?」とか「娘がファンなので、当選させてください」といったもので、皆さんのキャンペーンにかける熱い想いを知れました。40代の女性の応募が、全体の7割を占めたことも狙いどおりでしたし、第2弾のKPIも無事に達成できました。 また、当選者だけに向けたアフターキャンペーンを展開することで、当選者のコメントも集めています。参天製薬さんへのフィードバックも目的の一つですが、僕たちが次の一手に生かす情報としても役立てています。 ―今後の展開を聞かせください。第3弾はありますか? このキャンペーンは、もともと昨年と今年の2年にわたる実施を計画しています。というのも、今年、『ガラスの仮面』の連載が40周年なんですよ。そこで、『サンテ40』とかけて、何かパワーアップしたキャンペーンを展開できればよいな、と。また今年は、『ガラスの仮面』の新刊が出るんじゃないかと、まことしやかにささやかれていますので、何か盛り上がりをつくれればと思っています。

GMO NIKKO株式会社 コミュニケーションプランニング部門 部門長 神谷みめいさん

森、木、水…自分の名前がアニメになるKIRIN『GREEN NAME』制作の舞台裏と成果

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Case:KIRIN「GREEN NAME by 淡麗グリーンラベル」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。 今回はKIRINの人気商品「淡麗グリーンラベル」のデジタル施策『GREEN NAME by 淡麗グリーンラベル』について取り上げます。自分の名前を入力すると、名前の漢字に含まれるグリーンな部分(森、木、山、田、土、川など)がアニメーション化して、自分だけの「GREEN NAME」が完成する今回のキャンペーン。キャンペーン立ち上げの経緯から、制作の裏話、デザインへのこだわり、そして今後の展開まで、株式会社電通 CDC プランナーの尾上永晃さん、同社 CDC アートディレクターの相楽賢太郎さん、株式会社パーティー テクニカルディレクターの中村大祐さんにお話を伺いしました。
Interview & Text : 坂巻 渚
商品が持つ「心地良い雰囲気」を伝えたい
—まず、今回のキャンペーンが立ち上がったきっかけを教えて頂けますか。 尾上:「淡麗グリーンラベル」という商品は、これまで大きなデジタル施策をしたことがなく、デジタルを活用してもっと若い人たちに「グリーンラベル」という商品を好きになってもらいたいという所から始まりました。以来「グリーンラベルらしさとは何か?」ということを追究してきましたが、今回は「イインダヨ!グリーンダヨ!!」のCMでおなじみの、緑の中でみんなが遊んでいる心地いい雰囲気をデジタル上でも伝えていきたいということになりました。「グリーンを身近に感じてもらいたい」という想いは商品のコンセプトでもあるので。なんとか商品の持つ「ふわっとした」心地良い雰囲気を伝えることはできないかと議論を重ねました。 —どのような案が出たのですか? 中村:人の名前の漢字の中にある”グリーンな部分”を探しだして、それをアイコン化してパッケージにする、という案が相楽さんから出ました。グリーンラベルのパッケージ上の「淡麗」部分に桃の絵が書いてある缶を作るとか。ビールというより桃缶みたいに見えて驚きましたが(笑)ただ、漢字が変化するのは面白い案だという話になりました。 相楽: 身近な人で考えると、ほとんどの人の中にグリーンがあるというのは発見でした。ただ、その段階ではどのような方法で表現するのがベストなのかが見えていなくて。打合せをする中で、中村さん、尾上からジェネレートサイトを作るのが面白いのではという話になり、その段階で今の形がほぼ決まりました。 中村:そこから、ジェネレートするのは「名前」だけに集約した方が面白いねという意見が尾上さんから出てきたんです。自分の名前なら誰でも愛着があるので、「身近な所にグリーンを見つけた!」というコンセプトも決まりました。 中村:今回、キリンさんから頂いた目的が「ブランディング」だったということもありますね。Web系の施策だと「商品をバズらせてほしい」、「商品の購入につなげてほしい」などの依頼が多い中、純粋に「ブランディング」が目的というのは珍しいケースでした。 尾上:バズらせるとなると、ある程度極端なことをする必要が出てくると思うのですが、やわらかい雰囲気のグリーンラベルにはそういった極端なことが全く似合わないんです。それでバズらせるのはなかなか難しいという話をしていて。最終的にはブランドを傷つけずに、「グリーンラベルらしさ」がきちんと伝わるちょうどいいラインを見つけることが出来たと思います。

[提案資料の一部]

美しさとロジックでこだわり抜かれたデザイン
—制作で大変だったこと、苦労したことを教えていただけますか? 尾上:「GREEN NAME」に決まったのが9月頭で、リリースが11月16日だったので、制作期間は実質2ヶ月半と非常にタイトなスケジュールでした。 中村:とにかく大変な制作でしたね(笑)ただ「GREEN NAME」を最初に提案した時に、今とほぼ同じデザイン案が出ていて、そのおかげで1ヶ月ほど制作期間を短縮できました。クライアントにもとても好評でした。 相楽: プレゼン前にはもっとリアルなデザインなども検証したのですが、無数にある名前の中で どういう漢字同士が合わさるかわからないので、完成形が同じトンマナでまとまるようにフラットで少し素材感を感じるデザインにしました。 中村 : あと、デザインをどう組み合わせるかという仕様の問題がありました。漢字の組み合わせがなかなか難しくて。例えば「森森」さんという方がいると、「森」は上に広がるデザインなので、2つの「森」が続くとデザインが重なってしまい、どちらかのデザインを小さくする必要が出てきます。ただ、今回漢字のデザインを担当してくださったアドブレーンの方々のインプットがとても早く、1回目の打合せで仕様の方向性をほぼ決めることが出来ました。デザインチームがサーバーサイドでの合成ルールについて、率先して意見を出してくれたのも今回大きかったですね。

[検証中のデザイン画]

—漢字の組み合わせは無数にある気がしますが…もう少し詳しく教えていただけますか? 中村:漢字の種類自体はとても数が多いのですが、その中で人の名前に使われるような漢字は3000字ほどです。まずは手作業で3000字を机の上に並べて、グリーンが含まれている漢字を1字1字仕分けしていきました。「森」や「林」のように漢字そのものがグリーンであるものはもちろん、「村」の様に漢字の一部にグリーンが隠れているものも含めて、最終的には約700字まで絞ることが出来ました。あとはその700字をデザインしてアニメーション化させるのみと。 尾上:700個もアニメ−ションを作るなんて相当大変ですよね。 中村:アニメーション担当者から、アニメのサンプルを見せてもらった時は予想以上にすごいものがあがってきました。その時点で「これを本当に700個も作るの?」と驚きました。制作期間も残り2ヶ月をきっていました。 尾上:デザインも1個1個手書きで、グリーンが生成されるまでの途中のアニメーションも相当凝っているんです。 相楽:漢字700文字、大小や、位置による反転もふくめるとデザインパターンはその何倍もの数になりました。期間内に間に合うかという所ももちろんですが、1個でもデザインの手を抜いてはいけないと思い、デザイナーと一緒に2ヶ月間、漢字と睨み合う日々でしたね。 —デザインで1番大切にした点は何ですか? 相楽:どんな名前であっても綺麗な絵になるようにということを工夫しました。例えば、色数についても際限なく使ってしまうとごちゃごちゃしてしまうので、緑と赤はそれぞれこの色、彩度・明暗はこの数値内というように、最初に決めた範囲内の色であればどれを使っても綺麗な絵になるようにルールを決めました。 あとは全体として見た時にいかに綺麗に見えるかという点にはとてもこだわりました。虹と木は共存できるけど、水の上に木があったらおかしいなど、ロジックを意識しながらデザインを考えました。 これまでグリーンラベルが築いてきた「心地いい雰囲気」をいかにうまく伝えていくかということは常に意識していましたね。 —制作には何名くらいの方が関わっていたのですか? 中村:デザイナーが6名、フロントエンジニアが2名、サーバーサイドエンジニアが3名、アニメーターが8名です。相楽さんからの提案で、平岡政展さんの映像を見て、これでやれたらすごいと満場一致で決まり、アニメーションディレクターは平岡さんにお願いしました。 相楽:平岡さんをはじめとするアニメーションチームのクオリティには驚かされるばかりでした。ここまでユーザーに楽しんでもらえるクリエイティブになったのは本当にアニメーションクオリティの力だと思います。 —水や鳥のさえずりなど、音楽もとても心地よかったです。 相楽:グリーンラベルの心地いい世界観とポップな部分を音楽でうまくつなぎたいと思い、音楽家・蓮沼執太さんにお願いしました。ポップと言っても、あまり子供っぽい雰囲気にはしたくなくて。 中村:音楽プロデューサー濱野さんからの提案だったのですが、蓮沼さんは「フィールドレコーディング」と言って、新潟辺りの森や川で自然の音を録音し、その音をためていたんです。特に今回は環境音を沢山使うということもあり、ぜひ蓮沼さんにお願いしようということになりました。
デジタルからリアルへ。「GREEN NAME」が目指す永遠のエンゲージ
—ターゲットはどういう方たちだったのですか?また実際はどうでしたか? 尾上:ターゲットは20代から30代の女性です。商品自体は女性向けという訳ではないのですが、デジタルを活用することでその層にも好きになってもらえたらと。実際に「GREEN NAME」を使ってくださっている方も男女比3:7と女性が多いという結果が出ています。 —SNSでの反応はいかがでしたか? 尾上:意外とTwitterでの反響が多かったですね。 中村:「GREEN NAME」は名前を使うものなので、実名制のFacebookでのシェアは多く、一方でTwitterではあまりシェアされないだろうと予想していました。ただ実際にキャンペーンが始まってみると、キャラクターや有名人の名前で「GREEN NAME」をつくってツイートしてくれる方が結構多くて。坂本龍馬などの偉人の名前を使う人はいるだろうと予想していたのですが、キャラクターは予想外でしたね。 初期は割とアニメ好きやジャーニーズ好きの方が多かったのですが、徐々に若い人たちが自分の友達に勧めてくれるなど、いい流れができていました。 —SNS上でシェアされやすいように工夫もされたんですか? 相楽:Gifアニメで美しくループするように工夫しました。 中村:平岡さんのアニメーションが本当に素敵だったので、できるだけ沢山の方に見てもらいたいと思ったんです。1回再生だとアニメーションをほんの一部しか見ることが出来ないので、何回も再生可能なGifアニメにしました。あとはシェアされる方が色んな所でシェアできるよう、動画を最も綺麗に見てもらえるファイル形式なども調べました。 尾上:「GREEN NAME」を体験してくださった方はもちろん、シェアを見た方にもグリーンラベルに対していいイメージを持ってもらえれば2重にいいですね。 —特に嬉しかったコメントはありますか? 相楽:「自分の名前にこんな意味があったんだ!」という言葉は嬉しかったですね。 尾上:「親に感謝!自分の名前がもっと好きになった。」とか。 相楽:あとは、最近Facebookの名前を英語で登録する人が多くて、友達同士でも名前の漢字を知らなかったりするんですよね。自分の漢字についてあまり意識する機会がない中で、改めて名前に興味を持ったり、喜んでもらえたのはよかったですね。 —これまでにいくつの「GREEN NAME」が作られているんですか? 併せて当初設定したKPIも教えていただけますか。 尾上:12月上旬時点で120万個です。KPIはちょっと安全な所ということで4万生成でした(笑)動画再生とは違い、名前入力など手間がかかる非常に能動的な体験であることを考えると、この数はかなりよかったと思っています。 中村;今後、どれくらい商品に好感が持たれているかなどの調査もしていく予定です。 —今後の展開や方向性について教えていただけますか? 尾上:今後は商品の売り場でも「GREEN NAME」を作れるようにしようなどの話も出ています。12月初めには、LINEギフトで友達の名前が入った缶を送るプレゼントキャンペーンも実施しました。 中村:今回かなりいいソースができたので、これを今後色々な所で使っていきたいと思っています。「GREEN NAME = グリーンラベルがやっていること」というイメージを展開していきたいなと。 尾上:昨年末12月19日からは、自分が作った「GREEN NAME」をトートバックにプリントできるサービスもサイト上で始まりました。同時に、「GREEN NAME」が印刷されたトートバックや缶バッチ、シールを作ることが出来るようなイベントも実施しました。デジタルだけで終わらせず、一生手元に残るものを作って、それを持ってもらうことで初めて真の意味でのエンゲージやブランディングになったらいいなと思います。メイン商戦期が4月頃なので、その辺りでもリアルなキャンペーンを手がけていきたいですね。 相楽:デジタルキャンペーンの傾向として、流行ったとしても半月もすれば昔のものになってしまうんですよね。せっかく想いを込めて作ったものなので一瞬で風化させたくないという想いもあり、デジタル施策の次のステップとして、リアルなグッズで永遠のエンゲージを目指してチャレンジしていきたいと思っています。 話題にはなるけど何も残らないようなクリエイティブや、内容は素晴らしくても実際には誰もやっていないようなクリエイティブではなく、今回は「拡散と深さ」をうまくブリッジできたと実感しています。

(左から) 株式会社電通 CDC プランナー 尾上永晃さん 株式会社電通CDC アートディレクター 相楽賢太郎さん 株式会社パーティー テクニカルディレクター 中村大祐さん


“インスタジェニック”な写真でハワイの魅力を訴求!『Instagenic Hawaii』キャンペーン実施に込められた想いとは

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Case:ハワイ州観光局「Instagenic Hawaii」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。 今回はハワイ州観光局によるInstagramを活用したキャンペーン「Instagenic Hawaii」について取り上げます。ハワイで撮影した写真にハッシュタグ「#instagenichawaii」をつけて投稿すると、選定された写真が特設サイトにアップされ、投稿者の中から毎月抽選でハワイのギフトが当たる今回のキャンペーン。キャンペーン立ち上げの経緯から、Instagramを選んだ理由、特設サイトへのこだわり、そして今後の展開まで、ハワイ州観光局マーケティングマネージャーの酒井貴子さんにお話を伺いしました。
Interview & Text : 坂巻 渚
フォトジェニックな写真でハワイの魅力を伝えたい
—今回のキャンペーンを立ち上げた背景を教えていただけますか。 ハワイのロマンス市場の活性化をしたいということが今回のキャンペーンのスタートでした。ハワイは日本人の海外挙式の約3分の2を占めるほど、ロマンス市場の中でも非常に人気のあるデスティネーションなんです。ハワイを盛り上げようと頑張っているウェディングプロデュース会社さんや旅行代理店さんも沢山いらっしゃるので、せっかくなら彼らと一緒にハワイのロマンス市場全体を底上げするキャンペーンができたらと。 そんな中、広告代理店さんから「Instagenic Hawaii」をご提案いただき、昨年10月に特設サイトをローンチしました。11月中旬にはハワイのウェディング関連の会社さん3社にもキャンペーンに参画いただき、現在特設サイトで写真を通してハワイの魅力を伝えていただいている状況です。 —SNSの中で今回Instagramを選ばれた理由は何だったのでしょうか。 美しい写真でハワイの魅力を伝えることが弊局のミッションでもあったので、写真を最大限に活用することができるInstagramを使うことに決めました。青い海や夕日、食べ物などハワイはどこを撮ってもフォトジェニックなんですよね。キャンペーン名に使われている「Instagenic」という言葉も「Photogenic」と「Instagram」を掛け合わせたものなんです。 ハワイの綺麗な景色はもちろん、ウェディングの幸せなワンシーンや、カップルで過ごすロマンティックなひと時など、観光からウェディングまでみんなのとっておきの瞬間を投稿してもらえればと思っています。 —ターゲットはやはり女性になりますか? はい、キャンペーンの目的がロマンス市場の盛り上げということもあり、ターゲットは20代から30代の女性です。中でも特に若い層、ウェディングを意識し始める前の20代前半の女性にもアプローチできるという点がInstagramを選んだ理由の1つでもあります。
Instagramを意識したこだわりのサイト設計
—特設サイトではハッシュタグ別に写真が表示されるなど、かなりInstagramを意識された設計になっている印象を受けました.. そうですね。「#wedding」「#family」「#food」などハッシュタグ別に写真を表示することで、興味に合わせてハワイの写真を楽しめるギャラリーの様なサイトを意識しました。「#instagenichawaii」に「#wedding」など他のハッシュタグを追加した投稿が増えていくことで、項目別に写真を見られるデータベースのようになっていくといいですね。 例えば、ハワイ挙式のドレスについて知りたい人は、サイト内の「#wedding」や「#dress」の項目を見れば、簡単にドレスのデザインや結婚式の雰囲気を写真で見ることができます。サイトのデザインについても、ファーストビューに様々なハッシュタグを並べたデザインを持ってくることで、サイト内にどのような写真があるのかイメージしやすいように工夫しました。 —キャンペーンを始めてみて、苦労したことはありますか? それぞれのハッシュタグにバランスよく写真を集めることですね。今回ウェディング関連のハッシュタグが多いのですが、ハワイ挙式をされる方の母数がそもそもハワイ旅行者よりも少ないこともあり、ハッシュタグによっては投稿が少ないものもあります。
キャンペーン開始から見えてきたこと、そして今後の展開について
—こういう写真は投稿されやすい、または「いいね!」が付きやすいなどの傾向はありますか? また実際に投稿している方はどのような層の方なのか教えていただけますか。 やはりハワイの景色の写真の投稿が多いですね。「いいね!」についても、海や空、虹など、ハワイならではの景色の写真に「いいね!」が多くつく傾向があります。投稿してくれているのは20代から30代の女性、中でも20代の女性が圧倒的に多いです。 「Instagenic Hawaii」のInstagramアカウントもキャンペーン開始から1ヶ月半でフォロー数1,000人を超え、手応えを感じています。キャンペーンを運営している側としても、綺麗な海を背景にした幸せそうなカップルの写真や、家族や友達の満面の笑みの写真などは見ていて幸せな気持ちになりますね。

<”Instagenic Hawaii”による実際のInstagram投稿>

—キャンペーン促進のために、どのようなPR活動をされているのですか? チラシを作って配ったり、弊局が運営しているポータルサイト「Hawaii-TV」やFacebookページ、また旅行博などのイベントでキャンペーンの紹介をするなど、色々な方面でPRには力を入れています。弊局のFacebookページには多くのファンがいるので、彼らにアプローチできるのも大きいですね。 昨年初めて弊局単独で開催した「HAWAII EXPO」には約1万3000人の方にご来場いただいたのですが、来場者にアンケートを行った所「SNSを見て参加した」の割合が多くて。SNSの影響力を実感しました。 —プレゼントキャンペーンも行われているんですね。 はい、毎月投稿者の中から抽選でハワイのプレゼントが当たるキャンペーンを行っています。ハワイならではの可愛い雑貨やお菓子をプレゼントすることで、キャンペーンの促進はもちろん、ご協賛いただいているショップやブランドのPRにもなればと思っています。 —今後の展開について教えてください。 先日ABCクッキングスタジオさんと「バレンタインデーはハワイアンメニューで彼をおもてなし」と題し、コラボイベントも開催しました。 Instagramを活用した取り組みは今回が初めてということもあり、現在はデータを分析し、そのノウハウを貯めていますが、今後はそのノウハウを活かしながら、他SNSとも連動したもう少し大きなキャンペーンも仕掛けていきたいと思っています。

ハワイ州観光局 マーケティングマネージャー 酒井貴子さん

バレーボールの「ミカサ」が、コミケ向けに“薄い本”を制作!その狙いとは

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Case: ミカサ『ミカサの薄い本』
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。 今回は、ミカサ『ミカサの薄い本』を取り上げます。いまや盆暮れの風物詩ともいえる、コミックマーケット。アニメやマンガ好きが国内外からこぞって訪れる一大イベントとして知られています。昨年末のコミケで、ミカサが『ミカサの薄い本』を配布。開催前からウェブメディアでも話題になりました。この本の内容は、かわいい萌えキャラの女の子が広島弁でミカサを紹介する会社案内。競技用ボールの製造会社として知られる同社ですが、配布のねらいやアニメファンとの接点はどこにあったのでしょうか。『ミカサの薄い本』を制作された、株式会社ミカサのご担当者にお話を伺いました。
Interview & Text : 香川 妙美
「ミカサ」と「コミケ」の意外な接点とは
―『ミカサの薄い本』は、どのようにして生まれたのでしょうか。 まず、株式会社ミカサですが、競技用ボールを中心にスポーツ用品の製造を行っています。なかでもバレーボールは、国際バレーボール連盟の公式球に唯一認定されており、「ミカサといえば、バレーボール」というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。昨今は、バレーボールを描くマンガ作品に、ミカサのロゴの提供を行っており、こういった取り組みをきっかけにサブカルチャーとの接点が当社にも生まれました。 そんなご縁から、コミケにはこれまで3度出展しているのですが、初めて出展したときの反省点として、「コミケらしい出展になっていなかった」というものが挙がりました。加えて、ミカサ=広島の会社ということが、意外と知られていないことも来場者と接して分かりましたので、この部分の訴求も同時に行いたいと考えていました。 コミケは、アニメやマンガをはじめ、そのジャンルの熱烈なファンの方が来場され、独特の熱気があります。せっかくの機会だし、その空気に乗って少し冒険してみようと思っていたところ、コミケといえば「薄い本(※「同人誌」を指す俗語)」という声が聞こえまして。当社もコミケに合ったテイストで会社案内を制作したらおもしろいんじゃないかと盛り上がり、『ミカサの薄い本』が生まれました。 ―制作は有志社員で行ったとのことですが、メンバーはどのようにして集まったのでしょうか。ページの構成や制作期間なども教えてください。 まず、メンバーは、社内のマンガ好きの人間を一本釣りして、そこから同僚に声をかけてもらいました。制作は3人で行い、ボール部分はボール技術部の者が、そして当社は工業用品の製造も行っていますので、こちらのパートは工業用品本部の者が制作しています。全体のレイアウトやたたき台は、コミケ関連をはじめ何かとサポートしていただいている印刷会社さんと共同で行いました。さらには、講談社のコミック誌『ITAN』で、青春バレーボールマンガ『その娘、武蔵』を連載されています、田中相先生に2ページにわたって特別寄稿していただき、全8ページの構成となりました。制作期間は2か月ほどです。 ―制作の過程で印象に残るエピソードがありましたら、お聞かせください。 やはり田中相先生にご寄稿いただけたことではないでしょうか。わたしたちにとっては本当にありがたく、とても幸せなことでした。冊子の価値がグッと高まったのはもちろんのこと、ファンの皆さんにも喜んでいただけました。 一方、苦労した点といえば、制作メンバーが全員技術者だったため、知っている情報がニッチ過ぎたり機密に該当したりと、外に向けて発信できる情報が意外と少なく、ページがちゃんと埋まるだろうかと、少し気を揉みました。加えて、ミカサ=広島の会社という訴求ポイントを盛り込むべく、できるだけ広島弁で展開しようと思っていたのですが、実は広島弁は固有の単語が少なく、むしろイントネーションのほうに特徴があるため、あまり広島弁らしくならなかったのが心残りです。さらには、メンバーのほとんどが他県出身のため、ネイティブっぽさを捻り出すのもまた大変でした。
プレスリリースが好機に。ネーミングのミスリードが盛り上がりに輪をかけた
―『ミカサの薄い本』は、昨夏のコミックマーケットに続き、2回目の配布とのことですが、前回とくらべて手応えはいかがでしたでしょうか。 今回は、「薄い本、ありますか?」と聞かれることが多く、お配りするのに苦労がありませんでした。トータル3,500部を用意しましたが、連日お昼頃には配布を終えるほど、盛況でした。 要因としては、ニュースリリースを打ったことが大きかったと思うのですが、『薄い本』というコミケらしいネーミングと、マンガ『進撃の巨人』のヒロイン、ミカサ・アッカーマンとのミスリードもまた刺さったように思います。ツイッター上でも、「ミカサといえば、ボールでなく進撃だろ」とよく言われていますので。ただ、ネーミングは、決してミスリードを狙ったわけではなく、いろいろな書き込みを後から見て気がつきました。というのも、これはわたし自身がミカサの人間なので、ミカサ=ボール、軸受という考えが念頭にあるからなのですが、気づいたときには、「なるほど」と唸ってしまいました。 ―配布後の効果はいかがでしょうか? 「ミカサって広島の会社なのか」「ミカサって軸受もつくっているのか」といった書き込みをSNS上で見かけるようになりました。『薄い本』では、ボールの製造工程も紹介しているのですが、普段知る機会の無いジャンルということもあり、「勉強になった」など、喜んでいただけた気配を感じています。 冊子自体も、萌えキャラの女の子がページを進行するなど、コミケを意識したトーンで制作していますので、「ミカサっておもしろい会社」と思っていただけたのではないかと思います。ロケットニュースさんで「企業ブースの頑張りすぎた無料配布物5選」に選ばれ、記事化していただけたことも嬉しかったですね。 ―今後の『ミカサの薄い本』の取り扱いについて教えてください。 あくまでもコミケ用に制作したものなので、イベント限定品としてお楽しみいただければと思っています。次回の出展も現段階では白紙ですが、参加が決まりましたら改訂版か増補版を出すかもしれません。スポーツのシーンに限らず、マンガやイベントを通じてミカサを知っていただけるのは、非常に良い機会と感じていますので、今後もさまざまな場をとおし、ミカサファンを増やしていける取り組みができればと思っています。

サッカー×電力自由化=『副キャプテン自由化』!東京ガスのオリジナル漫画&CM 制作秘話

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Case: 東京ガス『副キャプテン自由化』
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。 今回は、東京ガス株式会社の『副キャプテン自由化』を取り上げます。4月からの電力自由化に向け、1月1日から順次O.A.されている東京ガスのTVCM。第1弾となる「バーバースガ・自由化ショット」篇では、人気サッカーマンガ『キャプテン翼』の作者 髙橋陽一さんが描き下ろしたマンガ『副キャプテン自由化』が披露されるとともに、髙橋さんご本人もCMに登場。兄妹を演じる妻夫木聡さん、広瀬すずさんらとともにコミカルなやりとりを繰り広げています。さらに特設ウェブサイトでは、マンガの全容がCMと連動した形で公開され、そのストーリーに注目が集まりました。 本クリエイティブの狙いを、東京ガス株式会社 広報部 広告グループ 広告担当部長 桑名朝子さん、同グループ 奥村佳彦さんに伺いました。
Interview & Text : 香川 妙美
1月からの先行受付スタートに向け、昨年からティザ―キャンペーンを展開
―今回のクリエイティブを、非常にアグレッシブかつユニークなものと感じているのですが、全体をとおし、どのような計画を立てられたのでしょうか。 桑名:本クリエイティブは、おかげさまで方々から好評いただいておりますが、電力自由化に関する当社の取り組みは、昨年からスタートしています。というのも先行受付がスタートする1月は、消費者の情報収集が活発になると想定していましたので、この時期に合わせてヤマをつくる必要性を感じていました。そこで、昨年10月からティザ―キャンペーンとして、まずは「エネルギーは選べる時代へ。」をキーメッセージとした企業CMを展開しました。 当社のTVCMは30秒がメインなのですが、このときは15秒のものを多くつくり、自営業の方、多世帯の方など比較的電気を多くお使いの層に訴求できるクリエイティブを打ち出しました。妻夫木聡さん、広瀬すずさんにも、この時期からCMにご出演いただき、東京ガスの顔としての印象づくりを図りました。そして、CM内では「これから何かが起こります」「電気がおもしろくなる」といったメッセージを発信し、東京ガスに対する期待感を醸成したほか、別のバージョンでは、当社のコーポレートメッセージである「あなたとずっと、今日よりもっと。」をテーマに、信頼感や存在感を訴求し、話題化のための下地づくりを行いました。
新しいサービスにかける情熱が、サッカーの世界とリンクした
―その流れを汲んで、今回の「バーバースガ」シリーズにつながるのですね。なかでも『自由化ショット』篇での『キャプテン翼』の作者、髙橋陽一さんとのタッグには、驚かされました。 桑名:ええ。1月からはキーメッセージを「マイ電気は、東京ガス。」という力強いものに替え、クリエイティブのトーンも大きく変更しました。ただ、電力自由化に対する消費者の関心は高まるものの、内容の理解はなかなか進まないと予測していました。そのうえで今回のクリエイティブなのですが、分かりづらいものを説明しようとすると情報が膨大になり、CMの尺に盛り込んでも易々とは届きません。そういった課題を前に、マンガの主人公が話す形をとれば関心を寄せるきっかけになるのでは、というところから、今回の企画へとつながっていきました。 奥村:東京ガスが、「電気」という新しい分野に挑戦するということで、これにかける情熱やエネルギッシュなさまを表現するのに、スポーツマンガがふさわしいと考えました。また、当社のサービスプランは、電気を多く使うほど「お得」になる体系となっていますので、お子さんのいるご家庭、つまりは30~40代に響く作品が良いという声が出ました。家計の中心は、妻であり母親である女性の場合が多いのですが、住居やライフラインの契約となると、夫が、または夫婦で相談して決めるケースが多いことから、男女ともによく知られているマンガをモデルに展開することが決まりました。 スポーツマンガは、人気かつ有名なものがたくさんありますが、その中でもサッカーはゴールに向かって、チーム全体が突き進む一体感や高揚感があります。これらのイメージが、私たちの電力事業にかける思いに合っていました。加えて、当社は『FC東京』というサッカークラブをスポンサードしており、社内でなじみやすいという側面もありました。

©️高橋陽一

―マンガ『副キャプテン自由化』は、どのように生まれたのでしょうか。 桑名:クリエイティブディレクターをお務めいただいた株式会社電通の澤本嘉光さんから髙橋先生に打診していただいたところ、快くお受けいただけました。先生には、あらかじめこちらで用意した絵コンテに基づき、執筆をお願いしました。期間は1か月ほどでしょうか。電力自由化が分かりやすい、かつ東京ガスの登場感をインパクトをもって表現できる企画になりました。 ―CM『自由化ショット』篇の撮影エピソードはありますか。 桑名:監督の永井聡さんは、ディティールをとても大切にされる方で。CMの中盤に広瀬すずさんが三角コーンの間をドリブルするシーンがあるのですが、監督は足の外側でボールを蹴るアウトサイドキックにこだわられ、今回、広瀬さんに挑戦いただくことになりました。これは、内側で蹴る場合と比べて高度な技術が必要になるのですが、高い運動神経をお持ちの広瀬さんもかなり苦労されたようで、本番前はとても緊張なさっていました。とはいえ、さすがのプロ意識で、華麗なボールさばきは、本当にお見事でした。続くジャンピングボレーシュートのシーンでは、人生初のワイヤーアクションに挑戦していただいたのですが、地上10メートルほどの高さに宙づりになっても怯むことなく、撮影を順調にこなしていらっしゃいました。シュートのフォームも美しく、迫力満点の姿にスタッフから感嘆の声があがっていました。 奥村:現場では、妻夫木聡さんが率先して周囲とコミュニケーションを図り、空気づくりをされていたのも印象的でした。また永井監督とは、以前映画でご一緒されていることもあり、意思疎通も進行もとてもスムースでした。

©️高橋陽一

―設定をヘアサロンにした理由を教えてください。 桑名:一つは、「セットする」「カットする」「まとめる」といったヘアサロンのメニューが、わたしたちのサービスにそのまま通じるため、東京ガスの電気を説明するのに分かりやすいと考えたことです。あとは、シリーズ展開のしやすさでしょうか。第3弾以降のCMも、この『バーバースガ』に、さまざまなゲストが来店し、妻夫木さん・広瀬さん兄妹とやりとりをする形で進んでいきますので、そんな汎用性の高さも理由に挙げられます。 セットも細部までこだわりを持ってつくっており、上質な雰囲気とともに、ちょっとレトロでおとぎ話のような空気が漂っていますので、そんなところにもご注目いただきたいですね。

©️高橋陽一

―マンガ『副キャプテン自由化』やTVCMに対する視聴者の反応はいかがでしょうか。 奥村:髙橋先生ご本人が出演されていることへの驚きや、描き下ろしマンガの感想が寄せられています。「広瀬すずさんが格好良い」という声も多いですね。また、先ほど『FC東京』の話をしましたが、CMに出てくるサッカー場は、実は小平市にある東京ガスのグラウンドで、FC東京も練習に使用している場所なんです。これにファンの方が気づき、SNSに投稿されているのを見たときには、驚きました。
描き下ろしマンガがフックとなり、ウェブへの流入が増加
―サービスの申し込みにつながっているという点ではどうでしょうか。 桑名:おかげさまで、マンガ『副キャプテン自由化』が呼び水となり、CMをご覧になった方がウェブサイトでマンガの全容をお楽しみになるという流れができています。そこからサービス概要のページに遷移され、お問い合わせにつながるケースも多く、滑り出しとしては相当良いかたちになりました。また、電話のお問い合わせも、三が日が明けた1月4日からの2週間で6,800件におよびますので、ウェブを含めると相当数になるのではないでしょうか。 東京ガスは、「信頼は厚い。けれども活気がない」「インフラとして生活に溶け込み、存在感が薄い」など、言ってしまえば、「顔の見えない」イメージを消費者の方がお持ちだということが調査を通じて分かっています。とはいえ、これから新しいサービスをスタートするにあたり、お客様に選ばれる存在になっていく必要があります。今回のクリエイティブを機に、東京ガスが新しいサービスの提供にアグレッシブに臨んでいく姿勢や熱意をお伝えすることで、東京ガスへの期待感を高めていただくと共に、これまでのエネルギー供給を通じて培ったお客様との関係をより強固なものにしていければと思っています。

東京ガス株式会社 広報部 広告グループ 広告担当部長 桑名朝子さん(右) 東京ガス株式会社 広報部 広告グループ 奥村佳彦さん(左)

NHK「プロフェッショナル “私”の流儀」番組公式アプリで誰もがディレクターに?制作に込められた想いとは

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Case: NHK・DigiBook「プロフェッショナル 私の流儀」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。 今回はNHKの人気番組「プロフェッショナル 仕事の流儀(毎週月曜日 NHK総合22時~放送中)」の公式アプリ「プロフェッショナル 私の流儀」について取り上げます。誰でも簡単に「プロフェッショナル風オリジナルムービー」を作れるこのアプリ。企画・開発の経緯から、アプリに込められた想い、予想を越えた拡散スピード、そして今後の展開まで、NHK企画・開発ディレクターの小国士朗さんと株式会社DigiBookビジネスディレクターの野村絵里奈さんにお話をお伺いしました。
Interview & Text : 坂巻 渚
4年間あたため続けた企画をついに実現
—まず、今回アプリをリリースした背景を教えていただけますか。 小国:このアプリの元となるアイデアを出したのは、実は4年程前なんです。その頃、僕は「プロフェッショナル 仕事の流儀」のディレクターをしていたのですが、この番組の価値をもっと色んな形で知ってもらえないかと感じていました。この番組は1回の放送を作るのに約40日間出演者の仕事の現場に密着しているのですが、それがたった1、2回の放送で終わってしまうのはもったいないと。 そこで考えたのが、「パパ・ママの流儀」でした。プロというのは超一流の人だけではなく、「誰でもプロである」ということに、多くの人が気づけるきっかけを作れたらいいなと思ったんです。 そこでみんなにとっても身近なプロである「親」という存在に注目し、全国のパパやママの流儀をサイト上で閲覧できる企画を提案したのですが、その時は上司に「それもいいけど、次回の番組枠を埋めてね!」と全く相手にしてもらえませんでした(笑)。 その後、僕は番組を制作するかたわら、色々な番組のPRを担う仕事も兼務することになったのですが、今年「プロフェッショナル 仕事の流儀」が10周年ということで、何か面白い企画をしたいと今度はプロデューサーの方からオファーをもらいました。「パパ・ママの流儀」と同様のコンセプトで形だけ少し変えた「私の流儀」を提案した所、ついにGOサインが出ました。4年越しの想いを形にできるのはかなり嬉しかったですね。 今回アプリの企画や開発をしていただいたDigiBookさんとは、以前NHKの福祉番組で展開したALSの認知拡大キャンペーン「Share Music,Think ALS」でご一緒したことがありました。今回のアプリについてもプロデューサーの野村さんにご相談したら、「ぜひやりましょう!」とすぐに決まりました。ALSのキャンペーンの時はサイト上で展開したのですが、投稿数という点でなかなか難しいと感じていたので、今回はどうしてもアプリを作りたいと思っていました。 野村:サイト上での投稿キャンペーンとなると、もともと番組に興味のある方のみの参加となってしまいますが、アプリであれば、アプリストアのランキング次第で潜在層にもリーチできるので。何としてもランキングを上げ、投稿数を増やしたいという想いがありました。 —“私の流儀”という名前も面白いですよね。名前に色々な意味が込められている感じがしました… 小国:「プロフェッショナル 仕事の流儀」では、色々な業界のトップオブトップの方々にご出演いただいているので、特に大学生や新社会人などの若い層からは、番組を見ても “自分とはかけ離れたすごい人の話” で終わってしまうという感想を頂くことがあったんです。そのため、アプリでは「誰でも、プロフェッショナルになれる」ということをもっとわかりやすく伝えられればと思い、この名前に決めました。
アマチュア感を出さない。とことんこだわったアプリ制作
—制作ではどのような点を特にこだわられたのですか? 野村:人気番組の公式アプリなので、一般の方が撮った動画であってもアマチュア感がなく、誰かに見せたくなるコンテンツにまで引き上げるという点には特にこだわりました。あとは、「作る」ハードルを下げるため、必要なステップは4つに絞り、動画を作る手間を最小限にしました。 例えば、動画の最初に映し出される静止画は動画から引っ張ってきており、静止画を用意する必要がないんです。尺も55秒と短くし、その中に番組の大切な要素をギュッと詰め込んで、生成された動画を見ただけで番組を想起させるように工夫しました。 —NHKさんとしてもこだわられた部分が多かったのではないですか? 小国:開発についてはDigiBookさんに安心してお任せしていました。逆に、野村さんの方から「番組公式感を大切にしたい」「挿入するのは静止画ではなく動画にしたい」など、ご提案をいただいたくらいです(笑)。代理店を挟まずに目指す世界観なども全て共有していたので、時間がない中、理想的なアプリをスピーディーに開発していただきとても助かりました。野村さんとは常に腹を割って何でも話していましたね。 —アプリのターゲットはどういう方になりますか? 小国:年齢で言うと59歳以下、メインは10代から30代の若い層です。もともと「プロフェッショナル 仕事の流儀」は、就活中の大学生や現役バリバリの30~40代など、比較的若い層をメインターゲットに始まった番組なのですが、リサーチしてみると実際は、60歳以上の男性を中心としたシニア世代に多く見て頂いていることがわかりました。 そのためアプリでは、番組がリーチし切れていない若い層にまずはアプリを楽しんでもらえたらと。あと欲を言うと、若い人たちにもっとNHKをいじってほしいなと(笑)。「プロフェッショナル 仕事の流儀」はこれまでに他局の番組や結婚式等でも様々なパロディが作られているのですが、こういうのが結構嬉しいんですよね。ユーザーさんにいじられて初めて仲良くなれる気がしています。
予想を越えた拡散スピード。会社のリソースをとことん活用する戦略
—お正月明け頃からアプリがかなりバズり始めた気がしますが、具体的にPRはどのような事をされたのですか? 小国:広告費は一切なかったので、NHKが持っているリソースをとことん活用しました。Facebookページ、Twitterの活用はもちろん、1月4日に放送した「プロフェッショナル 仕事の流儀」10周年記念の番組内でアプリ紹介をしたり、その真裏にニコ生放送で「プロフェッショナル10周年同窓会」と銘打って特別番組を放送して頂き、その中で1時間ほどアプリの紹介をしました。 また、うちの“名物アナウンサー”の有働由美子アナウンサーにも協力してもらい、アプリを使って動画を作ってもらうと同時に、「あさイチ」という番組で同じく1月4日にアプリの紹介をしてもらいました。その影響力は絶大でした。PRを1月4日に集中させた結果、その日1日で7万強のダウンロードを達成することができました。 翌日の1月5日には「App Store 総合無料ランキング」で2位まで上がり、そこからは自然とダウンロード数が伸びていって。当初のKPIは3ヶ月で15万ダウンロードだったのですが、現在までに既に90万ダウンロードされている状況です。さらに、1日に100から200人程の方が番組サイトに動画の投稿もしてくださっていて、本当に嬉しい限りです。 野村:通常ランキング上位にはゲーム系アプリが多い中、エンタメ系アプリで2位になれたのは嬉しいですね。人気検索ワードにも、「プロフェッショナル」や「私の流儀」というワードが入ってきて、本当にバズっているのだと実感しました。嬉しくてスクリーンショットばっかり撮っていました(笑)

<App Store 総合無料ランキング>

<App Store 人気検索ワード>

—特に投稿数の多い動画のテーマや印象に残っている動画はありますか? 小国:ペットと子供の動画が多いですね。番組のテーマ曲「Progress」の音楽にのせると何故か子供でもプロっぽく見えてくるんですよね(笑)あと、 “20年間使い続けているやかんの流儀”はかなりシュールでした(笑)みなさんのパロディ能力の高さにはビックリさせられっぱなしです。 野村:実際にアプリをリリースしてみて、特に若い方々がアプリを楽しんでくれているという印象も受けています。若い人たちはWeb上に顔が出ることをあまり気にしないんですよね。あとは、部活やお店のPR用に動画を作っている方もいました。 —SNS上で特に嬉しかったコメントなどありますか? 小国:一番嬉しかったのは、「お正月に家族全員でアプリを使って大爆笑!」というツイートですね。NHKの番組は“大爆笑”とは程遠いものが多いので(笑)子供からお年寄りまでみんなに楽しんでもらい、家族の会話の糸口にもなったというのは本当に嬉しかったです。 野村:「アプリで遊んでいたら1日が終わっちゃった!」というコメントも嬉しかったですね。今回何よりこのアプリを使って、まずは楽しんでほしいという想いが強かったので。また作った動画をYouTube に投稿している方がかなり多くて驚きました。現時点で確認が取れているものだけでも、投稿数が1万以上、閲覧だと200万回を超えている状況です。 小国:何人かYouTuberの方も動画をアップしてくださっていて、その度に若者のダウンロード数が伸びました。1投稿に対しコメントが2000件、好評価も1万など、YouTuberの影響力の大きさには驚いています。

<実際のYouTuberの投稿>

—男性と女性の割合はどれくらいですか? 野村:YouTube上に公開されている方を見ている限りですが、8:2で男性が多い印象です。
アプリの枠を飛び越え、世の中に価値を提供していきたい
—今後の展開について教えていただけますか。 小国:まずは更にダウンロード数を伸ばすために、社内やNHKとつながりのあるインフルエンサーを積極的に活用していきたいと考えています。現在特設サイトの「あの人の流儀」というコーナーで、番組の出演者など、著名人の流儀を紹介しているのですが、今後も人気のあのキャラクターなど、話題になりそうな流儀を追加していく予定です。 またこれは少し大きな動きになるのですが、今後はアプリをダウンロードしてくれた方を “プロフェッショナル アプリディレクター”と見立てて面白い企画を仕掛けていこうと考えています。アプリさえあれば、自身の流儀を作ることはもちろん、自分以外の人の流儀を作ることもできるので。アプリのダウンロード数が90万であれば、各地に90万人のディレクターがいると勝手にイメージしています。 毎月テーマを決めて、「みんなの〇〇の流儀」という形でイベントを開いたり、実際に “アプリディレクター”に取材に行ってもらう番組も作れたらと面白いなと。実際2月には、バレンタインデーにちなんで「みんなの告白の流儀」の募集を行いました。また東日本大震災に関するみんなの流儀を集めた「“あの日”のプロフェッショナル」も企画中です。面白いものから真剣なものまでバランスをとった企画をしていきたいですね。 —今回のアプリは様々な企画の第一弾というイメージなんですね。 小国:そうですね。もちろん、アプリ自体を楽しんでもらいたい気持ちはありますが、視聴者との大事なコミュ二ケーションツールの一つという考えをブレずに持っていたいと思っています。例えば、就活生を対象に大学の授業でもアプリを使っていただく予定です。このアプリでは1分間という短い時間内に自分を表現する必要があるので、学生が自己分析をする上でもとても有効だと複数の大学から評価を頂いています。今後も、アプリやテレビという形にとらわれず、世の中にさまざまな“価値観”を提供できれば嬉しいです。

NHK企画・開発ディレクター 小国士朗さん(左) 株式会社DigiBookビジネスディレクター 野村絵里奈さん(右)

「おもしろいけれど買わない」を覆す感情設計。森永製菓『崖っぷちキャンペーン』の舞台裏

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Case: 森永製菓「JACK 美味しいのに崖っぷちキャンペーン」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。 今回は、森永製菓株式会社『JACK 美味しいのに崖っぷちキャンペーン』を取り上げます。『JACK』とは、ローストアーモンドにキャラメルがコーディングされた素材菓子。発売は今回が3度目、しかも売れなかったら終売という切羽詰まったこのお菓子の状況を、”崖っぷち“と表現して展開した本キャンペーン。やけくそ感のあるさまざまな施策もまた、悲壮感が漂っていると注目を集めました。 本キャンペーンのねらいを、森永製菓株式会社 マーケティング本部 菓子食品マーケティング部 新カテゴリー担当 藤井えりさん、株式会社博報堂 第1クリエイティブ局 高田チーム クリエイティブディレクター 河西智彦さん、株式会社マテリアル 営業局 第2グループ アカウントエグゼクティブ 裏垣宏樹さんに伺いました。
Interview & Text : 香川 妙美
自虐的なキャンペーン展開に、社内から心配の声が挙がった
―これまでの広告展開や商品仕様の変遷をお聞かせください。 藤井:『JACK』は当初、男性をターゲットに開発したお菓子でした。そのため初回や2度目は、交通広告、サラリーマンを対象としたサンプリング、紙媒体とのタイアップなどを実施したのですが、いずれも目に見える効果にはつながりませんでした。 パッケージも3度目のリニューアルです。販売チャネルであるコンビニエンスストアの特性に合うデザインを念頭に、さまざまな視点からブラッシュアップを図りました。 ―今回の崖っぷちキャンペーンに並行して、通常のキャンペーンも展開されたと聞きます。 藤井:はい。まず通常のキャンペーンは、ターゲットを有職女性に変更のうえ通勤時に接触してもらうことをねらい交通広告を実施しました。ビジュアルやコピーは、当社の主力製品を用いながら、『JACK』の特長をお伝えできる内容にしています。というのは、過去2回の発売で品質特徴の伝わりづらいことが課題に挙がったこと、かつ消費者は、ロングセラーのエクステンション品を好む傾向があることから、これらを踏まえたコミュニケーションを展開しました。 一方、崖っぷちキャンペーンは、「思いっきり話題になる施策」「発売週に売り上げの出るアプローチ」の2点をオリエンテーションの席で代理店さんにお願いしました。各社の提案が揃い内容をつめていくなか、博報堂さんの『崖っぷちキャンペーン』に決まったのですが、自虐的なトーンでの展開に対し、さまざまな意見が社内から出て、各方面から心配されました。 特に表現の部分は、「やり過ぎだ」「森永製菓らしくない」といった声も聞こえていたので、慎重に進めていきました。当社としても、こういったトーンのキャンペーンは初めてだったので、ぎりぎりまで調整をしつつ、なんとかスタートにこぎつけました。
「おもしろいけれど買わない」を覆すための感情設計とは
―キャンペーンは、どういった意図で設計されたのでしょうか。 河西:昨今のユニークなキャンペーンを見ていると、「おもしろいけれど買わない」というのがユーザーの定説になっていたので、これを覆せないかなと考えていました。そこで、「どんな感情になると人間は行動に移すのか」という部分に重きを置き、ウェブは博報堂DYメディアパートナーズの石川雅雄が、デザインは、僕と同じ博報堂の中島淳志が、そしてPRにおいては株式会社マテリアルが中心となり、それぞれが持つ知見を集結させ、アイディアをブラッシュアップしていきました。 今回のキャンペーンでいうと、「美味しいのに」と付くことが大切なんですよね。これが付くことで、「なんでだろう?」という疑問が生まれ、不思議なお菓子になるんです。その結果、ネットの投稿でも多く見られた「食べてみたい」「探したい」という感情を生み出すことができ、購買につながりました。 また、ウェブサイトにおいても同情を引くコピーを大切にしました。たとえば「奇跡を願ってやみません」「お願いします」のような感情を刺激するフレーズを盛り込むことで、ユーザーの行動喚起に結び付けています。さらに、コンビニの仕入れは店長さんに裁量があります。ネットがかなり浸透していることもあるので、この店長さんのアンテナにどうすれば引っかかるのかを考えたほか、お客様から店長さんにアプローチできるようにもしました。 ―ヒッチハイクや電車ジャック、すなば珈琲とのコラボレーションなど、ユニークな取り組みも目立ちました。 河西:これらは、「崖っぷちに立った人はどういった行動をとるのか」というのを基点に設計しています。実際の接触人数よりもPRの拡散力で話題化につなげることを目的に行いました。 最近のキャンペーンは、外の媒体に出ていってどこまで話題になるかを考えますが、一世代前はサイトに呼び込む形を採っていました。今回は、『JACK』の状況を知ってもらうため、サイトに呼び込む必要があったので、その流入経路としてこれらを用意しました。 ―当初、発売初週に大きなヤマを持っていきたいとお話しされていましたが、それ以降もコンスタンスに情報を投下されていった意図を教えてください。 藤井:確かに初動はとても大切な部分で、実際かなりのボリュームを持たせているのですがコンビニは商品の回転が目まぐるしく、売れなければ1か月半で取り扱いが終わってしまいます。スタートダッシュのあとは、いかに息の長い定番品として生き残っていくかが大切なので、継続した情報投下を行うことで、常に盛り上がっている状態をつくれたらと考えました。 河西:キャンペーンは、当初昨年の11月中に終わらせる予定で設計しており、売れ行きによって次の施策をどうするか考えようと思っていました。ありがたいことに話題化ができていたので、反応が落ち着いたころに新たなコンテンツを投入するということを繰り返しました。ここは、スケジュールの柔軟性が大事になってくるのですが、森永製菓さんのご理解もあり良い形で行うことができました。
『JACK』に『地方創生』を絡め、メディア露出を拡大
―そのいくつかある施策のなかでも、『すなば珈琲』とのコラボレーション企画として、昨年12月に期間限定オープンしたショップは、大きな話題になりました。 裏垣:こちらも話題化のための施策でしたが、”すなば珈琲の東京進出”のほうにニュースが偏ると想定できたので、『JACK』を取り上げていただくために『JACK』を使った期間限定メニューをつくり、露出のされ方に工夫を図りました。さらには、ニュースに多面性を持たせるため、鳥取県出身の代議士である石破茂さんと鳥取県知事 平井伸治さんにお店に足を運んでいただきました。 “地方創生”のキーワードは、引き続き注目されていますし、都心と地方の関係性は、多くの生活者、メディアの関心ごとでもあります。平井知事は、県のPRが非常に上手く注目度も高いことから、この文脈をうまく活用するべく地方企業と都心企業の取り組みをストーリーにしてメディアに伝えました。この結果、政治系メディアでも報道されることになり、多くの生活者にリーチできました。これらの情報をウェブで知って来店したというお客様も多く、四日間の出店でしたが約2,000人の方にお越しいただけました。 ―キャンペーン全体を通しての反響はいかがでしたか。 藤井:正直ここまで広がるとは思っていませんでした。再発売から約3か月が経ちますが、取り扱いのあるコンビニも細々ながら残っていますので、過去2回が短期間で終売に至ったことと比べても一定の成果が出ていると感じています。しかしながら、「どこで売っているのか分からない」という声がお客様から聞こえてきましたので、そこはチャンスロスでした。 ただ、ウェブのお客様は温かく、「コンビニをはしごして探した」「終売にならないように今日も購入した」といった、応援コメントをたくさん見かけました。なかでも、「チョコボールで育ち、いまはダースにお世話になっているからJACKも応援しないと」といった書き込みは特に印象に残りました。当社には、育てていくといった雰囲気になるお菓子がこれまでなかったので、当社に対するお客様の気持ちが表面化したという点もまた良かったです。 河西:今回はウェブでの話題化を通じ、ただの認知ではなく「食べてもらう」ことにつながった点は、非常に良かったです。クライアント、広告代理店、PR会社が、会社の枠を超え、一体になって取り組めたことがキャンペーンの成功に起因しているのではないでしょうか。 『JACK』は実際に食べてもおいしいお菓子ですので、これからは『JACK』自身が一人立ちしていけると良いですね。

森永製菓株式会社 マーケティング本部 菓子食品マーケティング部 新カテゴリー担当 藤井えりさん(右) 株式会社博報堂 第1クリエイティブ局 高田チーム クリエイティブディレクター 河西智彦さん(左)

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